小倉百人一首、北海道は下の句かるたです

 
 
昔の日本のお正月の定番の遊びと言えば、凧揚げ、羽根つき、そしてかるた(小倉百人一首)。このかるたですが、北海道は「下の句かるた」と言われる遊び方です。
 
 

下の句かるたしか知らないので、上の句がわかりません

小倉百人一首かるたは、おそらく一般的には、上の句を読んで、下の句の札を取るというものなのでしょう。なぜ「おそらく」と言うかというと、道産子ライターのチバタカコ、そういう百人一首をやったことがありません。なぜなら北海道は、下の句を読んで、下の句の札を取る「下の句かるた」だからです。
 
 
 
 
例えば、「天津風(あまつかぜ) 雲の通ひ路(かよひじ)吹き閉ぢよ をとめの姿 しばしとどめむ」(僧正遍照)という有名な一首があります。多分「あまつかぜ~」と読み出すと、「乙女の姿しばしとどめむ」と書かれた札を「はいっ!」と取るのでしょう。これが、北海道では「乙女の姿~」と読んで、「乙女の姿しばしとどめむ」と書かれた札を取るのです。なので、百人一首は下の句は諳んじることができますが、上の句を言われると、さっぱりわかりません。乱暴に言えば、上の句なんてなくてもいいんです。道産子を長くやっていると、この遊び方が当たり前だと思っていましたが、どうやら下の句かるたは、北海道独特の遊び方のようです。
 
 

下の句かるたの由来

下の句かるたの由来は、正確な文献や資料があるわけではないので、実ははっきりした起源はわかりません。下の句かるたは、取る札が木(板)でできていることから「板かるた」とも呼ばれています。「全日本下の句歌留多協会」によると、板かるたは、開拓時代に屯田兵によってもたらされたと言われており、それ以前から羽幌方面の人たちが遊んでいたという説もあるそうです。
 
 
 
 
では「下の句」は…というと、どうやらルーツは会津藩につながるようです。会津若松市史には、文化文政(1804〜1829年)頃、会津若松藩では板かるたが武家や商家で行われるようになったとあります。そして「下の句を読みて下の句を採る習ひあり」と書かれています。
北海道は道外から移り住んだ人が多いので、もともと木札のかるたを使っていた人たちが、そのまま持ち込んだものが定着し、会津から移住してきた人たちによって、下の句かるたが広まっていったのかもしれませんね。
 
 

北海道の下の句かるたを守る「全日本下の句歌留多協会」

北海道の下の句かるたを継承、普及しているのが、北海道文化団体「全日本下の句歌留多協会」です。いま、協会には札幌支部、長万部支部、夕張支部など33支部が加盟しており、それぞれに複数の倶楽部(グループ)が所属しています。北海道Likersが訪れたのは、全日本下の句歌留多協会会長の北澤務さんと副会長の土門守さんが所属する「札幌北門歌留多倶楽部」。大会に向けて、小学生、大人たちが練習をしていました。
 
 
 
 
 
 
全日本下の句歌留多協会では、選手権並びに協会大会を年1回、その他地方の大会などを含めると年間で10回ほど大きな大会を開催しています。毎年3月に行われる一番大きな大会は、北海道や札幌市、北海道教育委員会などの公的機関や道内主要メディアの後援が付いており、2015年は第65回を迎える伝統の一戦。たかがかるたと侮るなかれ、北海道の下の句かるたは、これからも北海道で守り、継承し続けなければならない、大切な伝統文化なのです。
 
 

3人1チームで対戦、大切なのはチームプレー

北海道の下の句かるたは、1チーム3人の対抗戦で行います。3人は攻め(突手)、中間(中堅)、守り(守備)に分かれて横1列に並び、攻めと相手チームの守りが向き合うように座ります。
 
 
 
 
 
 
ルールはざっくり言うと、各チームが50枚ずつ札を持ち、それを3人で分けて配置し、読み手が読んだ札を取り、自軍の札が先になくなったほうが勝ち。実は、細かいルールがまだありますが、初心者はまず相手より先に取る楽しみを体感するところから始めます。
 
 
 
 
「下の句かるたは、3人1チームで、それぞれ役割があります。だから、1人でやっているようで実はチームプレーがとても大事。チームで勝つことのおもしろさに目覚めたら、これがもうやめられなくなるんですよ」と北澤会長。
 
 
 
 
「札幌北門歌留多倶楽部」の練習日に集まっていた人たちに、下の句かるたのおもしろさを尋ねると、皆さん口をそろえて「札を取ること。取れるようになると、ますますおもしろくなる」と話してくれました。
 
 

男女、年齢のハンデなし!

下の句かるたは、基本的に老若男女が一緒に楽しむことができます。「札幌北門歌留多倶楽部」では、小学生と大人が分かれて練習していますが、「ちょっとトイレ行ってくる」と子供が1人席を離れると、そこに大人が代打で座り競技続行です。大人の部は、16歳の高校生から76歳のベテランまで幅広い年齢層が参加。
 
 
 
 
 
 
小学生の練習風景を見ていると、北澤会長や土門副会長が「もっとスピードをあげて」「まだ、遅い!」と檄を飛ばしたり、タイミングよく札が取れると「今のはいいね~!すごくいい!」と褒めたり、なんだか体育会系の部活のよう。
 
 
 
 
特に子供たちには、きちんと声を出してあいさつすること、チームメイトや相手への礼など厳しく指導していました。中には負けて悔し泣きをする子供もいましたが、家庭や学校では学べないことを、下の句かるたを通じて彼らは学んでいるのだと感じました。
 
ところで、競技中に床をバンバンたたく行為ですが、これは「私が、札を取ったぞー!」という意思表示。しかも、いいタイミングで取れると、どんどん気持ちものってくるそう。その勢いは、相手チームへの威圧にもなるとか。また、北澤会長によると、床をたたくと手が軽くなる感じがするそうです。
 
 
 
 
下の句かるたをやっていると、誰でも「好きな句」ができるものです。最後に北澤会長に一番好きな句を尋ねました。「『静心(しづごころ)なく 花の散るらむ』です。昔、すごく強い人とやった時にこの札を取ったら『親子三代、この札を取られたことない!』と言われ、以来、必ずこの札は取りました。最近は、取られることも多くなったけど(笑)」。ちなみに、上の句は「ひさかたの 光のどけき 春の日に」で作者は紀友則です。
 
 
 
 
久しぶりに下の句かるたを見て、「やっぱりおもしろいなぁ、またやってみたいなぁ」と、私はしみじみ感じました。子供の頃にやった記憶がある人、あるいはやってみたかったけど機会がなかったという人、そして北海道Likersを見て興味がわいた人、ぜひ、全日本下の句歌留多協会に問い合わせてみてください。近くでやっている仲間たちを教えてくれますよ。もちろん、性別年齢は問いません。
 
 

関連リンク

全日本下の句歌留多協会