第5回「世界料理学会 in HAKODATE」レポート!

 
 
今回も国内外からスーパーシェフが集まり、さまざまな発表を行う「第5回世界料理学会 in HAKODATE」が4月20日~21日に開催されました。そのダイジェストをお届けします!
 
 

料理の学会?それも函館で?

“学会”と聞くと、専門的で難しい場と捉えがちですが、この「世界料理学会 in HAKODATE」は、そうではありません。基本的には「料理人による、料理人のための学会」ですが、会場には食べることに関心のある函館市民、札幌からの参加者も多く、とてもオープンな雰囲気。料理に携わるプロはもちろん、そうではない人にも響く話が多く、“食”は職種や国籍、世代を問わない共通言語なのだと、改めて思います。
 
 
 
 
そもそも“料理学会”とは何でしょう。「世界一の美食の街」として有名なスペイン・バスク地方の小都市サンセバスチャンで始まった「最高美食会議(LMG)」がヒントとなり生まれ、現在では世界各国で行われています。
 
 
 
 
この「最高美食会議」は、サンセバスチャンの料理人が集まり、勉強会を開き、技術と知識を教え合うという場。そうすることで、街全体の料理のレベルが上がり、人口当たりでのミシェランの星付きレストランが最も多い街となりました。
 
若かりし日をサンセバスチャンで過ごした、函館のスペイン料理店「レストラン バスク」の深谷宏治オーナーシェフを中心に、「最高美食会議」の精神を地元・函館から発信しようと、2009年に第1回「世界料理学会 in HAKODATE」を開催。世界中から料理人や食品研究者などが集まり、自身の料理法や料理哲学、新しい知見などを発表し、共有する場となりました。
 
 
 
 
その後、1年半ごとに開催し、今年で第5回を迎えました。4月20日~21日に行われた学会の模様をリポートします。
 
 

1日目は大ホールでのプレゼンテーション

1日目の会場は、約840名を収容する「函館市芸術ホール」で開催。今回の発表者は両日併せて総勢42名。函館、札幌、国内、海外の料理人、生産者、ワイン醸造家、鮮魚店店主、料理専門誌編集者など多彩な顔ぶれ。発表者全員が登壇し、「エイエイオー!」のかけ声でスタートするのが、この学会の恒例です。
 
「料理は最大のコミュニケーション」と語る、食のエッセイストの玉村豊男さん。現在は長野県のワイナリーオーナーでもあり、農園やワイナリーを経営するまでの経緯を発表。株価や景気に影響されることなく、土から食べもの飲みものをつくり、六次化、第三次産業へとつなげていきながら“地域経済”をまわしていく、「農をベースにしたライフスタイル」を提案。
 
 
 
 
北海道シェフたちによるトークセッション。ミシュランガイド北海道三ツ星の「レストランモリエール」中道博シェフ、同じく一ツ星の「レストラン ミヤヴィ」横須賀雅明シェフ、北海道の食材の新たな魅力を伝える「バルコ札幌」の塚田宏幸シェフが登壇。年齢やジャンルの異なる料理人同士のセッションは興味深いものがあります。
「うちはオーブンが1個しかない。不便さの中でどうするかといえば、深掘りしかない。料理人それぞれがどう発想するか、どう考えるか。(そこに気づけば)財産はその辺にいっぱいある」と語った中道シェフの話が印象的でした。
 
 
 
 
スクリーンを使っての発表もあります。東京「日本料理 龍吟」のシェフ、山本征治さんの美しく遊び心のある動画を使ったプレゼンテーションは、この学会の名物的存在。今年のテーマは「ふぐ」。ふぐ食の歴史から龍吟独自の捌き方、調理過程、料理紹介までを紹介し、聴講者を魅了しました。
 
本来、自分たちの仕事を開示することにはためらいがあると思いますが、「料理を私物化するのではなく、みんなで分かち合う。これが日本料理のルールだと思っている。料理を通じて、日本の豊かさを感じてもらうことの方が大切」と話し、会場から大きな拍手が送られました。
 
 
 
 
このほか一世を風靡したスペインのレストラン「エル・ブジ」でシェフを務めたオリオール・カストロ・フォルンさんは、初来日した時に知ったオブラートが、その後のエル・ブジの料理に大きな役割を果たした逸話やその料理写真などを披露しました。
 
また、初日の夜には発表者同士、あるいは発表者と聴講者が交流を深めるパーティーを開催。函館近郊など北海道産と青森県産の食材を使った料理も好評でした。
 
 
 
 
 
 

2日目はよりテーマを絞った発表を

2日目のエクスカーションとして、希望者向けの水産物卸売市場の見学ツアーも実施。早朝にも関わらず、多くの参加者が競りの様子を見学しました。
 

 
 
2日目は会場を「函館国際ホテル」に移し、3つの会場でプレゼンテーションが行われました。メイン会場では、山形県「アル・ケッチァーノ」奥田政行シェフ、石川県「日本料理 銭屋」の高木慎一郎シェフ、青森県「レストラン山崎」の山崎隆シェフによる、「発酵」をテーマにしたトークセッション。
 
 
 
 
ご当地の発酵食品として、山形の「鮭びたし」、石川の「かぶらずし」や「ふぐの卵巣の糠漬け」、青森の「りんごの漬物」などが紹介されました。保存の知恵から生まれた発酵という食文化ですが、塩分の問題やライフスタイルの変化から、家庭ではつくられなくなっています。そんな伝統的な発酵食品を、現代の料理の中で生かす新たな表現の事例も紹介。時代の使命で食は変化するという話に展開しました。
 

 
 
この日1番の人気となったのは、こちらのトークセッション。東京「カンテサンス」の岸田周三シェフ、「日本料理 龍吟」山本シェフ、そして飛び入り参加したパリ「パッサージュ53」の佐藤伸一シェフ。今をときめくスターシェフの3ショットは、世界料理学会ならではの豪華さ。立ち見が出るほどの大盛況でした。
 
料理とは、理(ことわり)を料(はか)ること。レシピや工程を追うことは作業であって、料理ではない。完成のイメージがあり、自分の中の理りを料り、調理法を決め、組み立てていくこと。シェフはもちろん、若い料理人にも理を料る大切さを伝えるべき。仕事と作業は異なるもの。このメッセージはどの職種にも当てはまる言葉として、心に響きました。
 

 
 
別会場では「青函食材見本市」を開催。大きな流通の中ではどうしても隠れてしまう地域の小さな生産者、加工業者など約50団体が、自慢の食材を出品。水産加工品、食肉加工品、野菜にチーズ、ワインなど多彩な逸品が並び、試食も購入もできるとあって、終日大盛況。シェフたちが生産者に代わり、一般参加者にお気に入りの商品をすすめるなど、微笑ましい場面も見られました。
 

 
 
料理人たちの考えは多種多彩。厨房を飛び出て多くの料理人が学会に参加するのは、いろいろな話に耳を傾け、考える時間が、自分の料理に新たな価値を生み出す刺激になるから。また、一般の聴講者も、普段は聞くことができない料理人たちの仕事論に触れ、料理への興味がさらに広がったようでした。
この学会は1年半に1回のペースで催され、次回は2016年9月開催予定。ぜひ、ご期待ください!
 
 

関連リンク

世界料理学会 in HAKODATE公式サイト
 
 

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