古代の宝と水のまちを訪ねて「恵庭市立郷土資料館」



北海道に暮らした縄文の人びとは、あでやかなウルシの装身具をまとい、おしゃれだったことをご存じですか?恵庭はかつて木々に覆われた水運のまちでした。まちの歴史や近代の産業について知れば納得、“古代の宝”と“水”の記憶を探しに恵庭市郷土資料館を訪ねました。

恵庭市郷土資料館(以下:資料館)は1990(平成2)年に開館し、収蔵する資料は現在約19,000点。年間約6,000人が利用しています。その内訳は恵庭市民が7割を占めるようですが、館内には旅行者もぜひ見ておきたい一級の資料があります。早速入ってみましょう。

 

3,000年を経て出土した、縄文の墓

自然光が入る明るい資料館のエントランスには、穴の模型が縦3つ展示されています。学芸員の大林千春さんが出迎えてくれました。資料館には3名の学芸員がいて、うち2名は埋蔵文化財の担当なので、好きな人はぜひ質問を。
この穴は何なのでしょう?

 



「今から3,500年前、縄文時代後期の合葬墓(がっそうぼ)です。カリンバ遺跡では約300のお墓が見つかっています。埋葬は個人ごとが基本ですが、4基のみ複数を合葬した墓があり、そのうち3基を原寸で再現した模型です」(大林さん談)。合葬とした理由は諸説あり、埋葬の謎が深まります。

 



恵庭市ではいまも河川改修や下水敷設、個人宅の建設の前に、埋蔵文化財の発掘調査が行われることがあるそうです。1977(昭和52)年に発掘された柏木B遺跡は、環状の集団墓地。お墓は表土から約1mの深さにあり、盛土の外周部にもつくられる場合もありました。そんな柏木B遺跡にも優る “大発見”がカリンバ遺跡。10年前に国指定史跡となりました。恵庭は花のまちとして有名ですが、実は考古学の分野でも有名なのです!

 



柏木B遺跡も、もちろん一級の価値があります。大林さんによると「これはカリンバ遺跡と同じくらい古い縄文時代後期の墓地です。茂漁川(もいざりがわ)の近くで3基見つかり、ウルシの櫛8点も出土しました。ドーナツ型をした環状の墓地は、千歳市のキウス周堤墓(しゅうていぼ)と似た形態です」と熱く解説。大変興味が湧きます。

 

赤いウルシの装飾品

エントランスに展示した3基の墓に、埋葬された人を飾ったと思われる装身具、これも大変貴重なお宝です。2006(平成18)年、恵庭市のカリンバ遺跡から出土した漆製品と玉類が、国の重要文化財に指定されました。普段資料館ではレプリカを展示しています。複製とはいえ、縄文時代の歳月を経て褪せないウルシの発色が印象的。学芸員が見てもにわかに見分けがつかないくらい、精緻に復元されているそうです。

 



3,000年前の装いはウルシの装身具がポイント。髪に櫛、ひたい飾り、耳輪、首元にネックレス、胸元や二の腕、手首、腰にはベルトで装飾。「これらをつけたのは男性か女性かは、わかっていません。ウルシの装身具は例年11月初旬の2週間展示しますので、ぜひご覧ください」(大林さん談)。

ちなみにカリンバ遺跡の所在地は、JR恵庭駅の北東約800m、大学や公園、住宅地が広がる郊外の一角です。新たな歴史を示す資料が恵庭から出る・・・かも知れません。

 


 


 



道内の多くの郷土資料館には、野生動物の展示が必ずといってよいほどあります。ベッドタウンの恵庭から想像を広げ、時代を遡ると湿原や森林があった頃は、多くの動物がいたのかも知れません。恵庭市は一級河川の漁川(いざりがわ)が市の東端で千歳川と合流、さらに下流で石狩川に合流する地点にあり、古くからアイヌの人びとは狩猟や往来に舟を使いました。
次は水の源流である森をテーマに、約90年前の恵庭へ。

 

産業遺構「インクライン」

恵庭に鉄道が敷かれたのは1926(大正15)年で、鉄道や道路が整備される前は、山から伐採した木は、漁川から流送(りゅうそう)で運び出されていたそうです。流送よりも効率がよい軌道を使った運搬方法を説明したのが、このジオラマです。

 



急勾配の山から木材を運び下ろす際使われた鉄道施設、インクライン。「1927(昭和2)年、王子製紙が漁川の上流に発電所をつくるために軌道を敷設しました。目的を果たしたのち、恵庭営林署が王子から軌道を買収して約30kmの森林鉄道を敷き、このインクラインで山から木材を搬出。1949(昭和24)年の戦後復興期には、木材需要の増大で活躍しました」(大林さん談)。

 



終戦から10年後の1955(昭和30)年にインクラインは撤去され、恵庭市の今はなき産業遺構となりました。インクラという地名の“記憶”が残り、いまでも地元では滝の名称として通用しているとのこと。地名がアイヌ語の由来ではなく軌道からきていたとは、新発見。

 



ほかにも館内は興味深い展示がいっぱい。天井に迫る高さ6mの地層のハギトリ模型は、地学好ならきっと大満足。恵庭開拓記念公園も隣接してあり、野鳥がさえずる日は、屋外散策にも最適です。
恵庭を知るひととき、一度訪れてみてはいかがでしょう!

 


 

交通アクセス

(1)JR恵み野駅から徒歩で
ニュータウン恵み野の「団地環状通」を西端方向に約2.7km、約30分

(2)マイカーで
千歳方面から国道36号線(恵庭バイパス)「道の駅花ロードえにわ」を目指し、「中島町5」交差点を右折、約2km。看板あり。駐車場完備

(3)JR恵み野駅から地域循環バスで
エコバスの島松駅行きコースに乗車し「恵み野東7丁目」バス停で下車。徒歩約7分(※運行本数が少ないのでご注意のうえ、下記URLを参照ください。開館時間中エコバスは計4本運行)
恵庭市を循環するコミュニティバス「エコバス」時刻表
「エコバス」路線図