鳥好きネコ好き必見。天売島のいまを知る「北海道海鳥センター」


 
海鳥の繁殖地として名高い羽幌町の天売(てうり)島。羽幌フェリーターミナルの近くに、日本で唯一の海鳥専門の展示・教育施設があります。天売島ではいま、海鳥の繁殖に脅威となっている野生化したネコを捕獲して、人の手に返す取組が進んでいることをご存じですか?天売島の鳥好き・ネコ好き必見の施設、北海道海鳥センターを訪ねました。
 
北海道海鳥センター(以下:センター)は、1997(平成9)年に開館し、まもなく開館20周年を迎える日本で唯一の海鳥専門の展示・教育施設。環境省が建物をつくり、内部の展示とセンターの運営の中心は羽幌町が担っています。場所は天売・焼尻の離島に渡る羽幌フェリーターミナルから約1km。周辺には道の駅「ほっと・はぼろ」もあり、羽幌町の見どころのひとつとなっています。
 
天売島を訪れる人はこのセンターを事前に見学しておくと、島での感動がひときわ強く味わえます。町の普及啓発スタッフ石郷岡卓哉(いしごうおかたくや)さんが迎えてくれました。
 


 
 

海鳥を知る日本で唯一のセンター

館内には海鳥の調査と保護の手法を研究するスタッフとして、環境省のスタッフ2名と、普及啓発を担当する町職員2名がいます。展示はさっと一巡して20分、スタッフの説明を聞いてシアターで天売島の映像を見れば約1時間が目安。わかりやすく展示を説明してもらえるので、ぜひ受付で声をかけてみましょう。
 


 

「天売島に出る船の時間待ちに、海鳥センターを見学するお客様は多くいらっしゃいます。出航の時間に余裕を持ち、島に渡る前にじっくり見学すると天売島での滞在が一層楽しめますよ」と石郷岡さん。離島のひとつ天売島は、海鳥観察で人気の周囲12kmの島。羽幌フェリーターミナルからは高速船で約1時間です。
天売島は、このセンターの足元にもありました!
 


 
 
直径約1.5mの円形のジオラマが、床面に埋め込まれています。「天売島を鳥の目線となって見ることができる立体模型です。島の西岸は切り立った崖が発達しています。東隣の島には焼尻(やぎしり)島がありますが、島の標高が低く大きな崖がないため、海鳥は天売島に繁殖に集まります」(石郷岡さん談)。天売島には、海鳥だけでなくゴマフアザラシやトドなど海獣も現れるそうです。
 
 

地道にこつこつ、海鳥の調査

海鳥の楽園として知られる天売島ですが、一部の海鳥は生息数が著しく少なく、絶滅のおそれがある生物を示した、いわゆるレッドデータリストの1A類に、ウミガラスやウミスズメなどが軒並み分類されています。生息数が減る原因は現在調査中ですが、温暖化に伴うエサの減少、新たな天敵の増加など、いくつもの要因が絡み合っているそうです。
 


 

「ウミガラスやウミスズメの繁殖地は、国内では天売島のみです。ウミガラスは現在30羽前後しか確認されていません。夜中しか島の回りに現れないウミスズメはなぞの多い鳥で、保護にあたり有効な対策はようやく知られ始めたところです。3年前から夜間に船からサーチライトで海を照らし、船上からウミスズメの数をカウントします。その結果、200羽から300羽前後はいるだろうという調査結果が得られました。2014(平成26)年にはヒナも見つかりました」と調査の困難さを教えてくれました。
 
数を減らした海鳥ですが、近年増加している海鳥もいます。ウトウは増加傾向が見られ、1990年代から2000年代の調査では30万つがいで推移し、2011(平成23)年の調査で約40万つがいを確認。ウトウのコロニーをガイドと共に訪れ、親鳥が帰巣する様子を観察するツアーが天売島の新たな観光のアクティビティになるなど、地元の活性化にも役立っています。

 

高さ8m、営巣を再現した断崖ジオラマ

このセンターで1番大きな展示は、天売島西岸の切り立った崖を擬岩で再現したジオラマ。天売島で見られる8種の海鳥の営巣の様子を、壁面に再現しています。切り立った崖が天敵を遠ざけ、襲われる心配の少ない環境で、天売島の西岸は多くの海鳥たちの繁殖地として発達してきました。スピーカーを通して海鳥や海獣の声も、リアルに聞こえてきます。
 


 

お奨めの鑑賞アイテムはジオラマの前のロッキングチェア。「座ってみてください」と石郷岡さん。椅子に座り体を揺らすと、あら不思議、展示に動きが出て波間を漂う海鳥の目線でジオラマを見ることができます。シンプルな工夫ですが、効果的に波間からエサをくわえて巣に戻る親鳥の気分が味わえます。
 


 

切り立った断崖は天敵が少ないとはいえ、親たちは安心できません。上空からはカラス、そして近年は野生化したネコもヒナを狙い断崖に出没するそうです。
 


 


 

センターでは天売島の課題を知ることができます。それは「天売ネコ」の問題。
港の集落で飼われていたネコが野生化し、繁殖地のヒナを襲い食べてしまう行動が顕在化しました。90年代の調査で約200匹から300匹のネコがいると推計した環境省や町は、離島のネコ問題に着手しました。小笠原諸島の先行モデルを参考に、ネコの捕獲と不妊処置、人からの世話に慣れる「馴化(じゅんか)」期間を経て、再びネコを家庭に戻す事業を行っています。
 
 

天売ネコを馴化する現場へ!

天売島の繁殖地では近年、ネコがヒナを襲って食べてしまうことで、海鳥が生息数を減らす一因となっています。家で飼うネコが屋内外を自由に出入りするうち、半ノラ化した経緯には、人の管理の不十分さが招いたことも問われるべき問題です。「野生化しても彼らはイエネコ。天売島の気候は厳しく、野ネコとしてエサを取り、冬を越すのは困難を伴います」と石郷岡さん。愛猫家には心が痛む問題です。
 


 

こうした天売ネコを再び人の手に戻す試みを知るべく、取り組みが進んでいると案内されて進むと、受付がある事務所で1匹目を発見。
 


 


 

センターでは天売ネコを飼育しており、希望者は見学できます。ネコのゲージが並ぶ飼育室には、5月下旬に天売島で捕獲し、送られてきた12匹が個別に入っています。殺処分はしないのでご安心を。
 
「ネコたちは当初ナーバスになっていますが、名前を付けてスタッフから名前で呼ばれ、ここでエサやトイレの世話を受けるうちに、仲間のネコや人と暮らすことに慣れていきます」と、ゲージに手を入れて世話をする石郷岡さん。この馴化を経て、現在約30匹が札幌市をはじめ、道内に引き取られて暮らしています。
 


 

ダッシュに見送られて再び展示室に。ネコたちの現状を見て、展示コーナーのパネルを読むことで、天売ネコのプロジェクトに役所やNPO、多くの人の協力が必要なことが、一層伝わってきました。「天売ネコのプロジェクトがメディアで知られることで、自然や鳥が好きな人だけでなく、ネコが好きな人もセンターに訪れたり、問い合わせが入ったりするようになりました。私たちは新しい交流効果と、手応えを感じています」。
 
天売島の海鳥を知り、天売ネコに出会える北海道海鳥センター。ぜひ訪れてみてはいかがでしょう!
 

 
 

交通アクセス 

(1)マイカーで
道央自動車道「札幌IC」から深川JCTで深川留萌自動車道へ。「留萌大和田IC」にて下車、国道233から232号線で羽幌町市街地へ。札幌市から片道約205km、所要時間約3時間。駐車場完備
 
(2)都市間バスで
予約制の高速乗合バス「特急はぼろ号」高速経由便(2系統5往復)でおよそ3時間9分「羽幌ターミナル」下車、徒歩約500m
沿岸バス株式会社

 

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