大地を創る人。“海と食卓を繋ぐ”道南のスルメイカ漁師・西田たかおさん


 
夜の海に浮かぶ漁火は、北海道南部の夏の風物詩。今年もスルメイカ漁の季節がやって来ました。スルメイカ漁は情報と分析が肝となる頭脳戦。そんな知られざる漁の話を、「第五十八 旭丸」の西田たかお船長にうかがいました。
 
日本海側に位置するせたな町。自然と時間が創った海岸線の奇岩と夕日が美しい町です。晴れた日には海の向こうに奥尻の島影が見えます。その周辺海域が、西田さんが狙うスルメイカの漁場です。



 

「真イカ」とも呼ばれるスルメイカは、東シナ海~日本海南部の海域で生まれ、エサを追いかけながら成長を続け、北海道まで回遊。水温が下がる秋口からは産卵のため、徐々に南の海へとUターンします。寿命がわずか1年というスルメイカがもっとも栄養を蓄える時期が、北海道沖ということになります。
特に奥尻周辺は潮の流れが早く、刺身で味わうと食感が違うと評判です。



 

光に集まるスルメイカの習性を活かし、集魚灯を煌々と照らすという漁法は昔から変わりませんが、漁獲するのはロボットが活躍。ロボットといっても、コンピュータ制御のイカ釣り機のこと。この機械が開発されてから、1人で漁に出ることが可能になったといいます。漁業従事者が激減している中、人手不足を補っているのは高額な機械なのです。



 

「コンピューター制御になり、釣り上げるのは確かに省力化になったけれど、回遊魚であるイカの群れを探し出す判断は、人間がやらなければなりません。広い海の中、より濃いイカの群れを探すには、情報をどう読み解くかが重要になります」と、西田さん。
 
目には見えない深い海の中。刻々と変化する魚群探知機とソナーからの情報はもちろん、海流、潮流を把握し、その日の天候、風の向きや強さを頭に入れ、前日のデータ、過去の記録、さらにこれまでの経験を重ね合せて分析します。
 
「海を面で捉え、いかに点まで絞れるか」が腕の見せどころであり、醍醐味でもあります。スルメイカ漁は相当な頭脳労働なのです。


 

狙いが当たり、濃いイカの群れを引き当てると、船上は大忙しです。氷を敷き詰めた発泡箱に、釣ったばかりのイカをサイズ別に詰める作業が待っています。こうした船上での丁寧な作業により、鮮度を保ったスルメイカが流通するのです。


 

西田さんはこの地で4代続く漁師として漁に出るほか、水産加工品を手がける会社「マーレ旭丸」の代表も務めます。砂糖に醤油、前浜産昆布だけで味を調えた「漁師のいかめし」は、西田家に伝わる浜の味。獲れたてを瞬間冷凍した「いかそーめん」、浜風を当てた「一夜干しいか」など、「自ら獲ったとびきり新鮮な素材に新たな価値を加え、よりおいしく届けたい」との思いから安心安全な商品づくりをしています。



 

さらに漁のない時期、オリジナル商品を持って全国の百貨店を回り、消費者に郷土の風景や味について語りかけています。
 
海から陸へと、西田さんが幅広く活動するのは、生産者の声を直接届けたいという思いがあるからです。「生産現場のこと、価格の背景にあるもの、海産物の魅力をちょっとしたおしゃべりの中で話すことで、“海と食卓は繋がっているんだ”と感じてもらえたら嬉しいですね」。


 

イカ漁師にとって悩みの種は、長く続く燃油費の高騰。経費に占める燃料費の割合が高く、漁業経営に深刻な影響を与えています。集魚灯を点すにも燃料は欠かせません。だからといって、高騰分を価格に上乗せできず、それに見合う漁獲量が毎回あるとも限りません。



 

「ただね、こちらが一方的に伝えるのではなく、消費者の声を直に聞くことで、気づかされること、元気をもらえることも多々あります。今の時代、双方向の関係性は大切ですね」。
 
旬のおいしいものをより楽しむためにも、西田さんの言葉通り、海と食卓は繋がっていること、そしてその背景の情報にも敏感になりたいと思いました。

 

西田さんにも会える食のイベントが8月に開催!

せたな町の海と山を学びながら楽しめる食のイベント「海フィール」実行委員会の委員長も務める西田さん。今年はせたな町合併10周年記念事業として「海フィール2015」を8月7日(金)~9日(日)に開催します。生産者を巡るツアーや食の講演会を予定しているほか、せたなの山海の幸たっぷりのおいしいものも味わえます。もちろん、西田さんが獲ったピカピカのスルメイカも楽しめますよ。




 

関連リンク

海フィール2015 Facebookページ
マーレ旭丸
 

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「大地を創る人」とは

さまざまなおいしい食を生み出す北海道を「大地」と表現。農業や漁業、酪農業を通し、「新しい北海道を創りたい」「北海道を支えたい」「未来の北海道をデザインしたい」。そんな思いを胸に抱く北海道の生産者を、「大地を創る人」としてご紹介します。