2015年07月20日 | T・H

「北海道大学札幌農学校第2農場」札幌市:北海道遺産シリーズ(24)

耐震改修工事が終わり、今年6月に公開が再開された北海道大学札幌農学校第2農場▲耐震改修工事が終わり、今年6月に公開が再開された北海道大学札幌農学校第2農場

 

クラーク博士の考えをかたちにしたモデル農場の施設群

札幌農学校はのちに北海道大学になる学校で、1876(明治9)年に開校しました。アメリカの大学からクラーク博士が教頭として招かれ、実際に農作物や家畜を育てながら農業を学ぶ教育が行われました。学校には実習のための農場がつくられ、第1農場は学生の教育と研究の施設、第2農場は北海道に畜産経営を広めるためのモデル農場になりました。「札幌農学校第2農場」は北海道大学でも最古の施設群であり、その中に収められている明治初期の輸入農業機械群は大変貴重なもので、1969(昭和44)年には国の重要文化財にも指定されています。

 
第2農場の見学はこちらの事務所で受付を。札幌時計台(旧札幌農学校演武場)を思わせる農場内で唯一白ペンキ塗りのこの建物も重要文化財です▲第2農場の見学はこちらの事務所で受付を。札幌時計台(旧札幌農学校演武場)を思わせる農場内で唯一白ペンキ塗りのこの建物も重要文化財です


第2農場には1戸の酪農家をイメージした施設が建てられています。現存しているのは、模範家畜房(モデルバーン)、穀物庫(コーンバーン)、種牛舎、牧牛舎、脱ぷ室・収穫室、秤量所、釜場、生乳所、事務所の9棟。
中でも第2農場のシンボルともいえる建物の牧牛舎は、クラーク博士の「北海道のような寒い地域で農業を成功させるには、家畜のために半年間の食料と快適な居場所が必要である」という考えをかたちにした施設で、壁厚に土を入れた防寒対策、畜舎の裏側に建てられたれんが造の根菜貯蔵庫、札幌軟石の石造サイロ、建物の上下に設けられた通気口など、随所に寒冷地の畜舎環境に配慮した工夫がされています。
またこの建物、中央から北側はコンクリートの通路に木製の餌槽(牛が餌を食べる箱)がしつらえてありますが、南側は通路、餌槽ともにれんが造になっていて、飼育環境や作業効率を木造とれんが造で比較実験していた様子を知ることができます。

 
左右対称の外観が特徴的な第2農場の牧牛舎。南側(写真右側)は外の腰壁もれんが造▲左右対称の外観が特徴的な第2農場の牧牛舎。南側(写真右側)は外の腰壁もれんが造

 
牧牛舎の南側には丈夫で耐水性のある「焼過ぎれんが」(普通のれんがより高温で十分焼き込んだれんが)が使われています▲牧牛舎の南側には丈夫で耐水性のある「焼過ぎれんが」(普通のれんがより高温で十分焼き込んだれんが)が使われています

 
牧牛舎の裏側にはれんが造の根菜貯蔵庫と札幌軟石の石造サイロが連なっています▲牧牛舎の裏側にはれんが造の根菜貯蔵庫と札幌軟石の石造サイロが連なっています


牧牛舎の隣にある模範家畜房(モデルバーン)には、2階に大きな扉が付いているのが見えます。これは、家畜の餌となる干し草を搬入する入口。1階に牛や馬の飼育室、大きな空間のある2階に干し草を収納して床の扉から下の餌場に落して餌やりするなど、作業の効率を考えた設計になっています。

 
移築前の建物の様子を再現した模型。馬車に干し草を積んでスロープから2階に運び入れていました▲移築前の建物の様子を再現した模型。馬車に干し草を積んでスロープから2階に運び入れていました

 
模範家畜房(モデルバーン)2階の床に設置された餌やり用の扉。階下の家畜房が見えます▲模範家畜房(モデルバーン)2階の床に設置された餌やり用の扉。階下の家畜房が見えます

 
模範家畜房(モデルバーン)の2階、扉の上部に取り付けられたクレーンは、移築時に土堤が外されたため干し草を釣りあげて運び入れるために付けられたもの。壁面の牛のモチーフも農場の雰囲気を出しています▲模範家畜房(モデルバーン)の2階、扉の上部に取り付けられたクレーンは、移築時に土堤が外されたため干し草を釣りあげて運び入れるために付けられたもの。壁面の牛のモチーフも農場の雰囲気を出しています


農場の敷地奥にある高床式の建物、穀物庫(コーンバーン)は、トウモロコシなど飼料穀物や種子を保管していたところ。1階は正面以外にすのこ状の壁面が縦・横張りに設けられ、風通しを良くする工夫がなされています。また、小動物の侵入を防ぐために「ねずみ返し」を設置して入口には取り外し可能な木製階段が付けられました。
今回の耐震改修工事で2階まで見学可能になった穀物庫(コーンバーン)。2階に上がったらぜひフレームに使われている木材の表面をよく見てみてください。横に並ぶすじ状の模様は、水力のこぎりの跡。創成川の水を動力に木材が切り出されていたそうです。施設内の建物の部材に残る、歴史を伝えるヒントの数々も見逃せません。

 
穀物庫(コーンバーン)の木材に残る水力のこぎりの跡▲穀物庫(コーンバーン)の木材に残る水力のこぎりの跡

 

北大の英知を結集!重要文化財耐震改修工事の工夫の数々

今年3月に耐震改修工事を竣工した第2農場。埋蔵物の宝庫と呼ばれる北海道大学の敷地で短期間の中終えることができた今回の耐震改修は、北大全学の英知が集まってなしえたもの。敷地内の建物内では構造補強の色々な施工例を間近で見ることができます。

 
耐震補強用に設置された鉄骨ブレース。これだけ見ると物々しい雰囲気ですが、できるだけ部材を目立たせず本来の姿を傷つけないよう、建物に配慮して設置されています▲耐震補強用に設置された鉄骨ブレース。これだけ見ると物々しい雰囲気ですが、できるだけ部材を目立たせず本来の姿を傷つけないよう、建物に配慮して設置されています


壁の内側に合板を入れるなど見えないところに補強材を設置しているほか、耐力が不十分なところには、柱や天井に沿って鉄骨ブレースでしっかり補強。耐震補強用に設置された鉄骨ブレースが黒く塗装されているのは、もともとあった材料と新しく設置した材料をはっきり区別するためです。また、埋蔵物への影響を少なくするため、基礎の補強には掘削面の小さいアースアンカーが採用されています。

 
基礎の補強に採用されたアースアンカー(構造物を鋼材で出来た腱で地中の岩盤で留める補強材)。穀物庫(コーンバーン)の床下から見ることができます▲基礎の補強に採用されたアースアンカー(構造物を鋼材で出来た腱で地中の岩盤で留める補強材)。穀物庫(コーンバーン)の床下から見ることができます

 

これも必見!貴重な輸入農業器具の数々

現在、模範家畜房(モデルバーン)の2階、牧牛舎の1階に、アメリカから輸入された明治時代の農機具や北海道で作られた農機具など、約300点以上が展示されています。めずらしい形をした外国製の大きな農機具の数々を見ながら、何に使っていたのか想像してみるのも楽しいです。

 
模範家畜房(モデルバーン)の2階の農機具展示ゾーン。不思議な形をしたものは何の作業に使われていたのでしょうか…?(取材協力:いしかり市民カレッジ)▲模範家畜房(モデルバーン)の2階の農機具展示ゾーン。不思議な形をしたものは何の作業に使われていたのでしょうか…?(取材協力:いしかり市民カレッジ)

 
農機具ながらアンティーク家具のようなおしゃれなデザインが施されているものも▲農機具ながらアンティーク家具のようなおしゃれなデザインが施されているものも


牧牛舎の向かい側には軟石造の「釜場」、れんが造の「製乳所」があります。中には入れませんが、石積み、れんが積みのしっかりとした重厚感や窓まわりのキーストーンなど、木造の建物との違いを学ぶことができます。
 

札幌軟石造の「釜場」は家畜用の餌を作る施設。入口上部の尖頭アーチを逆さにした形の窓は牛の顔にも見えるような…?(取材協力:いしかり市民カレッジ)▲札幌軟石造の「釜場」は家畜用の餌を作る施設。入口上部の尖頭アーチを逆さにした形の窓は牛の顔にも見えるような…?(取材協力:いしかり市民カレッジ)

 
「製乳所」は牛乳を加工する施設。れんが造ならではの細かなデザインと窓、窓台に付けられた細工が素敵▲「製乳所」は牛乳を加工する施設。れんが造ならではの細かなデザインと窓、窓台に付けられた細工が素敵


第2農場の公開期間は春(4月下旬)から秋(11月上旬)まで、入場時間は午前10時から16時入場までとなっています。散歩がてらゆっくり見るのもいいですが、市民講座やイベントなどで施設内のガイドツアーも行われているので、施設を詳しく見学したい方はぜひ参加を。一度行ったことがある方も、きれいに葺き替えられた屋根や最新の耐震設備など、また違った施設の見どころがあるはず。
北海道開拓の父・クラーク博士の意思が今ものこる第2農場。北海道を愛する方に一度は訪れてほしい場所です。

 
キャンパス内で北大のあゆみを見守るクラーク博士の像。レリーフには博士が研究していたオオオニバス(睡蓮の一種)が描かれています▲キャンパス内で北大のあゆみを見守るクラーク博士の像。レリーフには博士が研究していたオオオニバス(睡蓮の一種)が描かれています

 

関連リンク

札幌農学校第2農場
北海道大学総合博物館
いしかり市民カレッジ

 

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