2015年04月01日 | すすきのあき子

石狩湾に幻影?「高島おばけ」

石狩湾に発生した蜃気楼「高島おばけ」の様子
 
 
花と緑が一斉に芽吹くのが北海道の春。海辺で感じる春もあります。蜃気楼は北陸の富山湾などで有名ですが、石狩湾では地元で「高島おばけ」と呼ぶ現象が、希に見られます!小樽市総合博物館の大鐘卓哉(おおがねたくや)さんに聞きました。
 
 

蜃気楼って何、どこで見えるの?

蜃気楼(しんきろう)は、海の上下で空気の暖まり方が異なる層ができることによって起きる光の屈折現象。小樽市では例年4月から7月、希に8月までの5ヶ月間におよそ10回発生します。現れる時間帯や予兆がない自然現象のため、発見は運次第。これまでに高島、朝里、銭函などから蜃気楼が観察されています。
 
 
石狩湾に発生した蜃気楼「高島おばけ」の観測ポイントをと対象ポイントを示した地図
▲石狩湾周辺の蜃気楼観測ポイントと対象ポイント
 
 
肉眼でわかる顕著なものは年に1回くらいという希な蜃気楼、高島おばけ。江戸後期の探検家松浦武四郎は1846(弘化3)年、小樽高島沖の船上で遭遇。当地の呼称「高島おばけ」を探検記に記しています。武四郎は沖で見つけましたが、私達はうららかな日に浜辺に出かけると見られる、かも知れません。
 
 
石狩湾に発生する蜃気楼「高島おばけ」の観測に適した海岸
▲小樽市の朝里海岸はJR朝里駅から徒歩で行けます
 
 

小樽の蜃気楼、教えて下さい!

「蜃気楼観察スポットの中でもお奨めは、JR駅からも近い朝里海岸。北西の高島岬から北東の雄冬(おふゆ)岬まで見えることもあるビューポイントです」と話すのは、高島おばけを18年もの間追う学芸員、小樽市総合博物館の大鐘卓哉(おおがねたくや)さん。
 
 
石狩湾に発生した蜃気楼「高島おばけ」の様子
▲上が銭函で観察した高島岬の蜃気楼。下が普段の様子(2014年4月30日、撮影:大鐘卓哉氏)
 
 
「大学生の時から蜃気楼には興味がありました。1994(平成6)年に学芸員として、当時の科学館に就職。私が小樽の蜃気楼を知ったのは1997(平成9)年で、後に個人で研究を始め、蜃気楼研究を博物館の事業の1つに位置づけた2007年くらいから、本格的に調査・研究しています」(大鐘さん談)。
 
 
蜃気楼をモチーフとした染付皿
▲江戸時代末の染付皿。昔の人も蜃気楼に魅せられ美術品のモチーフとしました
 
 
例えばこの色絵の皿も、蜃気楼に関連するそうです。貝がモワモワとしたものをはき出しています。「蜃気楼の出現は、昔から人びとの話題となりました。蜃気楼は想像上の妖怪、大はまぐりや蛟(みずち)が吐く“妖気”により高い建物、楼台が現れ、よいことが起きる兆しと考えられました」(大鐘さん談)。
 
 
石狩湾に発生した蜃気楼「高島おばけ」の様子
▲高島で観察した銭函の小樽ドリームビーチ周辺の蜃気楼。最も下段が通常の様子で、刻々と見え方が変化することがわかります(2014年6月1日、撮影:大鐘卓哉氏)
 
 
小樽の海では晴天時、対岸に石狩湾新港にあるLNG(液化天然ガス)基地が見え、球体や円筒のタンクが並びます。普段なら球形や円筒形と見分けがつきますが、蜃気楼の現象により、それらを見ると「高さが一様のビル群が壁のように見えることもあります」とのこと。
 
 

実験してみよう!

蜃気楼が生じる原理を博物館の実験室で再現していただきました。少し水を入れた水槽、濃い食塩水、おけ、じょうご、カップやガラス棒を使います。
 
 
蜃気楼が発生する仕組みを実験する大鐘さん
▲水道水と塩水の密度を説明する大鐘さん
 
 
蜃気楼が発生する仕組みを実験する様子
▲高さを違えた同じ絵が2枚。見る高さによって同じ絵でも違って見えます
 
 
「少し水を入れた水槽に、食塩水を静かに注ぐと密度の高い食塩水は下部にたまります。この密度の異なる境目あたりで、背景の絵が変化して見えることがわかりますか?」。大鐘さんがガラス棒で水を軽く混ぜると、向こうの景色がゆらぎます。実際には、風の流れによるゆらぎで、対岸の景色の見え方が刻々と変化し、さらに空気の寒暖の層の高さによって、対岸では風景の見え方が異なるとのこと。なんとも不思議な現象です。
 
 
蜃気楼が発生する仕組みを、水の密度の違いと光の屈折で説明する様子
▲レーザーを当てると密度の異なる境目で、光が曲がった!
 
 
蜃気楼が発生する仕組み知るために光の屈折を使って説明する様子
▲空気と水の境目でもレーザー光が屈折!中学の理科で学んだ、密度の異なる境目で光が屈折する現象です
 
 
サイエンスで原理を理解する術がなかった昔は、まさにおばけの仕業。海上で空気の寒暖の層があると、実際の光の経路と見かけの光の経路が異なるという“原因”により蜃気楼が生じ、“結果”としての見え方が変化します。
「光は真っ直ぐ届く」という人びとの思い込みが、無意識に結果に作用する。実際と見かけのギャップが、高島おばけの正体だったようです。
 
 
蜃気楼が発生する仕組みを示した概念図
▲反転したり上に伸びたり、見え方は様々
 
 
海辺に立つ人に、蜃気楼を挟んで対岸がどう見えているかを、図で示すとこうなります。さらに知りたい人は博物館へ!
 
 

北海道を蜃気楼王国に!

広い北海道では小樽のほか、各地で蜃気楼が観測されています。内浦湾(噴火湾)、苫小牧沖、斜里沿岸、網走沿岸、根室湾、野付湾などで、道内の仲間12名が蜃気楼の情報を共有しているとのこと。大鐘さんの野望は、道内の蜃気楼をアピールし、北海道を「蜃気楼王国」と呼ばれるくらい代表的な観察地とすること。仲間と共に実現を夢見ています。
 
 
北海道道内で観察された蜃気楼
▲流氷の季節に出た、斜里沖の冬の蜃気楼(2015年2月11日撮影:加藤宝積氏)
 
 
冬に起きる放射冷却現象。春や夏だけでなく冬にも蜃気楼は現れ、本州よりも北海道のほうが多く出現しているのです!海の対岸に建物や山などの景色があり、朝方に気温がとても低くなる、風の弱い晴れた日が狙い目です。
 
 
海道道内で観察された蜃気楼
▲流氷が残る斜里沖の春の蜃気楼(2014年4月29日撮影:佐藤トモ子氏)
 
 
最後に珍しい夕日を。杯形に見えたのも高島おばけによるものです。春から夏、石狩湾で観察するなら気温が高い日、南よりの穏やかな風が、陸から湾に吹く海辺で、気長に過ごすと蜃気楼が見えるかもしれません!条件を多く満たす日、石狩湾に出かけてみてはいかがでしょう。
 
 
蜃気楼「高島おばけ」によって夕日が杯形に見えた様子
 
 

小樽市総合博物館・本館(鉄道と科学を展示) 交通アクセス

(1)JR札幌駅から列車とバスで
JR札幌駅から快速エアポート(所要時間30分強)か普通列車(約50分)にてJR小樽駅で下車。駅前バスターミナルにて「おたる水族館(高島3丁目経由)」10番「高島・祝津線」(海まわり:毎時1本運行)に乗車。「総合博物館」バス停にて下車、乗車時間約10分。
 
※「おたる水族館」ゆき11番「祝津線」(山まわり)は、「総合博物館」バス停を通らないのでご注意ください。
 
※JR小樽駅近くの樽石ビル前のバス停「小樽駅前」から「高島3丁目」ゆき2番に乗車しても「総合博物館」バス停を通ります(毎時3本運行)。
 
(2)自動車で
札幌方面から札樽自動車道「小樽」IC下車。国道5号「稲穂5丁目」交差点を右折して道道454号線を祝津方面に。ICから4.5km、約10分。無料駐車場完備。
 

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