2014年06月14日 | 小砂 志津子

世界に一つだけの「君の椅子」

「生まれてくれてありがとう。君の居場所はここにあるからね」。
生まれてきた子どもの誕生を地域で祝い、旭川家具の職人による世界に一つだけの手作りの椅子を贈る「君の椅子プロジェクト」。代表の磯田憲一さんに話を伺ってきました。
 
 

コンセプトは「向こう三軒両隣」

はじまりは2006年。当時、旭川大学大学院で教授をしていた磯田さんのゼミから「誕生する子どもを迎える喜びを地域でわかちあいたい」という思いを込めて、スタートしたプロジェクトです。
 
 
君の椅子プロジェクト
▲年ごとに変わる製作者の思いが、椅子のデザインに反映されている ※写真:飯塚達央(フォトシーズン)
 
 
この考え方に賛同したのが旭川の隣町・東川町。その後、近隣の剣淵(けんぶち)町、愛別(あいべつ)町、東神楽(ひがしかぐら)町、中川町が参加し、5つの町で生まれたすべての子どもに「君の椅子」がプレゼントされています。
 
無垢の木材を使った、職人による手作りの小さな椅子。毎年デザインと制作工房が変わり、それぞれの椅子には、名前、生年月日、ロゴ、一連ナンバーが刻印されます。
 
 
君の椅子プロジェクト
▲名前が刻印された椅子は、毎年子どもと親に直接手渡している
 
 
コンセプトは、「向こう三軒両隣」。
「経済性や利便性だけでなく、地域社会の優しく、柔らかなネットワークを少しでも取り戻していきたい、そのためにひとりひとりがそれぞれに小さな取組みを重ねていく、そんな思いを込めて私達は「君の椅子」プロジェクトを立ち上げ、その一歩を踏み出しました。
北海道の潜在力を活かして地域コミュニティ再生の火を灯す役割を担いたい、それが私達” 君の椅子プロジェクト”の願いです」(君の椅子プロジェクトホームページ引用)
 
 

椅子は思い出の記憶装置

筆者がはじめて「君の椅子」を見た時は、その小ささ、無垢の木材に、生まれたての赤ちゃんと同じような印象を受けました。
つかまったり、座ったり、テーブルにしたり、子どもは椅子とどんな付き合い方をしていくのかな、ヤンチャして傷をたくさんつけるのかもしれない、そんな想像が膨らむ、とても愛らしい椅子です。
 
 
君の椅子プロジェクト
▲椅子と遊ぶ子ども。何を見ているの? ※写真:飯塚達央(フォトシーズン)
 
 
子どもにとって、椅子はどのような存在になっていくのでしょうか。
 
「私は思い出の記憶装置だと思っています。一生モノとして使うことのできる旭川家具の椅子は、50年後、100年後まで、その人の生きてきた物語を刻み込んでいくことができます。
今の世の中はモノがあふれているけれど、古くなれば新しいものに買い替える使い捨ての時代。でもこの椅子は一生残せる。そして、それを自分の子への愛情の証として引き継いでいくこともできます」
 
 
君の椅子プロジェクト
▲手ざわりや座り心地はいかが? ※写真:飯塚達央(フォトシーズン)
 
 
時間を積み上げていく価値を思い起こさせてくれる「君の椅子」。
一方で、磯田さんはこのようなお話をしてくれました。
 
「子どもは大きくなるにつれて椅子の存在を忘れてしまうかもしれない。でも、それでいいのです。その子がいつか人生の途上で、自分が生まれた時に誕生を喜んでくれた証の椅子なのだと気づいてくれたら、それで良いと思っています。子どもは椅子を忘れても、椅子は子どもを忘れません」
 
 
君の椅子プロジェクト
▲「君の椅子プロジェクト」代表の磯田憲一さん
 
 
子どもにそっと寄り添う「君の椅子」は親の姿にも重なります。
地域から贈られる「君の椅子」は愛情の証であり、「生まれてくれてありがとう。君の居場所はここにあるからね」という言葉は、親の気持ちを代弁しているのですね。
 
 

3月11日に生まれた君へ「希望の君の椅子」

未曽有の大災害となった東日本大震災。磯田さんは、東北3県で2011年3月11日に生まれた子ども104名へ、「君の椅子」を「希望の君の椅子」として贈っています。経験したことのない大混乱の中で生まれた子どもたち。福島、岩手、宮城、北海道の新聞社による合同出版『3.11に生まれた君へ』という本では、「希望の君の椅子」を受け取った子どものお父さん、お母さんによる手記がまとめられています。生まれる前後の出来事と、子どもの誕生を祝って良いのかという葛藤、希望の椅子を贈られて、はじめて誕生を喜んで良いのだという率直な言葉、周囲への感謝の言葉が多数寄せられています。
機会があれば、一度手にとってみてはいかがでしょうか。
この本を読むと、子どもの誕生がいかに奇跡的なことなのか、また「君の椅子プロジェクト」の持つ温かさが、とても素直に心の中に入ってきます。
 
 
君の椅子プロジェクト
▲31の命の物語が綴られている『3.11に生まれた君へ』
 
 

広がりを見せる「君の椅子」

無償の愛情の証である椅子に、子どもの物語が刻まれていく。
北海道から始まった、愛情をバトンリレーしていく「君の椅子プロジェクト」。
旭川周辺の町を中心に広がりを見せ、地場産業である旭川家具を後押ししながら、家族、地域の人々、職人の思いが込められた、手作りの椅子が贈り届けられています。
 
2009年には、個人で参加したいという、全国各地の声に応えて「君の椅子倶楽部」という活動もスタートしました。
 
 
君の椅子プロジェクト
▲毎年旭川美術館で行われている贈呈式で「君の椅子」を手にする親子 ※写真:君の椅子プロジェクト
 
 
旭川で開催される「国際家具デザインフェア旭川2014(IFDA)」の「君の椅子展」では、歴代の椅子が展示されます。
 
 

国際家具デザインフェア旭川2014 君の椅子展

●開催日 / 2014年6月18日(水)~22日(日)
●開催時間 / 9:00~18:00
●入場料 / 無料
●場所 / 旭川家具センター(旭川市永山2条10丁目1-35)
●TEL / 0166-48-4135
 
また、札幌市内の「君の椅子工房学舎」でも歴代の「君の椅子」を見ることができます。
興味のある方は、足を運んでみてはいかがでしょうか。

 
君の椅子プロジェクト
▲「君の椅子工房学舎」では、年ごとのデザイナーと作り手の紹介もしている
 
 

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