大地を創る人。土から手がける有機栽培玉ねぎ生産者、中村好伸さん

札幌から北へ車で1時間。豊かな田園風景が広がる農業の町、新篠津(しんしのつ)村で、有機、特別栽培の玉ねぎを育んでいる男性がいます。元サラリーマンで、農業人への転職は38歳の時。「情熱と覚悟」で道をひらいてきた、新篠津つちから農場代表取締役、中村好伸さんを紹介します。
 
 
 
 

あたりまえにおいしい玉ねぎは、土から

有機栽培(※)と特別栽培(※)で玉ねぎをつくっている中村好伸さんは、脱サラ組の農業人です。札幌出身で小樽の大学を卒業後、大手メーカーの経理部やラーメンの製造販売会社を経て、自然愛好家に弟子入り。そこでの農的な暮らしが肌に合い、農家をやろうと決意。今の会社の前身である農業法人に転職しました。
「38歳の時ですね。技術もお金もなかったので、まずは働きながら学べる農業法人への就職を希望したんです」と中村さん。また、後継者を探している農家を選んだのも戦略。「ある程度の規模の畑を持つなら、新規では難しい。継承だからこそ、いまこうして、18haもの広大な畑で農業ができています」。
 
※有機栽培…使用が禁止された化学肥料や化学合成農薬を3年以上使っていない畑で、禁止資材を使わずに生産すること。商品には、有機JASマークがついている。
 
※特別栽培…化学肥料や化学合成農薬を、慣行農法の半分以下に減らして栽培すること。
 
 
 
 
農場では毎年2月中旬からハウスでの種まきが始まり、ゴールデンウーク頃までに定植。自家製ボカシ肥料(※)を与えて成長を補助しつつ、夏の収穫までは手作業での草取りが続きます。

※自家製ボカシ肥料…米ぬかや魚かすを主原料に作る、100%有機質の肥料。
 
 
 
 
そして収穫後は、来年に向けた土づくりが待っています。中村さんにとって、これこそが最も大事にしている仕事。「あたりまえにおいしい玉ねぎ」を育むために、自家製堆肥(※)と緑肥で土に栄養を与え、土中の微生物を増やし、地力の増強につとめます。

※自家製堆肥…近隣の農家からわけてもらった稲わらや鶏糞を混ぜた堆肥。
 

 
 
「以前に行った調査では、うちの畑の土1g中の微生物の量が、同エリアの他の畑より3~4倍という結果が出たんですよ」。
社名の「つちから」はダブルミーニング。〝土の力〟と〝土から〟のふたつの意味を持たせており、ここに中村さんの農業への思いが込められています。
 
 

〝青い鳥〟は今ここにしかいない

冬に仕事がないのが北海道の大半の農家の現状ですが、ここでは玉ねぎの出荷など諸々の作業があるため、4名の社員は1年を通して働いています。中村さんがいつも心がけているのは、「相手を満足させること」。それはお客様に対してだけでなく、従業員へも同じ。そんな思いで待遇も整えているのだといいます。
 

 
 
そんな中村さんに、求める人材を聞いてみると、こんな回答がかえってきました。
「熱いハートと実務能力を兼ね備えている人がいいですね。自分で考えることができて、気働きのある人。それから畑仕事と言えども、社会性も必要です。もし、スローライフに憧れて就農というなら、少しずつその環境に近づけるよう実力をつけていくこと。〝青い鳥〟は今いる場所にしかいないので、逃げないで頑張って欲しいですね」。
 
 

夢を叶えるためにはやるしかなかった

中村さんの農業人としての道のりも、最初から順調だったわけではありません。先見性のある先代は、早くから有機、特別栽培に取り組み、独自で販売ルートを築いた人物。「そんなすごい人の下にいましたから、僕の成長が追いつかず、6~7年は草取りと配達だけという毎日でした」。
 

 
 
普通ですと、めげてしまいそうな状況ですが、中村さんは違いました。
「曲がりなりにもここまでやってこられたのは、情熱と覚悟を持っていたからかな。たとえ〝使えない〟と言われても、今さら他の世界にはいけない。夢を叶えるためにはやるしかなかった。それから家族の存在も大きかったですね。家族のために頑張れました」。
現在の中村さんの会社の売上げは、協力農場分も入れて先代の頃の6倍。実績が認められ、今年(2015年)4月からは地域の役員を引き受けることが決まっています。
 
 
 
 
毎日楽しいことばかりではありませんが、自分で判断して責任を取れることや、大好きな土の近くにいられるのは幸せなこと。「心に違和感がない」と語ります。
そんなお話のあとにいただいた中村さんの玉ねぎは、シャキシャキと歯ごたえがあって、辛さの向こうに、ほどよい甘み。
まさに中村さんのお人柄のようでした。
 

「大地を創る人」とは

さまざまなおいしい食を生み出す北海道を「大地」と表現。農業や漁業、酪農業を通し、「新しい北海道を創りたい」「北海道を支えたい」「未来の北海道をデザインしたい」。そんな思いを胸に抱く北海道の生産者を、「大地を創る人」としてご紹介します。