ヒグマが見たい!「北海道大学ヒグマ研究グループ」

 
 
「私たちは日本で唯一、ヒグマの研究をしている大学のサークルです。…たぶん」という、妙に弱気な自己紹介をする「北海道大学ヒグマ研究グループ」、通称クマ研。1970年頃の設立から今日まで毎年コツコツとヒグマを観察し研究しています。
 
 

ヒグマが見たい!からすべては始まった?

北海道大学ヒグマ研究グループ(以下、クマ研)は、1970年頃「ヒグマが見たい!」という大学院生によって設立されました、とHPにはあります。結構ミーハーなきっかけだなぁ…と思ったら、クマ研代表の富田幹次さんによると、実はしっかりした設立趣旨があるそう。
 
 
 
 
70年代、ヒグマを無計画に駆除し、個体数がどんどん減っていくのを見た当時の北大生たちが、「きちんとデータを集め研究をし、科学的な検証をするべきではないのか!?」と声をあげました。そして、自分たちでその行動を起こすことで、行政などの機関に訴えることができるのではないか?と考え、クマ研が設立されたそうです。さすが北大生、志がBoys be ambitiousです。が、その裏側には、ちょこっとだけ「せっかく北海道にいるのだから、野生のヒグマも見てみたいじゃん♪」という好奇心があったのも事実とか…。
 
 

ゆる~く、柔軟に。それが40年以上続くクマ研の秘訣

クマ研に入るくらいですから、学生たちは獣医とか生物や環境などを専攻しているのかと思いきや、代表の富田さんは理学部、他にも水産学部、工学部、法学部など、学んでいる学部学科とはあまり関係がないそうです。クマ研のメンバーは、毎年15人程。そのほとんどが男子学生だとか。顧問の先生はいますが、基本的には先輩たちが試行錯誤しながら蓄積してきたノウハウを連綿と受け継ぎ、今日に至ります。
 
ヒグマを研究するグループですが、大学の研究室のような活動をしているものではありません。富田さんは「研究結果は、ヒグマフォーラムなど、地域からの報告というセクションで発表したりしています。また学会などでは、不定期ですが、有志がいる際には発表しています。メンバーはみんな動物好きで、アウトドア好き。動物と言っても、ペットではなく、自然の中にいる野生動物です。北海道の自然の中で生きるヒグマを、同じ自然の中に自分たちも入って調査し、観察することが活動の目的なんです」と話してくれました。
 
 
 
 
アウトドア系サークルなので、さぞかし体育会系のようなノリかと思いきや、調査参加は強制ではなく自主参加。先輩後輩の上下関係にもうるさくなく、クマ研の代表や調査隊の隊長も、なんとなく流れで決まってしまうのだとか。「40年以上続いているサークルですが、特別な規則や決まりごとはなく、何かがあれば都度柔軟に対応します。正直、かなりゆるい感じですよ(笑)。でも、そのゆるさがあるからこそ、ここまで続いているのかもしれませんね」(富田さん談)。
 
 

春は天塩でモニタリング、夏は大雪で観察

北大は、天塩エリアに北大天塩研究林(北海道大学北方生物圏フィールド科学センター付属天塩研究林)を所有しており、これは国内の研究林では最大級のもの。そこにある施設をベース基地にし、予め計画したルートで沢を歩きながら、ヒグマの足跡、糞、食跡(食べた跡)、爪痕、背こすりの痕跡などを調べ、地図に落とし込みながら記録します。これが、クマ研の主な活動の1つである、春の長期モニタリング調査です。
 
 
 
 
 
 
「毎年だいたい2~3月頃から調査の計画を立て、4月下旬~5月上旬くらいに研究林に入ります。10日くらいこもってやっています」と富田さん。
 
そしてもう1つの大きな活動が、夏に行う大雪山での直接観察です。これは、約1ヵ月間テントで生活をしながらヒグマを見る=観察するというもの。森と違って高山なので観察には適した場所だそうです。テント生活なので、1週間に1回山を下りて食料などを調達し、また登る、を繰り返します。隊長になると山を下りずに、4週間テント生活だとか。「でも、夏なので意外と山には人が多くて、電波も通じるし、平気なもんですよ」(富田さん談)。
 
 
 
 
 
 

野生のヒグマに餌付けなんて、もってのほか!

ヒグマ調査は、ヒグマの生息地に入っていくわけですから、いつヒグマに出会うかわからないという危険性があります。危機回避や対策はどのようにしているのか、富田さんに尋ねました。
 
「調査に入る前には、きちんと遭難対策をしています。僕たちはヒグマの跡を追跡していくので、当然ヒグマに近づいているわけです。でも、あきらかにこれ以上近づいたら危険だという場面では、すぐに引き返したり、ヒグマとは逆方向に進みます。『出会わないようにする』『危機の前に回避する』ことが一番大切です。それに、調査中は大きな声で騒ぎながら歩き、ヒグマに『ここにひとがいるよ!』と知らせるようにしています」。
 
 
 
 
ヒグマの生息地に近づく「ひと」のマナーについては、道内のニュースでも時々取り上げられます。皆さん、食べ物を与えて餌付けするなんて、絶対やってはいけませんよ!クマ研代表の富田さんからは、「ヒグマはとても学習能力が高いんですよ」と一言。ヒグマだけじゃなく、キツネも鹿も同様です。
 
クマ研は、来年春の天塩調査までしばらくメインの活動はお休みです。が、年が明けたらすぐに準備に取り掛かり、調査計画を立てながら春の新入生勧誘に力を入れ、再び春の天塩、夏の大雪と、ヒグマを追って調査に入ります。学生サークルなので毎年少しずつメンバーは変わるし、潤沢な活動費用があるわけではありませんが、これからもコツコツと地道な研究調査は続いていきます。調査・研究結果をまとめた「ヒグマ通信」という冊子を発行(不定期)し、一般にも一部600円で発行しているので、ヒグマに興味のある人は、ぜひ問い合わせてみてください。
 
「もしできるなら、1年を通して調査をしてみたいです。通年モニタリングが夢ですね」と話すクマ研代表。「ヒグマが見たい!」という好奇心からスタートした彼らの活動ですが、40年以上経っても、根っこにあるのは北海道の自然とヒグマへの愛情なのだと感じました。
 
 

関連リンク

北海道大学ヒグマ研究グループ HP
北海道大学ヒグマ研究グループ facebook