「函館リトファスゾイレ」で歴史群像を巡る旅

 
 
函館市にある五稜郭は、築造されてから今年で150年。この記念の年を祝い、函館ではいま「HISTORIA HAKODADI(ヒストリア・ハコダディ)」という全体テーマで、市内17カ所の歴史的な見どころで11月初旬までの間、掲示塔による解説が見られます。
 
幕末から明治に函館で活躍した100名余の人びとを、円筒の掲示塔を設置して紹介するこの試みは、ドイツなど欧州でさかんな円筒形掲示塔「リトファスゾイレ:Litfaßsäule」という展示手法を採用。2014年4月に合計30基が設置されました。
 
 
 
 
掲示塔の文章や歴史的な用語を監修したのは、函館市内の専門家のみなさん4名。五稜郭タワー企画室長で学芸員の木村朋希さんが、各人の分野に応じた分担を割り振りして、集まった文章や資料から、函館にまつわるヒストリアに全体をまとめました。デザイン制作の会社や屋外プリント広告の会社など、ほぼ全て函館の“地元力”でつくりあげたのが、この函館リトファスゾイレ。春の大型連休から11月3日までの期間限定ながら、そのクオリティはぜひ、実物を見て感じてほしい完成度です!
 
 
 
 
リトファスゾイレを編集した木村さんがいるのは、五稜郭の傍らにそびえる地上90mの展望台を備えた五稜郭タワー。歴史哲学が専門の木村さんに、リトファスゾイレの制作過程をお聞きしました。
 
 
 
 
「編纂作業は2013年の年末から始まりました。内容的には函館の郷土史の書籍を一冊制作するのとほぼ同じなので、余裕のある準備期間ではなかったですね。箱館戦争、宗教、貿易など内容は多岐にわたりました。執筆した先生方には、専門外の分野まで担当することになり大変だったと思います」(木村さん)。
 
リトファスゾイレの制作が進んだ段階では、どうだったのでしょう。
「内容の工夫としては、歴史上の人物をイメージできるよう写真や肖像画を多く出しました。おかげで私も、人物の顔と名前が覚えられて勉強になりましたね。設置する際には、展示する内容と設置場所との関連性を持たせることにこだわりました。」(木村さん)。このように、多くの人びとの全力投球で掲示塔は完成したのです。
 
 
 
 
風の強い港町函館では、掲示物が痛みやすいのが悩み。今回、およそ半年間設置する掲示塔には耐久性が求められました。五稜郭にある6基はさらに長く、約10ヶ月の間設置されます。そのため仮設ではあっても、円筒には耐水性を持たせたボイド管という工事用の資材を採用しました。
 
 
 
 
 
 
今年は、ペリーが函館に来航して160年。元町のペリー広場で、円筒掲示塔の中央に収まったのは、もちろんペリー提督。左にはプロテスタントの宣教師ハリス、右には元町カトリック教会の初代主任司祭で、宣教師のメルメ・カションを配しています。この広場では、「ペリー来航と箱館開港」、「プロテスタント布教の始まり」、そして「函館とカトリックの出会い」が掲示塔から学べます。まさにヒストリア!
 
 
 
 
どんなテーマで歩くかはその人次第。「人物を通して函館の歴史を概観できる展示がリトファスゾイレです。観光地巡りと併せて、ぜひ函館の歴史と文化の豊かさを知って頂きたいですね」と、木村さん達がお薦めする歴史群像と出会う旅で、新たな函館を発見してみませんか。