ニセコ町に有島記念館を訪ねて

 
 
ニセコ町は、「カインの末裔」「生れ出づる悩み」「或る女」など数々の作品を残した、大正時代を代表する作家・有島武郎ゆかりの地。羊蹄山とニセコの山々を見渡す場所に「有島記念館」は佇んでいます。
 
有島武郎は、志賀直哉や武者小路実篤らとともに雑誌「白樺」で活動した作家の1人。東京の裕福な家庭に生まれ育ち、札幌農学校(北海道大学の前身)で学んだ学生時代と、その後母校で教職に就いた時期をあわせ十数年間を北海道で過ごしています。
 
 
 
 
武郎は作家のほか、明治期に父・武が狩太(現・ニセコ町)に拓いた有島農場の不在地主でもありました。のちに自身の思想から、所有していたその広大な農場を土地共有というかたちで農民に無償解放しています。
 
記念館の常設展示室では、出生から青年期、アメリカ留学とヨーロッパを遊学した時代のことや、作家活動、農場解放への道筋などが紹介されています。展示資料を通して、45年という短い生涯を駆け抜けた武郎の、心情や歩みの一端に触れることができました。
 
 
 
 
 
 
ニセコを舞台とした有島作品には、本能のまま生きる農夫の姿を描き、出世作となった「カインの末裔」があります。また、岩内の画家・木田金次郎がモデルの「生れ出づる悩み」、農場所有をめぐる父子の葛藤をテーマとした「親子」なども、この地が舞台になっています。
 
主任学芸員の伊藤さんは、1人でも多くの人に有島作品を読んでほしいといいます。
「『カインの末裔』、『生まれ出づる悩み』、童話の『一房の葡萄』など、原作を下敷きにしたコミック作品が出ていますので、文章が難しく馴染めないという方は、これらのコミック作品から手に取ってみるのもおすすめです」と話してくれました。
 
 
 
 
常設展示室から出ると、ミュージアムショップやリーディングスペースのある、木がふんだんに使われた心地いい空間が広がっています。館内に置かれた机、椅子、棚は、地元や札幌の工房でつくられたものだそうです。
 
 
 
 
 
 
65段ある階段をのぼって展望台へ行ってみると、羊蹄山の姿が見えました。
記念館の周りは公園として整備され、風景を楽しみながら散歩もできます。有島作品を知る人はもちろん、そうではない人も、ニセコの自然のなかで有島武郎の世界に触れてみてはいかがでしょうか。