厳冬の羅臼流氷・バードウォッチングクルーズ

 
 
知床が国立公園に指定されたのは1964(昭和39)年。今年2015(平成27)年は世界自然遺産の登録から10周年を迎えます。知床半島の陸域と広大な海域の東側にある、羅臼(らうす)町で人気急上昇中の流氷・バードウォッチング。その魅力について、知床羅臼町観光協会の池上美穂さんに聞きました。
 
 

流氷の海を舞う“天然記念物”オオワシ

 
 
「流氷と天然記念物のオオワシ、そして朝日を一緒に見られるのは世界でここだけ。時間とお金をかけてでも見る価値があることを、外国人のお客様に気づかされました!」と語るのは、知床羅臼町観光協会の事務局長、池上美穂さん。2011(平成23)年に羅臼町の観光協会の事務局長全国公募を新聞記事で知り、札幌から意を決して応募。その心意気と熱意が伝わったのか採用され羅臼に移り住んだ、いわば“よそ者”です。
 
 
 
 

羅臼の当たり前が希少な風景に!

 
 
“よそ者の目”を持つ池上さんが、地域の外から羅臼町に入って発見・感動した優れた素材の1つが、冬に飛来する天然記念物オオワシでした。知床半島をまわり羅臼に到達する流氷は、細かく砕けて隙間があるため、羅臼では長期の休漁がなく、流氷期も漁を行うことができます。ワシ達も魚を食べて越冬できるため、羅臼にやってくるのです。「昔から当たり前に見られてきたオオワシを、普通に受け入れている港の様子。これこそが、羅臼最大の冬の魅力だと思いました」(池上さん談)。
 
 
 
 
珍しがる池上さんの一方、漁師や町の人達にとってそれは普段の光景。「何がそんない珍しいのよ、昔っから当たり前に来てるぞ」と、観光の資源として全く着目されていませんでした。この光景、池上さんの気づきより以前に、コアなバードウォッチャーにとっては、天然記念物のオオワシほか大型鳥類が、高い密度で観察できるという点で、羅臼は知る人ぞ知るスポットだったのです。こうして、観光協会として「流氷・バードウォッチングクルーズ」を冬のコンテンツに育てる取り組みが始まりました。
 
 

伝わらない不安を、伝える楽しさへ

地元でほとんど着目されていなかった大型鳥類。その中で「流氷・バードウォッチングクルーズ」を町の冬期観光の目玉に育てていくのは、根気と勇気のいる挑戦でした。羅臼に外国人を迎えることには当初、言葉の不安や文化の違いから起こる問題などから、地元では消極的な意見も出ていました。しかし、観光船の各社が可能性を実感し意欲があったことが大きな原動力となり、まずはやってみようということに。地元では国内外からの旅行者の誘致と、羅臼での受入体制の整備を同時進行することにしました。
 
 
 
 
「現場では通訳がいない状態で、外国人ゲストと言葉のやりとりをした結果、相手にこちらが意図したこととは違う伝わりかたをしてしまうこともあります。外国人を受け入れるに当たっての、地元の方々の不安が少しでも取り除ければと、『よくある質問と答え・対応の会話文例集』を配布しました。今後は簡単な『指さし会話帳』や、電話で質問に答える『RAUSUホットライン』を整備していきたいと思っています」(池上さん)。
 
 
 
 
外国人バードウォッチャーは羅臼を訪れる前後、根室や尾岱沼(おだいとう)を回って、冬の道東に見られる野鳥を満喫するようです。羅臼での滞在中、彼らは寒さをものともせず海岸から、海上から、陸から、鳥たちが現れるのをカメラや双眼鏡を抱えて静かに待ちます。
 
 
 
 
バードウォッチングや撮影の最中は各人、あまり喋らないことが多いようです。観光船ではどんな感動があるのでしょう。「外国人のバードウォッチャーは、下船の時にはじめて俺に握手を求め、“素晴らしかった”“美しかった”“感動的だった”って言ってくるよ。俺は日本語しか喋れないけど、そんな事を言っているのは、相手の顔と雰囲気からわかるさ!」と、観光船の船長さんが教えてくれました。
 
「町民の目には異様に映っていたと思われた外国人バードウォッチャーの姿は、徐々に町に受け入れられてきました。“見慣れてきた”と言ったほうが合っているかもしれません」(池上さん談)。こうして流氷の海で野鳥観察が行えることを、池上さん達は羅臼オンリーワンの資源として磨き、発信すると同時に、徐々に地元での理解を得ていったのです。今では北海道リピーターが多い台湾や韓国をはじめ、イギリスなど欧州諸国、アメリカやアフリカからもはるばる羅臼に、個人旅行や小グループ旅行で行程を組んで訪れています。
 
 
 
 
2月から3月は、オオワシ・オジロワシともにほぼ遭遇できる「期待度・高」の時期。流氷が溶け始める3月下旬から4月は、クラカケアザラシやゴマフアザラシが見られる可能性もあります。さらに、冬期間も希にシャチやツチクジラが現れることがあります。これらの遭遇期待度を図化した「流氷&バードカレンダー」は、観光協会のホームページで発信しています。羅臼を訪れる時期に、どんな動物がいそうかがわかるのは、大いに重宝な情報ですね!
 
 

冬に新鮮魚介!羅臼の旬、エゾバフンウニ

さらに滞在を楽しくするのは “魚の城下町”と言われるくらい、年中豊富な羅臼の海産物。このご馳走は羅臼に宿泊した人だけが味わえる海の恵みです!羅臼の海は浅いところで水深約40m、深いところでは2,000m以上。浅瀬から深い海に棲む魚まで、様々な魚が水揚げされます。ウニが大好物の池上さん。北海道内のウニを食べ歩いたこともあるほどの彼女が、自信を持ってお奨めするのが、漁期に入った旬の走りで苦みが全くなく、甘みのある、2月~3月にかけてのエゾバフンウニ。「知床連山の栄養が注ぎ込む海で育った羅臼昆布をエサに育つ羅臼のウニは、旨みと甘みが濃厚なのにサラっとしているのが特徴で、いくらでも食べられます!」と力説します。
 
 
 
 
ちなみに池上さんが羅臼に来て大好きになった食材は、羅臼昆布。「昔から昆布は食べていましたが、羅臼昆布を食べた時の衝撃は今も覚えています。汁物・煮物・鍋・混ぜご飯あらゆる料理に使っています。ダシだけでなく、肉厚なので食べてもおいしい!すべての料理をワンランクアップしてくれます」(池上さん)。魚と昆布が豊富な羅臼らしい、うらやましい“UMAMI”のある食生活です。
 
 
 
 
「流氷・バードウォッチングのハイシーズンは2月から3月。その期間中は、羅臼に3軒ある大型ホテルや、15軒の民宿が満室になることも多々あります。夜が明けないうちから、がっちり防寒装備した大柄な外国人のお客様が、ロビーでコーヒーを飲んでいますよ」(池上さん談)。前日から羅臼に泊まってこそ可能な、野鳥観察なのです。
 
 

厳冬の羅臼クルーズへ

 
 
知床羅臼で流氷・バードウォッチングクルーズ専門の観光船は4社。株式会社まるみ、はまなす観光有限会社、有限会社知床ネイチャークルーズ、ゴジラ岩観光(有限会社丸は宝来水産)が運行しています。夏期には先の4社に、朝枝Ⅱ(ともえツー)と第15光篤丸の2社が加わり、ホエールウォッチングを目玉に運行します。各社、海を知り尽くした船長が操船し、羅臼の海にエスコートします。詳細は観光協会のサイトから見ることができます。
 
 
 
 
大型の鳥達が悠然と真冬の空を舞い、智恵を絞り厳しい自然から獲物を狩り、闘いながら逞しく生きる。流氷の時期にしか見られない光景を体験しに、羅臼沖を訪れてみてはいかがでしょう。
 
 
 
 

羅臼流氷・バードウォッチングクルーズ

お問合せ:知床羅臼町観光協会
申込受付:観光船各社
乗船期間:1月下旬〜4月上旬(気候によって前後する場合があります)
乗船時間:1時間コースと、2時間半コースの2種類が主にあります
乗船料 各社多少バラツキがありますが、大人1時間 4,000円(小人半額)、2時間半9,000円(小人半額)が目安です
 

交通アクセス

★羅臼町では夏と冬で交通事情が一変します。羅臼への交通情報を、知床羅臼町観光協会が一覧化し「知床らうすへのアクセス」にまとめていますのでご参照ください。
http://www.rausu-shiretoko.com/access.html
 
★冬期の道東方面に、公共交通を使って計画する際には、道東オフィシャル観光情報サイト「easthokkaido.com」(ひがし北海道観光事業開発協議会)に掲載の、「ひがし北海道2015エクスプレスバス」をご参照下さい。
http://www.easthokkaido.com/bus/
 
(1)飛行機・バスで
根室中標津空港から羅臼まで約73km、車で70分。レンタカー、もしくは「ひがし北海道エクスプレスバスが」便利です(道東には根室中標津空港の他に、2つの空港があります。女満別空港から羅臼は約130km、釧路空港は約180km)。
 
(2)JR釧路駅から路線バスで
JR札幌駅から特急「おおぞら」に乗車し約4時間、釧路駅(終点)で下車。釧路駅から路線バス(釧路羅臼線)に乗車して約4時間、終点「羅臼営業所」バス停にて下車。
 
(3)都市間バス・路線バスで
札幌ターミナルから道東方面の高速夜行バスにて、釧路市や中標津町に早朝に到着し、路線バスに乗り継ぎ、羅臼町に行く方法もあります。(スターライト釧路号は約6時間半、中標津行きのオーロラ号は約7時間)

 

冬の羅臼を楽しむ「旅のポイント」

羅臼町にはJR駅がないため、夏期の最寄り駅は知床斜里駅ですが、冬期は旅行の行程によって駅が複数(釧路駅、網走駅、知床斜里駅)考えられます。車の場合、札幌から約450km、約8時間かかります。国道は、知床半島のウトロ-羅臼を結ぶ「知床横断道路(国道334号)」が冬の通行止めとなります。交通情報・気象情報を確認のうえお出かけ下さい。

 

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