2015年08月24日 | T・H

小樽にたたずむ近代和風建築の宝物「和光荘」

小樽の高台に建つ「和光荘」。地元の人にもよく知られている歴史的建造物です ▲小樽の高台に建つ「和光荘」。地元の人にもよく知られている歴史的建造物です

 

小樽市民ならだれでも知っている潮見台の「和光荘」

「和光荘」は1922(大正11)年に個人の邸宅として建てられた小樽の歴史的建造物です。アール・デコを基調とする洋風の外観デザインと、建て主の郷里・金沢の伝統的な建築技術を取り入れた和室、仏殿などを組み合わせた建物で、5,000坪の広さの敷地に咲く季節の草花を合わせた景観は、時代を重ねてきた建物という事を忘れてしまうくらい可憐な美しさを放っています。


和光荘の玄関へのアプローチ。きれいに手入れされた庭の草花と階段まわりに当時の生活のぬくもりを感じます ▲和光荘の玄関へのアプローチ。きれいに手入れされた庭の草花と階段まわりに当時の生活のぬくもりを感じます

 

洋風の外観が印象的な建物の内部は…洋風?和風?それとも…!

今年4月に完全予約制で一般見学が可能になった「和光荘」。高台の上にある建物の景観は小樽市民からも地域を象徴するものとして親しまれていますが、趣向を凝らした外観のその内側はいったいどんな空間なのでしょうか。今回は特別に、オーナーの野口さんのご案内で見学させていただきました。


和光荘オーナーの野口さん。幼少の頃は自宅として和光荘で暮らしていたそうです ▲和光荘オーナーの野口さん。幼少の頃は自宅として和光荘で暮らしていたそうです


玄関につながるテラスのモザイクタイルに目を奪われながら、初めに見せていただいたのは入口すぐの応接室。大正時代とほとんど変わっていないという家具に囲まれた部屋の中は、当時から時間が止まったような懐かしい空気を感じます。応接室と言っても、天井が高く大きなテーブルとゆったりとした椅子が置かれたゆとりある空間は、まるでレストランのような広さ。1954(昭和29)年に天皇皇后両陛下がご宿泊された際に座られた椅子も当時のまま残っています。また、シャンデリアやドアの模様、デザインされた天井の廻り縁など、細部まで凝ったつくりが随所に見られることから、この部屋がおもてなしのための特別な部屋だということがわかります。
(和光荘の内部の写真撮影はNGですが、今回は特別に許可をもらって撮影しています)


昭和天皇皇后両陛下が座られた椅子。繊細な象嵌(地の素材を彫って,その部分に他の材料をはめこんで模様を表す技法)が施されています ▲昭和天皇皇后両陛下が座られた椅子。繊細な象嵌(地の素材を彫って,その部分に他の材料をはめこんで模様を表す技法)が施されています


邸内には、落ち着いた雰囲気でありながら建て主のこだわりを感じる箇所がいたるところに見られます。各部屋に残る古いながらも価値を感じる家具、床板の組み方、部屋ごとに違う照明、絵画のように壁を彩るステンドグラス…一足ごとにじっくりと見入ってしまい、なかなか奥に進めません。


和光荘入口すぐにある電話室。とびらのガラスにつけられた文字に大正レトロを感じます ▲和光荘入口すぐにある電話室。とびらのガラスにつけられた文字に大正レトロを感じます


玄関ホールにあるステンドグラスは全国の歴史的建造物にもみられる小川三知の作品 ▲玄関ホールにあるステンドグラスは全国の歴史的建造物にもみられる小川三知の作品


手すり、腰壁、窓枠、天井、シャンデリアが統一されたデザインで一体となった空間が美しい階段ホール。階段の明かり取りの窓にも色が入っていて、踊り場をやさしい光で照らします ▲手すり、腰壁、窓枠、天井、シャンデリアが統一されたデザインで一体となった空間が美しい階段ホール。階段の明かり取りの窓にも色が入っていて、踊り場をやさしい光で照らします


玄関ホールの奥に進むと、板の間が畳に切り替わり、障子で区切られた和室が並ぶ廊下に出ます。部屋の中には囲炉裏や和だんす…正面の洋風の雰囲気から一転し、縁側と日本庭園に囲まれた和風の空間になりました。
さらに奥には、1954(昭和29)年、昭和天皇皇后両陛下が和光荘にご宿泊された際に寝室として使われたひときわ格式高い和室が。縁側の引き戸には大きなガラスが入っていて、周りを囲む日本庭園が一望できるうえ、和室の奥まで明るい日の光が差し込みます。


和室は1950(昭和25)年から6~7年間ホテルの別館として利用されていたそう。今も部屋の名前を記した「梅」の札が付けられたまま ▲和室は1950(昭和25)年から6~7年間ホテルの別館として利用されていたそう。今も部屋の名前を記した「梅」の札が付けられたまま


昭和天皇皇后両陛下がご宿泊された際に寝室として使われた部屋。床の間側の壁は朱色(ベンガラ色)で、野口家の出身・金沢の建築様式を取り入れてつくられていることが伺えます ▲昭和天皇皇后両陛下がご宿泊された際に寝室として使われた部屋。床の間側の壁は朱色(ベンガラ色)で、野口家の出身・金沢の建築様式を取り入れてつくられていることが伺えます


和室の廊下から上がる階段は、離れの仏殿につながっています。この階段、ちょっと変わったつくりで、上下の高さに加えて左側に振れています。仏殿という場所柄、釘を1本も使っていないのに今もきしむことなく重厚な構造を保っているのも見事ですが、驚きなのは階段の踏込板と壁面の格子窓のつくりです。傾斜している壁に見事におさまっていて、当時の宮大工さんの技術に脱帽!


「斜めになっているけど、開けてもずれてくることはありません」90年以上経っても機能を保ち続ける精密な職人の技術は見事! ▲「斜めになっているけど、開けてもずれてくることはありません」90年以上経っても機能を保ち続ける精密な職人の技術は見事!


金沢の職人技術が光る和様のつくりも見ごたえがありますが、和光荘の内部にはさらに心をつかまれる空間が続きます。
敷地の奥の静かな場所に位置する部屋はサンルーム。円形の部屋も珍しいのですが、なんと中心には噴水が!噴水を囲む朱色のタイル、窓の上部につけられたステンドグラス、そしてポップな色合いのビニールカバーのイス。風変わりで気持ちが弾むサンルームは、ここを訪れるゲストを楽しませる場所でした。


和光荘の中でもひときわ個性的な空間のサンルーム。ギャラリーとして作品を展示したり、音響が良いのでレコード鑑賞会にもつかわれていたそう ▲和光荘の中でもひときわ個性的な空間のサンルーム。ギャラリーとして作品を展示したり、音響が良いのでレコード鑑賞会にもつかわれていたそう


サンルーム入口のステンドグラスは噴水の部屋の窓につけられたものと統一されたデザイン。こちらも小川三知作 ▲サンルーム入口のステンドグラスは噴水の部屋の窓につけられたものと統一されたデザイン。こちらも小川三知作


最後に見せていただいたのが、正面から見て1階にあたる大食堂。梁に施された漆喰の繊細な模様や柱のレリーフは一見洋風ですが、壁の幾何学模様のような飾りやビニール張りのイス、自然光を部屋の奥まで取り入れるために柱に付けられた鏡の光沢感に、近未来的な雰囲気も感じられます。
約80人を収容できたというこの食堂は、正面側の大きな窓と風通しの良さで、まるで外にいるのと変わらない解放感があります。緑の多い庭を見渡せるこの場所でとる食事は、お腹も心も満たしてくれたでしょう。


和光荘1階にある大食堂。奥の壁の上部につけられた窓から柱の鏡に光を反射させて、部屋全体に自然光を取り入れています ▲和光荘1階にある大食堂。奥の壁の上部につけられた窓から柱の鏡に光を反射させて、部屋全体に自然光を取り入れています

 

これからも小樽の歴史を伝える宝物「和光荘」がここにあり続けるために

歴史的建造物として長らく注目されていながら、今まで一般に公開されることがなかった和光荘。公開が実現した理由をオーナーの野口さんにお聞きしました。
「和光荘は実際に住んでいた生家であり、そして創業者である祖父の縁のもの。天皇皇后両陛下が宿泊された場所という誇りも持っていますから、今まで大事に守ってきました。特に近隣の小樽潮陵高校のOBから『思い入れがある場所』という声が多く寄せられ、これからも地域に親しまれている和光荘を残していくため、公開をしながら活用を考えていく事にしました」と、野口さん。
見学は平日のみ、1グループ2名から多くても5名まで。少人数でまわる和光荘邸内の見学には、研修を受けたボランティアガイドが建物について丁寧に案内をしてくれます。野口さん自身もガイドに入って見学者をご案内することも。完全予約制で公開していることも建物を保全していくための対応で、ボランティアスタッフや歴史的建造物に詳しい専門家の協力により一般公開が実現できているそう。


和光荘は冬期間の公開をお休みしているため、今年は11月まで見学が可能です。取材時は正面玄関のツタや敷地内の木々の緑が濃い季節でしたが「夏は日本庭園のツツジ、秋の紅葉もいいですよ」と、野口さんから見学のおすすめ時期の提案も ▲和光荘は冬期間の公開をお休みしているため、今年は11月まで見学が可能です。取材時は正面玄関のツタや敷地内の木々の緑が濃い季節でしたが「夏は日本庭園のツツジ、秋の紅葉もいいですよ」と、野口さんから見学のおすすめ時期の提案も


1922(大正11)年からこの地に建つ和光荘は、今年で築93年。建物の歴史の長さを感じさせないのは、大切に手入れされ続けてきたからでしょうか。「古くから和光荘を知る人から、現存していて驚いたと言われることもあります。しかし、大切に守ってきても経年による傷みはさけられませんし、古い建物の修理は簡単ではありません。今後は少しずつ修理をしながら公開の幅を広げていきたいと思っています」と話す野口さん。

90年以上、高台から小樽を見守ってきた和光荘は、世代を超えてつながる故郷の風景のひとつ。外観だけでなく、ぜひ邸内の見学に訪れて、和光荘に宿る空気や光から小樽の歴史と文化の奥深さを感じてみては。


和光荘は冬期の見学ができないため、内覧を希望の場合はHPから早めに予約を ▲和光荘は冬期の見学ができないため、内覧を希望の場合はHPから早めに予約を

 

関連リンク

小樽「和光荘」HP
おたるぽーたる

 

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