情熱の仕事人。北の大地でばん馬とともに歩む。ばんえい競馬調教師「谷あゆみ」

 
 
体重1トンもの馬が鉄そりを引き、障害を越えてゴールを目指す、ばんえい競馬。世界でも北海道帯広市でしか開催されていない貴重なレースを支える1人、女性調教師・谷あゆみさんに会ってきました。
 
重量物を積んだ鉄そりを引くばん馬は、体重がサラブレッドの倍ほどもある巨体の馬。「自分が小さいから、大きな動物に憧れがあってね」。小柄な谷さんはそういって笑います。
 
 
 
 

ばんえい競馬に魅せられて厩務員に志願。初の女性調教師に

午年生まれで、幼い頃から馬の絵ばかり描いていたという谷さん。動物の勉強をしながら絵も描けると、生まれ育った奈良県を離れ、帯広畜産大学に進学。卒業後はサラブレッドの一大生産地・浦河町にある牧場に就職し、引退後の名馬の世話も担当しました。
「人間と馬との信頼関係がないと、いろんなことが上手くいかない。まずは信頼関係を築くことが絶対に必要」。大事にしているこのことを、勤めた牧場で教わったといいます。
 
牧場で働いていた頃、帯広を訪れる機会があり、そのときに帯広競馬場で谷さんは初めてばんえいのレースを目にします。
「大きな馬がそりを引っ張っている場面は本で見たことがあったけど、目の前で荷を引くばん馬の姿に感動して」。当時ばんえい競馬は、帯広市を含め道内4市で開催されていました。虜になった谷さんは、各地の競馬場まで足を運んで観戦したそうです。
 
 
 
 
厩務員に志願し、谷さんがばんえい競馬の一員となったのは1993年のこと。2000年代に入るとばんえい競馬は低迷。北海道を拓いてきた馬、文化を守るためにできることは何か?「ばん馬を育てることも、自分のできること」。勤めていた厩舎の調教師が背中を押してくれたこともあり、調教師試験に挑戦。一発で試験を突破し、ばんえい競馬初の女性調教師として、40歳で厩舎を構えました。
開業した2006年は、ばんえい競馬が存続できるか否かで大きく揺れ動いた年。谷さんは前面に立って、存続を働きかけた1人でした。
 
 

愛するばん馬とばんえいで仕事をし続けたい

谷厩舎には現在、16頭の馬がいます。競馬場内の厩舎で暮らし、厩務員とともに馬の世話をし、運動をさせと、午前3時には起きて仕事をスタート。一児の母でもある谷さんは、育児に調教師の仕事にと、まさに奮闘する日々を送っています。
 
馬主から馬を預かる調教師には、強い馬をつくることが常に求められます。「走る気持ちのない馬を育てても意味がない」と、谷さんはきっぱり。
「人のことを信用してくれなかった馬が、信用してくれるようになるとうれしいし、育てた馬が連勝したり、特別なレースで勝ったり、馬主さんから“すごいね”っていってもらえると凄くうれしいよね」。
 
ばんえい競馬の頂上レースは、最強馬を決めるばんえい記念。そのレースで1トンのそりを引く馬をつくることが目標だといいます。
 
 
 
 
「ばんえいは途中で一旦、馬を止めるの。いろんなレースがあるけど、走るのを止めるなんてまずないでしょ。力強くて迫力があるんですよ」。ばんえい競馬の魅力を教えてくれる谷さんは、1人でも多くの人に実際にレースを体感してほしいとも語っていました。
 
「ばんえい競馬をもっともっと盛り上げていかないと。ばん馬は自分にとっても居て当然の存在。馬にさわらなくなったらどうなるんだろうって思う。一生懸命がんばって、ばんえいで仕事をしていきたい」。
 
レースに挑むばん馬のように、ふんばり、山を乗り越えきたであろう谷さん。自然体で飾らない、そしてたくましさを感じる素敵な女性でした。これからもあるがままに、一歩一歩北の大地を踏みしめて歩み続けていきます。
 
 

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