情熱の仕事人。中国料理で北海道の魅力を伝える。季璃香オーナーシェフ「石井登」

 
 
中国料理一筋で30余年。「情熱の仕事人」今回の主人公は、北海道中華の名店「中国菜家 季璃香(きりか)」オーナーシェフの石井登さんです。「食を通じて北海道を元気に」と多方面で活躍。熱きハートの料理人です。
 
 

自分の夢にひたむきに

抜けるように青く広い空、雄大な十勝平野が広がる農業王国十勝。石井さんは小学3年から高校卒業までをその十勝、足寄(あしょろ)町で過ごしました。
 
「食べるものって人を幸せにする力があるんだな」。中学生の頃、初めて作ったチャーハンを弟たちが喜んでくれたときの気づきが、料理の道に進む原体験に。「料理人になる。一国一城の主になる」と夢を決め、高校卒業後に小樽のホテルに就職。配属先は中国料理部門でした。
 

 
 
「本当は洋食調理に入りたかった」という石井さん。思惑とは違うスタートに加え、調理場は想像以上の厳しい世界。「必ず夢を叶える」という信念で、1日1日を乗り越えていきました。
 
下積み3年目。洋食に空きがあると声がかかりますが、気持ちが揺らぐことはありませんでした。石井さんは、中国料理のおもしろさを感じ始めていたのです。
「中国料理の調理は、ひとつの大きな包丁や鍋で大体のことを賄う。使う道具がシンプルなぶん、技術が深く入り込んでくる分野なんだと気づいて、おもしろいなと。その頃はまだ末端にちょっとふれた程度でしたが、一生懸命に研鑽していけば、上にのぼっていけるのではないかと思っていました」。
 
 

料理人として深みをつくるホテル料理長時代

32歳で札幌の新規開業ホテルの中国料理長に就任。業界では異例の若さでの抜擢でした。自分の時間をすべて仕事に注いだというその努力は、料理に対するゲストからの高い評価を得ることにつながり、誰もが実力を認めるところとなっていきます。それでも「自分には経験年数が足りない」という意識、持ち前の探究意欲から、時間は技術を裏付ける知識を深めることにも費やされました。
 
「たとえば上海料理の魚の煮込みひとつをとっても、なぜそうした調味料の使い方、煮込み方をするのか。ルーツを知りたい」。
上海・四川・広東料理…。中国現地で得た情報を辿り、クラシックな料理を知る料理人を訪ね、やり方を見たり、実際に作らせてもらったりということを何年にもわたり続けたそうです。厨房に入るのを1度や2度断られても何のその。「いろんな手段を使ってもぐりこみましたよ」と石井さんは笑います。
 
その後、2008年の北海道洞爺湖サミットのシェフチームで活躍するなど、さらなるキャリアを重ねます。
 
 

「季璃香」開店。生きる力を育ててくれたふるさと十勝への思い

 
 
ふるさとを離れて30年。札幌中心部、複合施設の大通ビッセ内に2010年「自分の城」を構えました。「中国菜家 季璃香」です。
 
石井さんは陰陽五行の思想を料理に取り入れ、食べるもので体のバランスを整える薬膳の考えと、北海道の旬の食材を組み合わせ、メニューを創り出しています。
「僕たち日本人が感じるうま味というものを大事に、北海道の素材が持つ力を最大限に生かし、どう料理を表現していくか。そこが自分のテーマです」。
 

 
 
自身の味覚が育まれたのは、足寄で育ったことが大きいといいます。「畑でもいで食べたトマトだとかトウキビだとか、子供の頃の味の記憶が僕の原点です」。味覚だけではなく、見習い時代を乗り切れた強い心を持てたことも含め、「あの広大な十勝で生きられたから今の自分がある」と語ります。
十勝にはよく足を運び、季璃香で使う食材は十勝産が多いとか。「十勝のものというと、すぐ応援したくなっちゃうんですよ」。ふるさとへの思いは尽きることがないようです。
 
 

情熱の結集で北海道をもっと豊かに

石井さんは様々なプロジェクトにも携わり、季璃香からだけではなく、あらゆるシーンで道産食材の魅力を伝えています。
 
2013年には、オーナーシェフ有志で組織する「シェフズクラブ北海道」を立ち上げました。北海道にこだわるオーナーシェフが力を合わせ、生産者、料理人をはじめ食に関わる人、その点と点をつなぐ活動や、食の魅力を広く発信することなどに取り組んでいます。
 
「良質な食材を育てる生産者さん、料理を作る人、食べる人。食でみんなが幸せになる北海道にしていきたい」と石井さん。日々道産食材と向き合いその価値を知るからこそ、熱が入ります。
 

 
 
「北海道は半年近く雪に覆われます。たとえば雪を使った野菜の貯蔵などが行われていますが、北海道にはまだまだいろんなことができる可能性があると思うんです。だから僕は北海道にこだわっているんです」。
 
そんな石井さんが次に描く夢とは?
「仲間のシェフが使えるキッチンがあって、お客さまに召し上がっていただくちょっとしたスペースがある。北海道の食材を題材にした、そんな秘密基地のような場所をつくりたいですね」。
 
ふるさと十勝、そして北海道を愛する石井さんの挑戦は続きます。
 

 
 

関連リンク

シェフズクラブ北海道

 

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