大地を創る人。ポワローや根セロリ。十勝でフレンチの野菜に挑戦する竹中章さん

 
 
農業が盛んで、北海道の食糧基地と呼ばれる十勝(とかち)には、個性豊かな生産者がたくさんいます。今回紹介する音更(おとふけ)町、たけなかファーム4代目の竹中章さんも、そのひとり。小麦やビートの生産という大規模な農業をする傍ら、フレンチレストランに販売するための西洋野菜を育てています。
 
 

ポワロー栽培の契機は、料理人からの依頼

4月の音更(おとふけ)町は朝晩の冷え込みが厳しく、畑にはまだ緑がほとんどみられません。そんななか、竹中章さんは、ビニールハウスにこもり、ポワローの苗まわりに生えた雑草を、ピンセットで抜き取る作業をしていました。
 
 
 
 
ポワローとは西洋ねぎのこと。フランス語の名称で、英語ではリーキと呼ばれています。そんなポワローと竹中さんとの出合いは、いまから8年前。帯広のフランス料理店のシェフから、「フレンチには必須の食材」だからと、生産を頼まれたのだといいます。
 
 
 
 
アメリカの豊かな農業に憧れつつも、日本では同じようにできないことはわかっていました。では自分は今後、どういうスタンスで農業を続けていこうか。そんな風に考えていた矢先のことです。「頼まれてつくるのは経済的に安定するし、シェフとの会話は刺激になるし、新しい世界がひらけるかも知れない」。そんな気持ちでシェフの申し出に応えることに。とはいえ、日本ではほとんどつくられていない野菜です。まずは「いい種を探すところから」のスタート。最初にできたポワローは、「まったく、おいしくありませんでした」と笑います。
 
 

ポワローに惚れたから、がむしゃらに

どうせなら「輸入品に負けない味」を目指そう。祖父や父と一緒に小麦、ビートなど従来の畑は続けつつ、ポワローづくりにも熱が入ります。生産に必要な機械は、あるものを自分で改良しました。種を植えるペーパーポットはビート用を使うなど、独自のやり方も開発。そこまでするのは「ポワローに惚れた」から。他の野菜ではありえない甘みや旨みのとりことなり、「一生つきあいたいんです」。
 
 
 
 
根セロリやエシャロット、フェンネルなど、他のフレンチに必要な野菜にも挑戦しました。販売先は関東や関西のレストランが中心。FAX営業をするなどして、販路を広げていきました。1回につき数キロ単位で販売するといい、細かな注文にも対応しています。手間がかかって大変そうですが、竹中さんは「そこが狙い目。普通だと、こんなこと個人でやってられるかってなりますよね(笑)。それをこなしていくことが、信頼に繫がるんです」。
こなすコツはとたずねると、「ただ、がむしゃらに(笑)」。フレンチレストランの便利屋になりたいのだと語ります。
 
 

消費者が喜ぶものをつくりたい

一方で、食育にも取り組んでいます。音更町は小麦の生産量が日本一のまち。それにちなみ、同級生である帯広のパンメーカーの社長とタッグを組み、「麦感祭」というイベントを企画。8月の小麦の収穫直後に畑で行い、これまでの4回は大盛況。とれたての小麦を使ったグルメや音楽ライブなど盛りだくさんの内容です。
また、都会の高校の修学旅行生の受け入れもしています。農作業を体験する1泊プログラムでは、「野菜がおいしいとか、想像していたより喜んでもらえるんですよ。こうした活動を通して、多くの人に食に関する興味を高めてもらえたらいいなと思っています」。
 
 
 
 
幼い頃から、その背中をかっこいいと感じていたという竹中さんの祖父の口癖は、「農家は毎年1年生」。農業の現場は、人知を超えた自然の中ゆえ、自力におごることなく、謙虚な気持ちで取り組みなさいということだそうです。
それは、消費者に対しても同じ。ポワロー栽培を通して竹中さんが辿り着いたスタンスは、消費者が欲しいものをつくること。「自分の満足は得られても、他者の満足を得るのは、簡単なことではない」。そう語りつつも、野菜の数を増やしたり、加工品をつくったり、多くの人が喜んでくれることに、謙虚に取り組んでいくのが竹中流です。
 
 
 
 

「大地を創る人」とは

さまざまなおいしい食を生み出す北海道を「大地」と表現。農業や漁業、酪農業を通し、「新しい北海道を創りたい」「北海道を支えたい」「未来の北海道をデザインしたい」。そんな思いを胸に抱く北海道の生産者を、「大地を創る人」としてご紹介します。
 
 

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