アナタの知らない「さっぽろ雪まつり」の舞台裏(1)大雪像の制作現場に迫る!?

今年も2月5日(木)~11日(祝)にかけて、「第66回さっぽろ雪まつり」が開催されます。中心となる「大通会場」では、1丁目~12丁目まで大小125基の雪氷像が立ち並びます。大雪像に至っては高さが10~15m。4~5階建てのビルに相当する高さです!
 
森岡孝友さんは、「札幌市大雪像制作団」の隊長。今年で37基目の大雪像を手がける大ベテランの62歳です。陸上自衛隊に在職中の10代から大雪像制作に関わり、仕事の都合で数年離れていた期間はありますが、人生の3分の2を雪まつりに捧げています。そんな森岡隊長にお話を伺いました。
 
 
 
 

作業1:搬入した雪を足で踏み踏み「土台づくり」

森岡隊長が指揮する大通5丁目会場の大雪像「雪の国のアリス」の制作現場を訪ねると、そこはどう見ても建設工事の真っ最中という状況!足場が組まれ、ヘルメットと命綱をつけた制作隊員が白い壁に向かって黙々と作業をしています。
 
 
 
 
「大雪像は、巨大な雪の塊から削り出してつくります。まず木枠を組み、中に雪を詰め入れて固めます。この会場は高さ10m×幅15mの大雪像なので、5tトラックで250台程度の雪量を使いますが、氷に近い硬度になるまで踏んで踏んで圧をかけ、しっかりした土台をつくります」。
 
えっ?!機械を使わずに1,250t分の雪を足で踏むんですか? 雪は空気を含んでいるので、パワーショベルで雪を積んではスコップで砕き、制作隊員が足で踏み固める工程を数え切れないほど繰り返すというのです。気の遠くなるような作業です。
 
 
 
 
「雪はきれいなものを使います。除雪した雪は使いません。道路の雪には融雪剤がまいてあるので、積んだ雪を融かしたり、染み出て層になってしまい、美しくないんです。採雪場は滝野すずらん丘陵公園など、郊外から運んできます」。
 
 

作業2:チェンソーやお手製スコップで「粗削り」

土台ができると、今度は「粗削り」の作業へ。雪像の40分の1のスケールで精密につくった模型からおこした設計図を基に、塗料スプレーでマーキング。そこを削っていきます。
 
 
 
 
「土台は相当硬いので、まずはチェンソーで切れ目を入れ、特製のスコップで削っていきます。普通のスコップだと歯が立たないので、先端をギザギザにカットしたものを使います」。
 
 
 
 
雪像制作の現場では、お手製の道具や本来の目的とは違う使われ方をしている道具が多く見られます。例えば、コンクリートを流す時に使う「生コンシューター」は、高所で削った雪を下に落とす時に活躍。農業用品として遮光、防風、防虫・鳥に使われる「寒冷紗(かんれいしゃ)」は、直射日光や降る雪から雪像を守る時に使用。
当然、雪像専用の道具が売られている訳ではないので、66年の長い歴史の中で受け継いできた知恵と工夫がいっぱいです。
 
 

作業3:美しさが増す「雪練り」と「化粧雪」

粗削りが終わった箇所から、「化粧雪」を貼り付ける作業に入ります。
 
「ファンデーションと一緒です。雪に水分を含ませ、こねては混ぜの作業“雪練り”をします。その日の気温や雪像のコンディションで、加える水の量を調整しながら雪練りをします。女性も化粧のりが良くなるよう、リキッドタイプか、パウダータイプか、肌の状態で選ぶファンデーションが違うでしょ(笑)。水加減で雪の色も変わってくるので、経験を要する作業です」。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
森岡隊長、メイクにお詳しいですね(笑)。10cmほど化粧雪を貼り付け、夜に気温が下がると表面がきれいに仕上がるのだそうです。
 
 

作業4:真っ白だから難しい細部の「彫刻」作業

作業も終盤戦。ノミやケレン棒などで彫刻を施す細部の仕上げに入っていきます。ところで、白一色の雪像づくり、彫刻作業はかなりテクニックが必要になるのではないでしょうか?
 
「プラスかマイナスか、つまり出すか凹ますかでしか表現できない世界なので、特に顔を彫る時は気を遣います。眉毛や目はもっとも難しいです。彫り方が浅いと、白飛び(真っ白になっている、そう見える状態)して陰影がなくなる。でも、彫り過ぎてもうまくいかない。なので、彫っては微調整をして…の繰り返しです。
以前、あるキャラクターの毛並を表現するのに、毛を何本彫るのか、その角度や深さをどうするのか、悩んだことがありました。一応、設計図はありますが、人間の目で見てどう映るのか。そこは各現場の経験とセンスが問われます」。
 
 
 
 

森岡隊長の雪像づくりへの想い

今もっとも気がかりなのは、暖気だといいます。
 
「気温が高いと作業がうまく進みません。雪は常に動いているんですよ。土台にしても、どんなに空気を抜いて踏み固めても、暖気でやわらかくなってしまうと、沈んだり、崩れる可能性も出てきます。補修すれば良い話ですが、会期が迫っているので、そこに時間や人員を割きたくない。今年もプラス気温が何日かあったので、まだ気は抜けませんね。布団に入ってもドキドキしっぱなし。過去には、あまりに心配で現場に泊まり込んだ年もありました」。
 
 
 
 
さらに、隊長はこんな話もしてくれました。
 
「毎年、雪まつりが終わると、『来年はもうやらない!』と思うんですよ。それでも、喉元すぎればってヤツで、また関わってしまう(笑)。やはり、完成した時の達成感は何ものにも代えがたいですからね。
それと、雪像は人間がつくるものだから、人との出会いも大きな魅力です。毎年来ているベテランもいれば、初めての人もいますが、チームワークが何より大切。高所での作業も多いし、信頼関係がないとうまくいかない。割り当てられた作業だけをやっていればいいのではなく、より美しく仕上げるために細やかな気遣いも必要だし、状況を先読みする判断力も求められる。話し合いの場も増える。一緒に過ごした隊員との短くても濃い時間が楽しくて、長くやっているのかもしれませんね」。
 
 
 
 
大通会場の雪像制作にかかわる延べ人数は、5,000人以上といわれています。受け継がれてきた高い技術に加え、たくさんの人の想いが集まっているからこそ、多くの人を魅了するのかもしれません。
1月7日に始まった雪像制作は、2月3日に完成します。極寒の中で作業を続けている森岡隊長、隊員のみなさん、あとひと息です。がんばってくださいね!
 
「アナタの知らない雪まつりの舞台裏(2)」では今年初の試み、この会場の大雪像を舞台に繰り広げられる人形劇オペラの舞台裏をご紹介します。お楽しみに。
 
 

第66回さっぽろ雪まつり

http://www.snowfes.com/
 
●開催日 / 2015年2月5日(木)~2月11日(水・祝)
●会場 /
・大通会場:大通公園西1丁目~西12丁目 ※ライトアップは22時まで
・つどーむ会場:札幌市スポーツ交流施設コミュニティドーム(札幌市東区栄町885-1)
 9時~17時 ※一部アトラクションは16時まで
・すすきの会場:地下鉄南北線「すすきの駅」上、南4条通から南6条通までの札幌駅前通
※ライトアップは23時(予定)まで、最終日は22時まで