北海道で雪はねのお手伝い。多雪集落を訪れる週末「雪はねボランティアツアー2015」

 
 
2015年2月から3月の計5回、岩見沢市、倶知安(くっちゃん)町、上富良野町の3方面へ出かけ、雪深い地区の除雪を手伝う「雪はねボランティアツアー」が開催されます。雪はねをきっかけに、旅行者や都市住民と地域との交流が育まれた、第3回「岩見沢美流渡(みると)日帰りツアー」をレポートしました!
 
2015年2月7日(土)8時半、大通の中央バスセンターからバス1台30名が出発。目的地の岩見沢市は、札幌の北東約40kmにある人口約86,000人のまち。近年は札幌の通勤圏ですが、かつては近隣の空知一帯の炭鉱から採掘した石炭を輸送するターミナルとして、岩見沢は重要な役割を担いました。炭鉱時代の名残の風景が、朝日、美流渡、万字(まんじ)の各地区に点在しています。
 
 
 
 
バスが高速道に入ったところでマイクが回り、各人が短いスピーチをしました。「マンションでは雪はねする機会がなく、今日は楽しみに来ました」という人や、「東京から初めて参加しました」と元気に挨拶する人など、ワクワク感が伝わってきます。主な参加者は札幌市内や恵庭など、近郊の都市がほとんど。1時間強で美流渡に到着です。
 
 
 
 
最初に6つの班に参加者を分け、各班にリーダーが付きました。除雪する家の状況と注意事項を話したのち、現場に向かいます。この日は無風の好天。ちなみに強風だと中止になりますが、雪が降っても無論雪はねは行うとのこと。
 
 

いざ、雪はねに出発!

北海道LikersはC班の7名に同行し、Sさん宅へ向かいました。
 
 
 
 
 
 
Sさんが住むのは築60年を超えるいわゆる炭鉱住宅で、4軒長屋の平屋。住む人がいなくなった写真手前の家は、雪の重みで屋根が壊れています。多雪集落の美流渡では廃屋の傷みは加速度的に進みます。住民も体が動く限り雪はねをしますが、足腰を悪くして以来、Sさん宅は除雪が困難になっていました。
 
 
 
 
夕張市や三笠市に接する岩見沢市もかつては石炭が採れ、北炭美流渡炭坑が稼働していました。「私は1955(昭和30)年に美流渡に来ましたが、この沢だけで17,000人がいました。炭鉱は24時間稼働で1,000人もの炭鉱マンが働き、昼も夜もない賑わいでした」(町内会の役員Kさん談)。
美流渡も1968(昭和43)年に炭鉱が閉山し、仕事を求めて多くの人がまちを離れました。残った人も高齢化する中、2013年と14年には岩見沢市は雪害に見舞われ、救助要請を受けて駆けつけた自衛隊員の除雪が心強かったことも、鮮明に語ってくれました。
 
 
 
 
前年の美流渡は、屋根雪と軒下の雪がつながった状態だったそうです。C班のリーダーにも話を聞きました。「除雪はチームで1つの目標に向かって知恵と体を使う、優れたチームビルディングの手法でもあり、奥が深いんですよ」と、スコップを止めて話す土本義和さん。
 
 
 
 
「去年の美流渡は雪が多く、私たちが雪はねしたところ『1週間ぶりに部屋にお日様が入った!』と喜んでくれるおばあさんの声が聞けて、役に立てて嬉しかったです」(土本さん談)。
1時間強の作業で、軒下の雪山がすっかり低くなりました!
 
 
 
 
この家に住むSさんは、出来映えに大感激。「あー!たいした(たいそう)綺麗にしてもらって」と、春まで屋根雪を心配することがなくなったことに安堵の笑顔を浮かべていました。作業を終えたメンバーは、Sさんや区長を交えて記念撮影しました。
 
 

表面化しにくい、除雪中の事故

各班がセンターに戻って午前の除雪作業を総括し、地区の代表がお礼を述べました。昼食を挟み、新潟県で越後雪かき道場を主宰する上村靖司さんが、午後の部を担当。予定では除雪作業の続きでしたが、少雪のため「命綱講習会」として座学と安全帯の装着と、ロープワークを行いました。これは除雪作業中に屋根からの転落を防ぐためのものです。
 
 
 
 
上村さんの本業は大学で工学を教える教授。楽しく役立つ話に、皆さん熱心に耳を傾けていました。「この数、何を意味すると思いますか?」とスクリーンを示す上村さん。しばらく考えた後に種明かしすると、会場から驚きの声が上がりました。
 
 
 
 
「152、これは平成18年豪雪といわれた2006年の除雪作業で、全国で亡くなった人の数です。交通事故は社会問題と認識される一方、春先に統計が出る除雪の死亡者数が示す深刻さは実感されにくいのです」(上村さん談)。
 
 
 
 
お話の後に、上村さんが奨める屋根雪おろしの手順を、安全帯とロープを使って実演しました。高所ではアンカーとなる固定物に、金属リングのカラビナを使いロープでつなぎ、軒先から出ない長さに調整します。こうすれば万一の転落に備えた除雪作業ができます。
 
 
 
 
参加者は外に移動し、適切な固定物がない場合に簡易的なアンカーを設置する方法を体験。各班で歓声が上がっていました。
 
 
 
 
一連の日程を終えた参加者は、晴れやかな表情で美流渡地区の皆さんと共に記念撮影してお別れし、隣の毛陽(もうよう)地区の温泉で汗を流しました。
 
 

お手伝いを入口に地域をひらく

地域側と丁寧に調整し、このツアーをコーディネートしたのは、札幌のシンクタンク一般社団法人北海道開発技術センターの小西信義さん。美流渡の集落で雪かきボランティアツアーを実施するのは今年で3年目、通算500人を雪はねに送り込み、人びとと地域が交流する機会をつくっています。
 
 
 
 
「この冬で3年ですが、回を追うごとに美流渡の皆さんの表情が明るくなり、町内会の“ウェルカム感”が格段に高まっています。最初は地区の人が参加者と交流する、その距離感のとりかたに戸惑いがあったように感じました。最近は、外から来る人との程よい距離感をつかんだようで、地域が“お出迎え上手”になってきたと感じます」(小西さん談)。
参加者同士も「今年もお会いしましたね!」と声を掛け合っていました。
 
 

北海道のいまを体験!

多雪集落の美流渡を体験した一行は、帰路も感想を話し合いました。心地よい疲労感で定刻19時にツアーは終了。「お手伝いに行って逆に元気をもらいました!」と話す人びとが印象的でした。
 
 
 
 
今季は3月8日(日)の倶知安ツアーで終了しますが、雪と人のあたたかな交流を体験してみたい方、ぜひ「雪はねボランティアツアー2016」にご期待ください!