生きた化石を見に行く!美深チョウザメ館

チョウザメを見るために訪れたのは、旭川から北に90km、美深町にある「びふかチョウザメ館」。シベリアなどに分布する7種3,400匹を飼育しながら、「ベステル」と呼ばれる人工交配種の養殖事業を行っています。
 
 

チョウザメは海水魚か?淡水魚か?

 
 
チョウザメは、1~2億年前の白亜紀から存在する古代魚の一種で、骨が柔らかく、ウロコが硬いのが特徴。動きまわるのが得意ではないことから、川底でじっとして硬いウロコで外敵から身を守るようです。
漢字で書くと「蝶鮫」。チョウが羽ばたいているような形のウロコと、サメのような体形から、この名前が付けられたのだとか。
 
 
 
 
チョウザメは海でも生活しますが、サメの仲間ではなく、淡水魚の一種。
川で産卵・ふ化し、幼魚になると海へ下り、産卵のためまた川を上るというサケと同じようなサイクルを辿りますが、産卵は一生に一度ではなく、数年に一度のペースで行うそうです。
 
体長は平均1~2メートルほど。種類によっては、体長8メートル、体重は1,300kgにもなるのだとか。
川での生活は窮屈じゃないのか?と心配になってしまうほどの大きさですね。
寿命は50~100年で、150年以上生きたという記録も。チョウザメは、淡水魚の中では最も大きく、長寿の魚なのです。
 
北海道では、天塩川や石狩(いしかり)川に「ミカドチョウザメ」と「ダウリアチョウザメ」が昭和初期まで棲息した記録が残っていますが、現在は絶滅したとされています。
当時、石狩川では豊漁の神様として祀られ、天塩川では身や卵が、当時の人々の貴重な食料となっていたそうです。
 
 

美深とチョウザメのつながりとは?

なぜ美深町でチョウザメ養殖がはじまったのか、チョウザメ館のスタッフである宮城大助さんと、鈴木渉太さんに話を伺いました。
 
 
 
 
「1963年に、ロシアと日本の間で、チョウザメの稚魚とアユの卵の交換が行われたのがきっかけです。1983年に、水産庁養殖研究所の飼育実験として、美深町の三日月湖に300匹のベステル種を放流したのが養殖事業のはじまりでした。その後、ビニールハウスの中に水槽をつくるなどの試行錯誤を経て、1993年にはじめて卵をとることに成功。1997年にはチョウザメ館がオープンし、以降キャビアなどの特産品開発のため、チョウザメ養殖の研究を行っています」
 
館長の宮城さんは、1997年のオープン以来、ずっとチョウザメの飼育に携わっているそうですが、苦労はありましたか?
「当初、スタッフとして任命されたのは自分一人でした。生き物を育てた経験がないうえに、チョウザメのことは、周囲の誰も分からない。最初はエサを食べてくれなくて、痩せていくし、どうしようかと思いました。今はマス用のペレットをあげているのですが、はじめて食べてくれた時は、ほっとしました」
 
「エサあげてみましょうか?」と、養殖用の水槽にペレットを蒔いてくれた宮城さん。
「エサを食べる時は、口先にあるヒゲをセンサーにして、吸い込むようにして食べるんですよ」
と言いながら、宮城さんが水槽の中に手を入れると、指をエサと間違えてチョウザメがパクリ。
「痛くないんですか!?」と聞くと、
「歯がないので痛くないんです。かわいいですよ」とニコニコ顔。
 
 
 
 
鈴木さんは、
「今は、養殖用のベステル種を含む7種3,400匹のチョウザメがいますが、生態については分かっていないことが多く、試行錯誤で育てています。メスは採卵できるまでに10年、オスは採精までに5年かかります。手がかかりますが、その分愛着も湧くんです」
 
まさに子育てといった感じですね。
 
「そうですね。環境に敏感で、とってもデリケートな魚です。養殖に使う水は、塩素が入らないように水道水をろ過して、水温にも気を遣いながら育てているんですよ」
 
 
 
 

いつか天塩川にもチョウザメが!?

チョウザメの養殖に愛情を持って取り組んでいるお2人。
最後に、お2人が最終的に目指しているものは何かを聞いてみました。
「キャビアを缶詰などで商品化できるようにし、北海道でチョウザメ養殖のモデルになれると良いなと思っています」と宮城さん。
鈴木さんは「養殖事業とは別に、天塩川にまたチョウザメが棲息してくれるようになることが、内なる野望です」
と話をしてくれました。
養殖は産業面のメリットはもちろんのこと、世界的な絶滅危惧種となっているチョウザメを守るうえでも重要な技術。いつか、天塩川に体長1メートル超えのチョウザメが泳いでいる姿を見てみたいですね。
 
「たくさんのチョウザメを見ることができるのは、チョウザメ館だけ。生態について聞きたいことがあれば、気軽に声をかけてください。ほかに、天塩川流域の魚も展示されていますよ」と宮城さんと鈴木さん。
チョウザメ館は入館無料。国道40号沿いの「びふかアイランド」敷地内にあるので、気軽に立ち寄ることができますよ。