大地を創る人。食べてくれるひとに近づく農業を。十勝・本別町の前田茂雄さん



5種類の小麦を栽培し、委託製粉した小麦粉を、直接パン店に販売している十勝・本別町の前田農産食品、代表取締役専務の前田茂雄さん。3年前からはポップコーンの栽培、加工にもチャレンジ。「レンジでチンして食べられる国産ポップコーン」の誕生間近です。

 

ポップコーンから〝なめんなよ〟!?




取材当日、案内された畑には、マルチフィルム(畑を被覆するフィルム)がかけられた畝(うね)と、むきだしの畝がありました。「いま試験中なんです。マルチをかけているのといないのでは、発育がどれだけ違うのかとかいろいろ。現状では、マルチをかけているほうが、生育が2倍くらい早いですね」。
前田農産食品の前田茂雄さんがそう説明してくれたのは、お菓子のポップコーンの原料となる、ポップコーンという品種のトウモロコシについてです。「レンジでチンして食べられる国産ポップコーンの商品化を目指して」3年前から栽培にチャレンジ。農閑期には、乾燥させたポップコーンを油と塩で風味付けし、袋詰めまでを行う加工場・ポップコーンファクトリーをスタッフと一緒につくっており、今年(2015年)の冬には完成です。

 



ポップコーン栽培をしようと思った契機は、自分の代になってなにか違う作物にチャレンジしてみたかったから。どうせなら、数年前に導入し、小麦に使っている高額のコンバインや乾燥機などを活用できるものにしようと説明書を見ていたところ、使用例としてポップコーンと書いてあるのを見つけます。「これ、おもしろいかも」。レンジでチンして食べる袋詰めのポップコーンの栽培から加工、販売までを自社で行えば、農閑期にも仕事が発生します。

 



「北海道は、家畜のエサとなるデントコーンや僕たちが食べるスイートコーンもつくっているからできるだろう。そんな考えで、わりと安易にはじめたんですが、1年目は収穫を目前にして霜や凍害で全滅。無鉄砲な俺に、ポップコーンが〝なめんなよ、そう簡単にははじけないぞ!〟とメッセージを送ってきた気がしました(笑)」。

 

食べてくれるひとに近づく農業

前田さんは、4代つづいてきた前田家の畑ではやっていなかったことをしたいと、「食べてくれるひとに近づく」農業に取り組んでいます。ポップコーンもそうですが、これまでは、ゆめちからやキタノカオリなど5種類の小麦の栽培を軌道にのせ、委託製粉した「香味麦選」シリーズという小麦粉を、パン店に販売しています。

畑にいると、使うひとの考えや意見はなかなかわからないものですが、その点、直接販売することで生の声を聞けるのは、とてもうれしいことだと語ります。

 



「例えば、パンづくりにはタンパク含有量の高い強力粉がよろこばれるものだと思ってそうしていたんですが、それだとバゲットに使うにはよくないといわれて驚いたことがありました。おかげで栽培の仕方や商品に幅ができましたね」。また、満足してもらえている点も聞くようにし、「すべて翌年の課題として反映しています。畑で作業をしていると、これは○○さんに…なんてお客さんの顔が浮かぶんですよ」。

ここ数年は、たくさんのパン店のスタッフが畑に来ているといいます。収穫のときや種まきのときと時期はさまざまですが、みなさん揃って感動して帰られるそうで、ポップコーンファクトリーも見学してもらうことを前提につくっています。「地域の子どもたちにも見てほしくて」と高さ90cmほどの低い窓も設置。生産者ならではの食育にも取り組んでいます。

 


 

1年に1回のチャンス。いまは開拓者の気持ちで

前田さんは、大学進学やポップコーンの勉強のためにと何度か渡米しており、大規模な農業も経験しています。「アメリカと北海道の違いは、天候なんですよ」と前田さん。アメリカは干ばつこそあれど梅雨がありません。雨が降らないおかげで、ひとつの作物の種まきや収穫を1ヶ月以上かけてできるといい、「1週間しかチャンスがない」北海道では、土地があってもあの規模にするのは難しいと語ります。それでも「後継者が不足しているので、規模拡大は将来必至ですね。先人たちが苦労して開拓した地を守っていきたいですから」。

 



つねに夢を持って前向きに仕事に取り組む前田さん。最後にこんなことも語ってくれました。「農業は1年1作ですから、いま40才の僕が65才までやるとしてあと25年。チャンスは25回ということです。いまは開拓者のつもりで、畑や人との出会いも大切に、楽しんだり苦しんだりしながらやっています」。

 

 

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「大地を創る人」とは

さまざまなおいしい食を生み出す北海道を「大地」と表現。農業や漁業、酪農業を通し、「新しい北海道を創りたい」「北海道を支えたい」「未来の北海道をデザインしたい」。そんな思いを胸に抱く北海道の生産者を、「大地を創る人」としてご紹介します。