情熱の仕事人。シャルキュトリーで“北海道”を発信。シェフ「宮下照生」



札幌屈指のイタリアンシェフがいま力を入れているのは、北海道産の肉を使ったシャルキュトリーづくり。その背景には熱い思いがありました。情熱の仕事人、宮下照生さんに話を伺いました。

 

自分の思いにまっすぐ、常に貪欲に

道内外食材を吟味し、素材の持つ力を生かすイタリア料理の「マガーリ」、イタリアンバール「カンティネッタ サリュ」、道産和牛・豚、稀少部位を提供する「ホルモン銀牙」。そして、“北海道の肉”をテーマとしたカジュアルなフランス料理店「プティ・サレ」と、札幌市内に現在4店舗を展開。宮下さんはオーナーシェフとしてマガーリの厨房に立つ一方、工房でシャルキュトリーづくりに打ち込む日々を送っています。





十勝・幕別町出身。よく行く焼肉店のスープの味をいかに再現できるか。小学生のころ友達とそんな遊びに夢中になり、中学のときにはすでにイタリア料理の道へ目標を定めていました。

調理師の専門学校を卒業後、札幌のホテルに勤めていたとき、現「トラットリア・ピッツェリア テルツィーナ」の堀川秀樹オーナーシェフと出会い、店舗立ち上げ時のテルツィーナへ。「お客さんとのコミュニケーションも料理の一部である」など、堀川シェフから学んだことは自身の「原点といえる」と話します。テルツィーナで活躍後は、東京の「アロマクラシコ」などで腕を磨き、2006年に独立。マガーリのオープンに至ります。

道外から訪れるファンも多く、高い評価を得ながらも2013年にいったんの閉店を決断。自身が次のステージへ向かうため、ヨーロッパ各国を食べ歩き、見聞を広げようと日本各地を旅します。現状に安住せず、自分の思いにまっすぐに。それが、宮下さんの一貫したスタンスなのでしょう。

 

道産肉でシャルキュトリー。産地の料理人として




札幌市内に構えた「プティ・サレ ラボ」は、シャルキュトリーの専用工房。シャルキュトリーとは、フランスで古くから保存食として伝えられてきた肉の加工品のことで、代表的なものにソーセージ、ハム、テリーヌなどが挙げられます。シャルキュトリーの職人はシャルキュティエ。宮下さんはシェフであり、シャルキュティエでもあるのです。ヨーロッパから帰国後、人づてに聞いて訪ねた京都の専門店の味に惚れ込み、同店に志願してその製法を学んだそうです。








豚をはじめ牛や鶏、鴨、エゾシカなど、使う原料肉はすべて北海道産。素材や製法の異なる各種ソーセージ、テリーヌ、ハム、ベーコン、コンビーフなど約30種類を手がけています。
素材に対する探究心の強い宮下さん。食材を見極め使うだけではなく、生産者やそこに携わる人たちと共に育みあう関係を大切にしてきています。その肉の特性を熟知した宮下さんがつくるシャルキュトリーは、駅前通りの商業施設・赤れんがテラス内のプティ・サレで味わうことができ、店頭での購入も可能です。





当初は自身がシャルキュトリーをつくる発想はなかったとか。「興味を持ったことをやり始めると、止まらなくなるというか」。そういって笑い、「自分が納得できるものを出したかったので」ときっぱり。





道産の肉で手がけた加工品を、道外へも広く発信していきたい。そこには、こんな思いがありました。
「地元のものを地元の中だけで消費するだけではなく、どんどん外に紹介していかなければだめだと僕は考えているんです。もっと外の人に北海道のものを買ってもらう、外から訪れてもらう。そういうことにつながる取り組みが増えていけば、北海道が今よりも強くなっていくはずだと思っています」。その一端を担うために果たすべき役割がある、と宮下さんは力を込めます。

宮下さんを動かしているものは何か。それは、「自分の仕事が好き」、「お客さんに喜んでもらいたい」という、純粋な情熱でした。