北海道を代表する漬物「にしん漬け」

 
 
北海道で冬、特に年末年始によく出てくる漬物と言って思い出すのは何ですか?はい、そうです!にしん漬けです。キャベツと大根と身欠きにしんを麹で漬けこんだにしん漬けは、昔はどこの家庭でも手づくりでした。今では自家製はすっかり見かけなくなりましたが、昔ながらの伝統の味を継承する留萌の「やん衆にしん漬け」を紹介します。これ食べて、年とりするべー。
 
 

留萌の八百屋さんが始めた漬物づくり

「やん衆にしん漬け」の「やん衆」とは、北海道のにしん漁場で雇われていた男性のこと。にしん漁が盛んだった留萌(るもい)市の(株)丸夕田中青果、営業部長の田中美智子さんに、にしん漬けについて話をうかがいました。
(株)丸夕田中青果は、今でこそ大人気の漬物やピクルスで全国各地の催事場を回っていますが、そのスタートは八百屋さん。法人としては昭和33年創業ですが、昭和15~16年頃から留萌で商売をしていたそうです。
その八百屋さんが漬物を始めた理由は、「もったいない」がきっかけ。今ほど流通事情が良くない時代、札幌から越冬用のキャベツや大根などを仕入れ、増毛(ましけ)にあった貯蔵庫に貯え、それを冬に売るという商売をしていましたが、それでも余剰野菜が出てしまいます。そこで、もったいないので余剰野菜を使って漬物を始めました。当初は、一般的なキャベツやキュウリの浅漬けでした。その頃留萌の大手水産会社が、地元ならではの数の子に力を入れ始めたのを見て、現専務が「そうだ!ここは留萌なんだから、留萌に根付いたにしん漬けを始めよう!」と思い立ちました。昭和50年代のことでした。
 
 

にしん漬けの名人が田中家にいた!

「留萌らしいにしん漬け」を思い立ったのはいいのですが、さて、にしん漬けはどうやってつくるんだ?と周りを見渡したら…いました!先代の奥さんが増毛生まれで、にしん漬けの名人と言われていた人でした。そこでにしん漬けを習い、家で漬けることはできました。が、これを流通するとなると、果たしてうまくいくのか?さらに先代から「留萌のにしん漬けを、全国に知らしめる役割をしなさい」と言われ、ここからが、田中青果の苦労の始まりでした。
家庭用のにしん漬けはおいしくできるのですが、それを道外へ持っていくと、漬かりすぎたり、酸味が強くなったりと、なかなか安定した味にならなかったそうです。
そこで、材料、温度、漬け方などを、徹底的にデータ化。下漬けを何日にするか、本漬けは何日か、温度のバランス、麹菌が起き上がるタイミングなど、とにかくこと細かくデータを取り、研究すること15年。先代には「今度失敗したら、もうやめなさい」と言われたこともありましたが、一から体で覚え、いつ食べてもおいしい、田中青果のにしん漬けをやっと完成することができました。
 
 

「やん衆にしん漬け」は、すべて手づくり

昔は、10月下旬になると、各家庭の庭先に大根が干ささり(ここ、あえて北海道弁で!)、漬物づくりが始まりました。が、今ではその様子をあまり見かけなくなりましたね。田中青果では、今は年中にしん漬けをつくっていますが、やはり1番忙しくなるのは10月下旬~11月にかけて。温度調整や発酵具合など、微妙な勘が味の決め手となるにしん漬けは、機械化でつくることができないため、すべて手づくりです。
 
 
 
 
にしん漬けの主な材料は、キャベツ、大根、身欠きにしん。これを麹で漬けます。田中青果の「やん衆にしん漬け」のおいしさの秘訣は、身欠きにしん。
 
 
 
 
留萌はかつて、にしん漁で栄えた町なので、身欠き加工の技術が優れており、それは今に受け継がれています。
田中青果で使っている身欠きにしんは、留萌で加工されたもので、本乾(ほんかん:しっかりと乾燥させたもの)と呼ばれるもの。生臭さがなく、ほどよく漬かった身欠きにしんは、キャベツや大根より先に手が出てしまうくらい。
 
 
 
 

しばれたにしん漬け、あめてはいないけど、ちょっとすっかい

昔、各家庭で漬けていた時は、冬に物置の漬物樽のにしん漬けがしばれて(凍ること)いて、でもそのしばれたにしん漬けがこれまたおいしくて…という思い出がある人もいるのでは?そして、ちょっと漬かりすぎても「大丈夫だ、あめてない(腐ってない)から。ちょっとすっかく(酸っぱく)なったけど、それがまたおいしいべさ」と言っていたおばあちゃんたちの会話を懐かしく思い出します。
 
 
 
 
「やん衆にしん漬け」は、調味液を入れるのではなく、下漬け、本漬けという本来の漬け方を伝承しているので、時間が経つと酸っぱくなることはあっても、それは腐敗ではなく、漬かることによる味の変化。
ただ、キャベツも大根も身欠きにしんも、どれもおいしいので、すっかくなる前に、あっという間になくなりそうですけどね。
 
 
撮影:チバタカコ
 
 
撮影:チバタカコ
 
 
撮影:チバタカコ
 
 
「やん衆にしん漬け」をはじめ、いろいろな種類の漬物を持って、田中青果は全国の物産展を回っています。お近くの物産展で見かけたら、ぜひ一度北海道ならではの漬物を味わってみてください。もちろん、留萌本店で購入可能。また、札幌市内なら三越と札幌エスタ店にそれぞれ直売店があります。
「年末年始の食卓に、にしん漬けがないとなんだか物足りない」という道産子、そしてハートが北海道魂の皆さん、「やん衆にしん漬け」食べてみないかい?