情熱の仕事人。逆境からの出発、そして新たな挑戦へ!十勝バス社長「野村文吾」

 
 
40年間低迷の一途を辿ってきた路線バス事業を増収へと導き、世界に目を向け次なるチャレンジへ。まちづくり、観光分野においても十勝を牽引するリーダーの一人、十勝バス社長・野村文吾さんの情熱に迫ります。
 
帯広市を拠点に、路線・貸切・都市間バスを運行し、まもなく創業90年を迎える十勝バス。車社会が進むとともに全国的に路線バス利用の減少傾向が続く中、十勝バスも例外ではなく、1970年代以降利用者は減る一方で経営は苦難の連続でした。
 
 
 
 

異業種から家業のバス会社へ。崩壊寸前の組織を“チーム”に

野村さんは、高校から地元・帯広を離れて進学。大学卒業後は東京本社の企業に就職し、リゾート事業の企画宣伝業務に従事してきました。
 
「会社をたたむ」といった先代である父の反対を押し切り、「十勝バスを再建する」という自らの決意のもと、大企業を退職。実質トップとして、34歳のときに十勝バスに入社しました。
いざ入ってみると、体力を失っていた会社には「何をしても乗客は増えない」という社員のあきらめ感が蔓延。野村さんが「自分の人生を棒に振った」と感じるほど、内部は崩壊寸前の状況にあったといいます。再建への道は、まさに“どん底”から踏み出した一歩でした。
 
「自分が変わらなければ、社員は変わらない」。孤軍奮闘で苦しむ日々が続く中、野村さんは地元の経営者仲間から気づきを得ます。「それまでの私は自分の意見を強く打ち出すだけで、相手の立場や考え方を理解した行動ができていなかったんです」。
社員との距離を縮めるための変化と努力は徐々に社員に伝わり、組織は少しずつ「変わるためにチャレンジを」という同じベクトルの方向へ向かい始めていったのです。
 
 
 
 

十勝バスを再生・復活へ

正式に社長に就いた5年後。2008年、燃料の高騰がさらに経営を圧迫し、十勝バスは倒産の危機に陥ります。
 
なぜバスを利用しないのか?野村さんは社員とともに、地域住民宅を訪問して聴き取りを重ねました。この訪問では、訪ねたほとんどの人がバスに乗っていなかった厳しい現状を目の当たりにすると同時に、「潜在するお客さまはこんなにもいる」とチャンスも感じたといいます。
 
多くの人がバスに乗らない理由にあげた「不安」を解決しようと、乗り方・降り方、利用目的別の案内をはじめ、利用者にとって魅力的なサービスや路線バスを活用したパック商品なども次々と提案。徹底した利用者目線での取り組みが乗客数の増加に結びつき、2011年度には40年ぶりに増収に転じるという、地方の路線バスでは全国初という快挙を遂げたのです。
既成概念にとらわれず、時代の変化をとらえた野村さんの戦略は、地方バスの再生モデルとして全国から注目を集めています。
 
 

十勝を元気に。社外での活動を事業に生かして

野村さんは2007年から、帯広商工会議所の副会頭に就いています。当時44歳、サプライズといわれる人事だったといいます。
 
「シーニックバイウェイトカプチ雄大空間」、「道東道とかち連携協議会」をはじめ、野村さんは、まちづくりや観光振興に関わる様々なプロジェクトのリーダーとして、地域、人をまとめ、情報を発信。十勝が注目を集め、地域が元気になる、大きな成果を積み重ねてきました。
 
例えば「トカプチ雄大空間」では、十勝の魅力を組み合わせた「とかちガーデン・スイーツ・温泉チケット」(通称GSOチケット)を発売。このチケットは年々周知され売り上げを伸ばし、現在は旅行会社の商品にも組み込まれています。また、来訪者へのおもてなしとして、地元の人の目線で十勝の風土の魅力を伝えていこうと、「ライフコンシェルジュ」の育成にも力を入れているそうです。
 
十勝は企業や団体それぞれが強みを持っているぶん、連携するという意識があまり高くはなかったのだとか。それが今では様々な取り組みに対し、“オール十勝”で盛り上げようという変化が起こっているのだといいます。
 
 
 
 
チャレンジする機会を得て、ともに活動する仲間の支援を勇気に変え、挑戦してきた社外での数多くの経験を、野村さんは社内に生かしてきました。「成功事例を会社に持ち帰り、こうすれば上手くいくからやってみようということの連続だったと思います」。
 
新たに組織を立ち上げたり、地元の人、観光客に魅力ある企画や商品を生み出したり、社員自らが発想し、外へ発信していく。それができるようになれば、社員の自信や夢が広がり、ひいては外部から見た十勝エリアの魅力を高めることにつながっていくと野村さんは考えているのです。
 
「誰もが素晴らしい宝を備えているはずなのに、くすぶっている人が多いように感じます。そういう人を見ていると、もっと輝いてほしいと思うんです」。野村さんの社内・外での取り組みは、人も“オール十勝”で輝いていこうという想いも重なっているのです。
 
 

取り組んできたノウハウを海外へ

十勝バスの次なる挑戦は世界進出だといいます。
そのコンテンツのひとつとして、北海道大学、IT会社との共同研究で、スマートフォン向けの路線バス用目的地検索クラウドシステムを開発。すでに十勝管内での運用をスタートしています。
 
同システムは、行きたい場所から検索して最寄りのバス停や乗換えに最適なバス停などの情報を知ることができるため、停留所・路線名の分からない観光客も便利に活用できるというもの。他地域での運用も可能で、ほかの交通手段と組み合わせた情報の発信、他言語化をすることも想定しているそうです。
「訪れて使ってもらうだけではなく、道内・全国各地、海外に向けて、我が社の取り組んできたノウハウを出していきたい」。野村さんは熱を込めて語ります。
 
 
 
 
最後に、野村さんにとってバスとは何かとストレートに聞いてみました。
「ひとつは、自分を成長させてくれたものでしょうか。それとこれからはもっと、その人の個性なり考え方なりで、賢く上手くものを活用する時代になっていく。バスもそのひとつだと思いますし、重要なのはバスを利用する中でコミュニティに参加できるということです。バスは豊かな生活をおくるために必要な交通手段だといえると思います」。
 
どんな状況下にもひたすら前を向き、未来、時代への挑戦をし続ける野村さん。自社のバス事業、十勝を語る言葉から、あふれるような情熱がビシビシと伝わってきました。
 
 

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