情熱の仕事人。十勝の「農」と「食」の魅力を世界へ!丸勝専務「梶原一生」



豆どころ、北海道・十勝の豆問屋で農産物総合商社「丸勝(まるかつ)」の3代目。運営にあたる農と食のテーマパーク「十勝ヒルズ」を軸に、十勝の魅力を世界へ発信するべく奮闘中。梶原一生さんの情熱に迫ります。

 

中学卒業後に十勝を離れ、ニュージーランドへ 

豆の卸売業を中心に手がけ、60余年にわたり十勝の農業と共に歩み続ける丸勝(帯広市)。豆の消費拡大を目指した商品開発と十勝を発信していく拠点にと、2008年新たにガーデン事業に着手。経営不振に陥っていた観光庭園を取得し、「十勝ヒルズ」として運営をスタートさせました。
 
幕別町の小高い丘の上。遠く日高山脈を望み、清流として名高い、札内川の水の恵みを受けるロケーションに、十勝ヒルズはあります。農と食というコンセプトのもと、梶原さんはガーデン事業の立ち上げから、プロジェクトを率いてきました。



 

中学卒業と同時に単身ニュージーランドへ。大学まで9年半の留学生活を送ってきました。
「自分の意志であるなら、何でもやってみなさいという親で。もっと早く行きたかったんですが、それはさすがにダメだと(笑)」。
最も多感な時期に異文化のなかに身をおき、多様なものの見方や考え方を吸収してきた梶原さん。「人と違う経験をしてきたことが、いまの自分の強みだと思っています」。また、祖国に思いを寄せる様々な国の人々と交流することで、ふるさと十勝のことを考えるようになったといいます。
 
ニュージーランドでの生活が長くなっていた梶原さんは、将来を摸索していました。
「向こうで何かやりたい気持ちもあって、(家業は)弟たちの誰かが継げばいいと思っていたんです」。帰らないと話すと、弟たちから思いもよらない言葉が投げかけられます。「俺たちは兄貴を超えることが目標なんだ。兄貴が継がなくてどうするんだ」。ずしりと胸に響き、帰郷を決意します。
 
 

24歳で帰国。十勝ヒルズのコンセプトを一つひとつかたちに

帰国後、父親が経営する丸勝に入社。ガーデン事業の舵取りを任されたのは24歳のときでした。
「いきなり若造がトップで入ってきたわけですから、当初は現場の社員から強い反発がありました。話をしようとしても『社長の口から聞きたい』と、聞いてはもらえませんでしたね」。
梶原さんは会話をする機会を積極的につくり、ときにお互いの思いをぶつけ合うことをしてきました。そして畑に入り、誰よりも遅くまで作業にあたります。少しずつ距離を縮め、1年後には間にあった壁がほぼ取り払われていました。



 

農と食をコンセプトとするなか、「レストランは非常に重要な要素」と梶原さん。園内に開いたのは、ハンガリー料理を味わえる「ファームレストラン ヴィーズ」。なぜ、ハンガリー料理なのでしょうか。
「1つは、素晴らしいシェフに出会えたことです。それと、ハンガリーは十勝とほぼ同じ緯度にあって、気候やつくられている作物が似ています。かつ、豚文化であることも十勝に共通します。ハンガリーに行って料理を食べてみて、これは十勝の食材を生かせるのではないかと思いました」。
ヴィーズのヘッドシェフ、モルドヴァン・ヴィクトルさんは、ハンガリー駐日大使館の料理長を務めていました。梶原さんはヴィクトルシェフの料理に対する熱意に惚れ込み、また、ヴィクトルシェフは十勝ヒルズのコンセプトに共感。ここにしかない、食の体験を生み出しています。
園内には菜園や農場があり、多品種の野菜を栽培。育てた野菜たちがレストランで使われます。



 
 

訪れてもらい、発信していく「十勝」

十勝ヒルズでは、十勝の農産物を活用して商品開発にも取り組んでいます。
「国内だけではなく、世界にも届けていきたいですね。世界の中でみたときにどうなのか、本当においしいものなのかをきちんと追求して、マーケットに合ったものを出していきたいと思っています」。
豆の新しい食べ方を提案する商品の1つに、小豆、金時豆などを原料にした「純粋酢」があります。「十勝産の小豆は世界一の品質。酢にはその中からよりいいものを選んで使っています」。この純粋酢をフランスでシェフたちにプレゼンテーションする機会があり、とてもよい反応を得て、一部のレストランで使われることになったそうです。
 
梶原さんは十勝とハワイを結ぶ交流プロジェクト(HAPA=ハパ/ハワイ・アジアン・パシフィック・アソシエーション)にも携わり、様々な活動を行っています。昨年秋にはハワイの食の祭典で十勝産小豆を使った料理コンテストが開かれ、ハワイ、アジアなどの著名シェフ80人がメニューを競ったそうです。
「十勝の小豆の名を知ってもらう機会になりました。今年は長いもとゆり根を紹介します。小さな種をまき続けていくことで、ハワイというマーケットを通して、世界に発信していける可能性もたくさんあると思っています」。





梶原さんとスタッフのみなさんが一心につくりあげてきた、美しいガーデンと、農と食のつながりを体感する十勝ヒルズ。
「すべてを整えて来年7月に、やっとひとつのかたちになります」。
訪れる人にはここで十勝を感じたり発見したりしてもらいたい、そしてここから十勝を発信していくと力強く語ります。「ある意味僕はわか者・ばか者・よそ者なので(笑)、そういう視点も生かしていきたいですね」。
 
自社のことだけではなく「十勝」に情熱を注ぎ、積極的にチャレンジしていく。梶原さんの存在は、十勝が世界や未来に向かう大きな力になっていくのだろうと感じたインタビューでした。