2014年08月13日 | うずらはしちあき

情熱の仕事人。つくり、伝えていきたい北海道料理。BARCOM sapporoシェフ「塚田宏幸」

バルコ札幌 塚田宏幸シェフ
 
 
キッチンから、畑から、そして世界の食の舞台から、北海道料理を意欲的に発信。今回の主人公は、地域の食文化、食材とその生産者と向き合い、多方面で活躍中の「BARCOM sapporo(バルコ札幌)」のシェフ、塚田宏幸さんです。
 
 
バルコ札幌 塚田宏幸シェフ
▲塚田宏幸さん。1978年、札幌市生まれ。ヨーロッパを中心に様々な国を放浪し、調理・加工・農業・観光を学ぶ。「ゆっくりずむ北海道」主宰、2009年から「バルコ札幌」シェフを兼任。北海道の魅力的な食材を多彩なアレンジで独自の一皿に。「スローフード・フレンズ北海道」でも活動中
 
 

ヤギのチーズに魅せられてフランスへ

「実は料理をしたいと最初から考えていたわけではないんですよ」。この道に進んだきっかけを尋ねたところ、意外な答えが返ってきました。25歳まで音楽一筋。その傍ら飲食店に務めて始めた料理は、塚田さんにとってあくまでも食べていくための手段だったといいます。
 
転機となったのは、フランスの農場でつくられたヤギのチーズとの出会いでした。本人曰く、考えることよりも先に行動を選び取るタイプ。チーズのおいしさに衝撃を受けた塚田さんは、フランスに生産者を訪ねます。そこでは、自給自足の農業が営まれていました。
 
「しばらく住ませてもらってヤギ飼いの手伝いをしたり料理をしたり、農場の生活を通して感じたのは、彼らにはものをつくることへの哲学があって、それが生産物に現れてくるんだなあということ。いま思うと意識の高い生産者だったと思います。
帰ってきて、北海道はどうなんだろう?って探してみると、北海道にもそうした生産者さんがたくさんいたんですよね(笑)」。
 
 
バルコ札幌 北海道の料理 エゾシカ アイヌ料理
▲気軽に立ち寄って“北海道”を味わえるバルコ札幌
 
 
フランスからの帰国と同時期に塚田さんはスローフードの活動に参加。その活動を通じて出会ったネイチャーガイドと共に、北海道の自然と食を組み合わせた自然体験型ツアーを提供する「ゆっくりずむ北海道」を立ち上げます。その後、活動の拠点として、仲間と2009 年に“地域を楽しむ北海道バル”をコンセプトに始めたのが、「バルコ札幌」です。バルコ札幌は、毎年秋に行われる食のイベント「さっぽろタパス」(※)の事務局にもなっています。
 
 

生産者と気持ちの通う交流を

バルコ札幌ではワインと共に楽しめる、道産食材を使ったタパス(小皿料理)からコース料理まで提供。食材の多くは、地域の生産者との交流を通じて仕入れています。よいものをつくる生産者と、食材にこだわりそれを生かす料理人。お互いを高め合える相思相愛の関係を築くことが、ひいては産地の地域がさらによくなっていくことにもつながると塚田さんは考えています。
 
「例えば、僕のつくったキノコのピクルスと工房のチーズを交換するとか、そういうこともしています。支え合ってお互いがハッピーっていう、昔の物々交換ですね」。
生産者の方々と、思いやりのやりとりをするお付き合いを大切にしているのも塚田さんのスタイルです。
 
 
バルコ札幌 北海道の料理 エゾシカ アイヌ料理
▲野菜、マッシュルーム、短角牛、ナチュラルチーズ…。使用する道産食材や生産者の取り組みがお店の壁に紹介されています。掲示している食材はごく一部とか
 
 
お客さんにはお店で使う食材がどんなふうに育てられているかを知ってもらい、生産者の方には自分たちの食材がどう調理されているかを見てもらいたい。そんな思いから、お客さんを生産者の畑へ案内し、その場でつくる料理を食べてもらう企画も実施。また、北海道を舞台とした映画の食材のコーディネートなども手がけています。
魅力ある食材と、生産者を広く紹介していくこと。それが、塚田さんが料理をつくる最たる理由だといいます。
 
 

北海道でしかつくれない料理がある

塚田さんは自身の料理に、アイヌの食文化や地域に伝わる風習などから得た発想を生かしています。また料理をするだけではなく、アイヌの知人から学んだ料理を、オリジナルのレシピとして残すことにも取り組んでいます。
 
北海道Likersが紹介した記事はこちら↓
 
バルコ札幌 北海道の料理 エゾシカ アイヌ料理
▲「エゾシカ ソーセージ」。エゾシカ肉を使ったパテ、カツレツ、ハンバーグも提供。エゾシカは塚田さんが長年研究している食材のひとつ
 
 
「そもそも食って地域の生活に密着したもので、風土に合った食材の加工法があったり料理の仕方があったり、昔の人の知恵がつまっているんですよね。どこの街どこの国に行っても同じものが食べられる今だからなおのこと、地域の食文化というものを考えて次の世代に伝えていくことが僕たち料理人の役割だと思うんです。
例えば農家さんの中には自分の畑で種を取って、昔からその土地にある在来種を伝えていこうという人もいる。あるものを残すというその考え方を料理にも取り入れていくことで、地域性のある北海道料理ができると考えています」。
そこには、自身が各国を旅してその土地の食べものと出会ってきたように、北海道を訪れる人にも北海道の料理を楽しんでもらいたいという思いも重なります。
 
 
バルコ札幌 北海道の料理
▲ヨーグルトにスプーンを入れると、中にはニンジンのソルベが。メニュー名は「越冬」。雪の下から掘り起こしたニンジンの甘さに感動したことから生まれたという一皿
 
 
塚田さんは、2年に一度イタリアで開催されるスローフードの世界大会にも参加。2012年には“チームジャパン”のシェフとして、アイヌ伝統のお汁「オハウ」を現代風にアレンジした北海道料理をプレゼンテーションしました。
北海道の昆布やラワンブキなどを使ったオハウに対して、各国のシェフをはじめ、味わった人たちから様々な質問があったそうです。塚田さんは今年10月に行われる同大会でも腕をふるいます。
 
音楽から料理の世界へ。舞台は異なりますが、共通していえるのは料理も音楽も国境を越えて人に伝えられるものだということ。料理を通して楽しさや感動を届けられることは塚田さんの喜びであり、また、自身の料理がきっかけとなり、北海道に興味を持ってもらったり、足を運んでもらったりすることにつながっていけばという願いが、塚田さんが国内外で活動する原動力にもなっています。
 
「いろんな人と縁ができて、北海道を発信できるのは幸せなことです」。生産者、活動を共にする人たち。「一緒に生きていける仲間」とのつながりを大事にしながら、食材を前に塚田さんは北海道料理に思案をめぐらせる日々です。
 
 

さっぽろタパス2014

開催日/8月30日(土)~9月4日(木)
専用チケットを使って、札幌の飲食店を食べ歩く人気のイベントです!

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