小樽祝津の"にしん大尽"が見た夢の館。にしん御殿 小樽貴賓館(旧青山別邸)

 
 
小樽は石造り倉庫や運河の他にも、大人を満足させる本物の魅力があります。2010(平成22)年、国の有形文化財に登録された旧青山別邸がある、にしん御殿 小樽貴賓館。漁業で富を築き「にしん大尽(だいじん)」と呼ばれた当主の想いをいまに伝え、館を守る人を訪ねました。
 
 

にしんの御三家を生んだ祝津

にしんにまつわる見どころや建物が密に残るまち、小樽市祝津(しゅくつ)。JR小樽駅から北東方向に約6kmの漁村集落には、かつて「御三家」と呼ばれた青山・白鳥・茨木家が、にしんで財を成しました。
 
 
 
 
海沿いの道道から坂道を上った高台に、黒塀に囲まれた瓦葺きの屋敷が現れます。ここが旧青山別邸。屋敷と付帯する建物、食事が可能な和風の鉄筋建造物を総称して「小樽貴賓館」と呼ばれています。
 
 
 
 
 
 
青山家の子孫はこの地を離れたため、現在の所有者とは縁戚関係はありません。26年前の1988(平成63)年、この建物と出会ったひとりの男性が私財を投じて建物を取得。別邸を保存しながら公開し、飲食を提供する株式会社貴賓館を設立したのです。
貴賓館オーナーの佐藤美智夫さんにお話を聞きました。
 
 

内部を拝見

札幌で32年間、市会議員を務め終え、別邸を守り公開することがライフワークとなった佐藤さんと、ガイドさんに内部を案内して頂きました。別邸では本来、内部の写真撮影はNGですが、今回は特別に許可をもらって撮影しています。
2月半ばの別邸は、足の裏から寒さが伝わってきました。冬期は受付で、重ね履き用の靴下を貸し出しています。暖房が過ぎると乾燥して、別邸の木にヒビが入ることもあるからだそうです。
 
 
 
 
囲炉裏がある茶の間からスタートする別邸は、合わせて洋間1室と17の和室があります。ガイドが案内する順路で楽しむ他に、好きな意匠の部屋を探すなど、楽しみ方は多様。「団体のお客様でガイドを希望する際は、前日までにご予約が必要です」(ガイドさん談)。
 
 
 
 
1階は襖(ふすま)を開けると百畳敷の大座敷に。にしんが盛業だった頃は賓客を招き、きっと豪勢な宴が開かれたことでしょう。
 
 
 
 
12.6mの1本物のひのきの長押など、見どころを巡ります。「座敷から座敷に移る間にも、目の肥えたかたは調度やしつらえに立ち止まり、感激なさることが多いです」とのこと。京都にもこれだけの日本建築はなかなかないと、賞賛されることもあるそうです。
 
 
 
 
この階段はたも材で、1段つくるのに1週間かかったうえ、登り始めと2階に近い上部では、段の高さを少し違えているとのこと。裾を引く着物姿で登りやすいよう配慮されていました。廊下と部屋の間にある書院の欄間(らんま)も見事な細工です。
 
 
 
 

別邸を保存しながら公開すること

内部を拝見したあと、牡丹の間でお話を聞きました。
別邸は昭和の終わりに青山家から他者の手に渡り、本州に移築されて調度も散逸しかねない危機にありました。佐藤さんは運命的に別邸と出会い、青山家から購入した人を訪ね、譲ってくれるように説得。私財を投じて1988(昭和63)年、41歳で別邸を取得したそうです。
 
 
 
 
建物の保存と公開を決めた佐藤さんは、荒れた屋敷を家族や友人総出で磨き上げ、取得の翌年、別邸を夏のみ観光に開き、ほどなく通年公開としました。当時は議員だったため、別邸の運営会社は奥様を代表に。「私の誇りはこの会社から1度も報酬を得たことがないことです」とほほ笑みます。
 
 
 
 
「ここの冬は重たい雪が沢山降るため、破損する箇所が毎年多数発生します。修理には昔の材を使ったほうが長持ちするため、別邸が建った時代に近いものを探しています」と、建物を適切に維持する一幕を語って下さいました。
 
 

各地に残る旧青山家の美

旧青山別邸で内部を一巡すると「本邸は?」との質問がよくあるようです。青山家は郷里の山形県北部の遊佐町に、本邸が現存します。また札幌市厚別区の野幌町にも青山家の番屋を見ることができます。
 
 
 
 
にしん漁の雇人が親方と住んだ建物もかつて祝津にありましたが、野外博物館「北海道開拓の村」での移築保存が決定。元場(もとば)と呼ばれた番屋建築が1983(昭和58)年から2年をかけて、開拓の村に復元されました。さらにいまから16年前の、第50回記念さっぽろ雪まつりでは、旧青山別邸がメイン大雪像として製作され、多くの人の目を楽しませたそうです。
 
 
 
 
遊佐、厚別、祝津と人びとに愛される建物が大切に残されています。祝津では春、5月下旬の牡丹に始まり、芍薬、百合、紫陽花と庭園の花が次々と開花します。
青山家の当主達の想いと、その想いを継ぐ人に出会う1日。ぜひ旧青山別邸を訪れてはいかがでしょう。
 
 
 
 

交通アクセス

(1)JR札幌駅から列車とバスで
JR札幌駅から普通列車(所要時間約50分)か快速エアポート(同30分強)にてJR小樽駅で下車。同駅前のバスターミナルで路線バスに乗換え。「おたる水族館」ゆき11番「祝津線」(山まわり:毎時2本運行)か、10番「高島・祝津線」(海まわり:毎時1本運行)に乗車。「祝津3丁目」バス停にて下車、乗車時間約20分。同バス停から徒歩約5分、350m。
 
(2)自動車で
札幌方面から札樽自動車道「小樽」IC下車。国道5号「稲穂5丁目」交差点を右折し、道道454号線を祝津方面にトンネルを3本通過すると、左手に「小樽貴賓館」の看板あり。約8km、所要時間約15分。無料駐車場30台。
 
 

関連サイト

北海道開拓の村(旧青山家漁家住宅を移築・保存展示)
 
 

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