日本最北の高層湿原「びふか松山湿原」

北海道には、釧路湿原、サロベツ湿原、雨竜沼湿原など、ラムサール条約登録湿地に指定された多くの湿原があります。今回は、気軽に散策が楽しめる穴場スポット、美深町の松山湿原をご紹介します。
 
松山湿原は、アカエゾマツやハイマツの低木が点在する独特な空間が魅力です。湿原へ行く登山道のオープン期間は例年6月下旬~10月中旬の4ヶ月間のみ。初夏から秋にかけて、湿原特有の植物を見ることもできます。
 
 
 
 

数千年かけて形成された高層湿原

美深町市街地から30㎞ほど離れた北見山地に、松山湿原はあります。
標高797m、面積は18ha(東京ドームおよそ4個分)の比較的小さな高層湿原です。
 
ところで、高層湿原とはどういうものなのでしょうか。
気温が低く地下水位の高い場所では、枯れた植物が分解されずに蓄積されて泥炭となります。その泥炭が長い年月をかけて高く積み重なり、雨水や雪解け水を蓄えた「高層湿原」となるのです。
勘違いしてしまいそうですが、標高の高いところにある湿原という意味ではないのですね。
 
植物などの有機物が分解されていない泥炭は、積み重なるごとに栄養素が少なくなります。そのため、泥炭の集合体である高層湿原の地表には、栄養素の乏しい環境でも生息できるミズゴケなどの特殊な植物が育つようになるそうです。
泥炭が堆積する速度は1年間に1ミリほど。高層湿原と呼ばれる形状をなすまでに、数千年から1万年もの歳月がかかるのだとか。
高層湿原は自然界の巨大な貯水タンクであり、高山や湿地に生息する動植物の棲みかになっている貴重な場所。
松山湿原も、数千年の時をかけて育まれた貴重な自然遺産といえます。
 
 

30分の登山を経て湿原へ

天竜沼駐車場の近くにある登山口から、およそ900mの山道を登り松山湿原へ向かいます。
登山口には「松山の鐘」があり、入山前に鐘を鳴らしてから出発。
 
 
 
 
お気づきでしょうか。
「熊出没注意」
ここは熊の生息地で、鐘を鳴らす目的は、熊に人間の入山を知らせるためだそうです。
(※入山の際には、念のため熊鈴や熊スプレーを持って行くと安心です)
 
ストックを片手に、木材チップが敷いてある登山道を登ります。毎年美深町の皆さんが、山開きの前にチップをまいてくれているとのこと。おかげで、足への負荷が少なく山登りを楽しめますが、急な斜面が多いので、ある程度の登山装備は必要です。
 
 
 
 
登山道を登ること30分。広葉樹の森を抜けると、視界が開け、松山湿原に到着です!
周囲をアカエゾマツに囲まれ、外界から隔離されたような空間は、「天空の庭」ともいうべき神秘的な雰囲気。
取材に訪れた日(2014年9月)はあいにくの天気でしたが、静かに降る雨が、湿原の神秘性をより際立たせていました。湿原に広がる赤茶の草原の絨毯と、低木のアカエゾマツの緑との対比もとても美しいです。
もちろん、晴れた日の松山湿原もきれいですよ。
 
 
 
 
 
 

特殊な形状のアカエゾマツ

松山湿原の特徴といえば、強風と積雪の影響で矮小(わいしょう)し、オブジェのような独特の形をしたアカエゾマツ。幹が1cm大きくなるのに約20年かかり、樹齢は200年以上にもなるそうです。
厳しい環境の中、数百年もこの地に根を張るたくましさ、適応力の高さに感服です。
 
 
 
 
湿原内には、「えぞ松沼」、「つつじ沼」、「はいまつ沼」の3つの池塘(ちとう)があり、木道はこれらを囲むように整備されています。池塘とは湿原の中にできる池沼のこと。深さは数メートルにもなるそうです。
 
 
 
 

湿原で見られる高山・湿性の植物

散策の楽しみのひとつは、初夏から秋にかけて湿原を彩る花々。ここでは、松山湿原で見られる主な植物を紹介します。
 
 
 
 
 
 
 
 

湿原散策のあとは天竜沼へ

松山湿原のある山を降りたら、麓にある「天竜沼」を訪れることをオススメします。針広混交林に囲まれ、ひっそりとした佇まいが素敵な場所です。
 
 
 
 
特殊な植生を持つ松山湿原は、北海道自然環境保全地域であり、「日本の重要湿地500」にも指定されています。
美深町観光協会では、湿原トレッキングが楽しめる予約制のガイドツアーも実施されていますので、ぜひ足を運んでみてはいかがでしょうか。
数千年かけて形成された湿原の独特な雰囲気は、とても魅惑的です。
 
 

関連リンク

美深町観光協会
 
 

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