
水が多く、1年を通して気温が低いという理由から、日本の湿原の約8割は北海道にあるのをご存じですか?
なかでも北海道東部の太平洋に面した酪農と漁業のまち、浜中町にある霧多布(きりたっぷ)湿原は、面積が約3,000ヘクタールと国内3番目の広さを誇る湿原。その光景は春夏秋冬どの季節を取っても美しく、花や夕日や雪など大自然の現象に癒されます。
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この記事では、風に穂を揺らすたくさんのススキが印象的な初秋の様子を紹介しつつ、季節毎の魅力も伝えます。

やちぼうず木道
広~い霧多布湿原には4つの木道があり、その一部を歩くことができます。この湿原には低層、中層、高層湿原、塩湿地と4タイプの湿地帯があり、それぞれに見える景色が異なるのが面白いところ。
例えば、霧多布湿原センターからすぐの、やちぼうず木道。距離にして一周500mのこちらの木道では、その名の通り、やちぼうずがたくさん見られます。

▲わかりますでしょうか、これがやちぼうずです。長い“ストレートヘア”が自慢です
やちぼうずとは、スゲの根っこ(※北海道弁で根のことです)が盛り上がったもの。漢字で書くと、谷地坊主。谷地は湿地帯という意味です。大きさも〝ヘアスタイル〟も様々で、まるで生き物のよう。今にも動き出しそうです。

▲この写真の中にもやちぼうずがあります。見つけられますか?
琵琶瀬木道と仲の浜木道
6月~8月に歩くとワタスゲやエゾカンゾウなど花の群落が見られるのが、琵琶瀬木道と仲の浜木道です。このふたつの木道は、出発地点が同じ場所。やちぼうず木道入口付近より車で10分ほどの海沿いにあります。

▲片道500mの琵琶瀬木道です
取材時(9月上旬)にはさすがに花はほとんどありませんでしたが、視界が開けていて気持ちいい!どこまでも続く湿地帯やその上に立つ民家、川などが見られます。

▲琵琶瀬木道の終点。夕刻は川が夕日色に染まると聞いて日没を狙いましたが、曇りで見られず残念
奥琵琶瀬木道
一周150mの奥琵琶瀬木道が設置されているのは、国内でもそう多くない、海水が浸水している塩湿地のあるエリア。終点の展望所からは、そんな海水のある場所にしか生育しないという紅葉したアッケシソウの姿が見られました。

▲見えますか? 赤いのがアッケシソウです。サンゴソウとも呼ばれています
また、少しするとタンチョウもやってきました! 水辺をゆらゆらと優雅に歩いていました。ここには他にも様々な野鳥が訪れるそうです。

▲いつ見ても美しい、タンチョウです
木道の両脇にはススキが広がり、個人的には一番いいなと感じたエリアでした(花の季節になればまた変わると思いますが)。


MGロード
歩く時間がない人は、霧多布湿原を縦断するMGロードを車で走ってください。約2kmの道で、両脇に湿原が広がります。意外と至近距離で見られるんですよ。

▲MGロードです。MGとはマーシュグラスランドの略。マーシュグラスランドとは造語で湿った草原、つまりは湿原という意味のようです
写真の右に写っているのは小沼。見えませんが、隣には氷切沼という細長い沼もあります。氷切沼の名前の由来は、まだ浜中町に捕鯨基地があった頃、クジラを保管するために、ここの氷を取りに来ていたからだそうです。
季節毎の魅力
霧多布湿原センター館長の阪野真人さんに、湿原の季節毎の魅力を聞いてみました。
「霧多布湿原は花の湿原とも呼ばれるように、春から夏にかけてはやっぱりきれいですね。4月に福寿草が咲き始め、ゴールデンウィークには水芭蕉、6月からはクロユリが見られ、そのまま花の種類の最も多い7月~8月に突入します。
この時期は霧が多く視界が真っ白な日もあるのですが、9月下旬からはほとんど出なくなり、見晴らしがよくなってきます。11月までは晴れの日も多く、朝日や夕日、星空がきれい。朝日は海から上がり、夕日は森に沈みます。夕日を観賞するなら琵琶瀬木道か奥琵琶瀬木道がおすすめ。琵琶瀬川の水面やヨシ、アシなどの植物が、ピンク色や濃いオレンジ色に染まり、キラキラと輝いて見えます。
冬は、一面が真っ白です。本州の方はみなさん、感動されますね。歩いていると、南極大陸にいるような気分を味わえますよ。長靴や歩くスキーを貸し出していますので、冬こそぜひ散策して欲しいですね」

▲大自然の中で仕事がしたいと、愛知県から移住してきた阪野さん
霧多布湿原をはじめ、釧路湿原や野付半島など北海道東部の湿原は、豊かできれいな大自然の風景が楽しめる場所です。次の北海道旅行は、道東湿地巡りドライブなんていかがですか? 季節を問わず、楽しみに来て下さい!

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取材・文/北海道Likers フォトライターFUKKO
撮影/川村勲
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