日本唯一、世界唯一が詰まった札幌の地下鉄

 
 
札幌の地下鉄。他の地域から来た方がよーく見ると「何これ!?」と思うことがいくつかあります。札幌市民の方は日常すぎて特別気にすることはないかもしれませんが、実は日本唯一、世界でも稀な乗り物なのです。
 
札幌の地下鉄は、一般的には札幌市営地下鉄、正式には札幌市交通局高速電車といいます。南北線、東西線、東豊(とうほう)線の3路線があり、札幌市民の足として活躍しています。
今回、南北線を例に、札幌の地下鉄の不思議を探りました。
 
 

札幌の地下鉄にはタイヤがついている

こちらは有名なお話。
通常、鉄道の車両についている車輪は鉄輪です。ところが、札幌の地下鉄は鉄輪がありません。かわりに、ゴムタイヤがついています。
 
 
 
 
なぜ鉄輪ではなくゴムタイヤなのでしょうか。
その理由は、加速減速がしやすいということ、登坂性能に優れているということです。
 
札幌で1番古くに建設された南北線は、1972年の札幌冬季オリンピックの開催に合わせ、1960年代から建設が進められました。当時走っていた路面電車の置き換えとして駅間距離を路面電車並みに短くすると考えられていたため、頻繁な加減速には鉄輪は不向きでゴムタイヤが最適とされました。
また、札幌郊外を走っていた定山渓鉄道の廃線跡地を一部利用して建設するため、地下から地上の高架線へと走行する時にもゴムタイヤのほうが坂を登りやすい、という理由で鉄輪ではなくゴムタイヤが採用されました。
 
ちなみに南北線の場合、約2年半~3年間走行するとタイヤ交換するそうです。距離にして約24万キロ。地球1周が約4万キロなので約6周もする距離を走るのですね。
 
 

札幌の地下鉄にはレールがない!?

札幌の地下鉄には、通常の鉄道にある2本のレールがありません。かわりに真ん中に1本、巨大なレールのような突起があります。正確には案内軌条といいます。
ゴムタイヤなので鉄のレールの上を走る必要はなく、平らな部分を走ることができます。とはいえ自動車のようにハンドルがあるわけではないので、進行方向をナビゲートする役割として案内軌条があります。車両の下にあるゴムタイヤとは別の車輪があり、左右からこの巨大な突起を挟むようにして走行します。
 
 
 
 
車両が行き来するポイントも特殊な形をしています。走行しない方向の案内軌条は下へ沈んでいて路盤は平らですが、ポイントを切り替える時だけ案内軌条が上へせり上がり、今まで走行していた方向の案内軌条が逆に下へ沈みます。すると、1本の案内軌条が今までとは別ルートへと続いていきます。
 
南北線の案内軌条は断面がT字型をしていますが、異なる時期に建設された東西線と東豊線はI字型をしているそうです。さらに、南北線の走行路面(ゴムタイヤが走行する部分)は樹脂製ですが、東西線と東豊線は鉄板。樹脂製のほうは補修頻度が上がるため、南北線のほうが他2路線と比べやや揺れが大きいのだとか。とはいえゴムタイヤなので、通常の鉄道よりは騒音も少なく乗り心地もソフトです。
 
ゴムタイヤと案内軌条を使って走るこの鉄道システム、札幌方式(中央案内軌条方式)と呼ばれる特殊な仕組みで日本では唯一、世界でもゴムタイヤの地下鉄はフランスなどにありつつも、全く同じ鉄道システムはないそうです。
 
 

札幌の地下鉄はシェルターで雪から守る

札幌は豪雪の都市。地下を走るなら関係ありませんが、一部の区間は地上を走るため雪が心配です。ゴムタイヤをスタッドレスタイヤにして毎日雪かきして、ポイント凍らないようにして…、などやっていられません。
そのため、地上を走る部分は全てシェルターで覆われています。
 
 
 
 
巨大なかまぼこ型をした覆いが、地下鉄の地上部を完全ガード。大雪の日でも雪の心配は全く無用、一年中天候に関係なく走行することができます。
シェルターの壁面は一部がガラス窓になっているので、多少眺望は遮られるものの、藻岩山(もいわやま)の雪景色など車窓を楽しむこともできます。
 
北海道内では、JRの一部路線のポイント部分などに雪から守るためシェルターが設置されていますが、地上部分に全て設置されているのは札幌の地下鉄だけです。もちろん、シェルターで覆われた鉄道という点も日本唯一。
ちなみに地上区間は、南北線の南平岸駅付近から真駒内駅の間です。
 
変わり種は路線ばかりではありません。車両にも…!?
 
 

札幌の地下鉄は座るべからず!?「優先」ではなく「専用」の席

各鉄道の車両の端には、優先席やシルバーシートをよく見かけます。しかし、札幌の地下鉄には優先席はありません。もちろん指定席も特別席もありません。かわりにあるのは「専用席」です。
 
 
 
 
対象者は、ご高齢の方や身体の不自由な方、妊婦さんや小さなお子さん連れの方など、と他の鉄道と変わりありません。ただ、「優先」で座れる席ではなく「専用」の席。優先席なら対象となる方がいなければ一般の方が座ることもありますが、札幌の地下鉄は専用席なので一般の方は座れません。朝夕の混み合うラッシュ時でも、ここの空間だけぽっかり空いています。
 
その昔、札幌の地下鉄でも優先席を設けたものの、あまりうまく浸透しなかったため、いっそ専用席にしようと変更しました。見た目ではわからない内部障害持っている方など、立ったままの乗車が困難な方にも安心して地下鉄を利用できるようにと、混雑時でも一定数の座席を確保するために現在も専用席としているそうです。
 
そして、座席の上を見ると、こんなことに…
 
 

札幌の地下鉄には網棚が…、ない…!

座れない時、買い物した袋やカバンを網棚にのせるという方も多いと思います。ただ、札幌の地下鉄で同じことをしようとすると…、あれ!?ない!!
そう、このとおり網棚がついていないのです…。
 
 
 
 
転勤族や出張の方などが、地元で乗っている電車のクセで網棚に荷物を置こうとしたら座っている人の上に落としてしまったということが、実際たまーに起こるという噂も…。
 
札幌の地下鉄では開業当初から網棚がありませんでした。その理由は2つ。
忘れ物をなくすということと、平均の乗車が4~5駅で10分足らずなので必要性が少ない、ということ。長距離通勤が当たり前の大都市の鉄道では考えられない、札幌ならではの理由です。
 
ほかの鉄道と異なることが多い札幌の地下鉄。日本唯一や世界唯一がいくつも詰まった、実はとっても珍しい鉄道なのです。
出張や観光で札幌へ行くという皆さん、乗る時は専用席と網棚には要注意、ですヨ。