えりもの自然に触れる旅!エゾシカの角拾いツアー

エゾシカの角を拾って畜産農家を助けるというユニークなツアーが、5月えりも町で開かれています!年1回、わずか20人しか体験できない旅は、どんな人達がつくっているのか。この5月5〜6日にかけて開催した、第9回「えりも・エゾシカ角拾いボランティア2014」の様子をご紹介します。
 
 
 
 

悩みをイベントに変えた「シカ角拾い」

「襟裳の春は 何もない春です」というサビが有名な名曲「襟裳岬」はリリースから今年、40年だそうです。えりもの春は、何もない?いいえ、ここでしか体験できない魅力がいっぱい!今回のツアーは札幌市を中心に男女合わせて23名、6人の大家族や夫婦連れなど、幅広い年代の人が参加しました。
 
 
 
 
初日は、えりも町郷土資料館に昼食を済ませて集合。地元側のスタッフを紹介し、畜産農家で昆布漁も営む佐々木克也さん達が、催しの全般をレクチャーします。オスエゾシカの角は毎年生えかわり、町の採草地に現れた際、自然に落としていくことがあります。この“置き土産”によるトラクターの故障がしばしば起き、農家の悩みの種でした。そこで、「旅行を絡めて課題解決を町の外の人に手伝ってもらおう!」というユニークな発想が生まれたのです。
 
 
 
 
一行は装備を調えて郷土資料館から車で移動し、今回の目玉プログラム、エゾシカの角拾いに出発。えりも岬の先端を遠くに見渡せる、海沿いの牧草地と、山の麓という2箇所の町営牧草地を合わせた広さは約40haと広大。当日の天候を考慮して主催者が案内します。
 
牧草地に降り立った一行に語る佐々木さん。「いまは、春の有害駆除が解禁されて、警戒したエゾシカは牧草地には出て来ていないです。遠くの山にはシカの姿を見つけることもあります」。角拾いの日はシカ猟のない日とし、万一はぐれた際の対応など、さまざまな安全対策を講じています。歩く際に気をつけるべき、いくつかの注意事項を聞いたのち、参加者は思い思いに散り、シカ角を探し歩きます。

 

奇特な人が・・・いた!

このボランティアツアーは、ひょんなきっかけで始まりました。2006(平成18)年頃、札幌の環境市民団体「エコ・ネットワーク」の代表を務める小川さんが来町した際に、佐々木さんが、「牧草地に落ちているシカ角を誤ってトラクターで踏むと、タイヤはパンクではなくバーストしてしまうんです。そうなるとタイヤは修理でなく部品を取り寄せて交換です。注文しても2~3日は来ないのが私たちの困りごとなんです」と、小川さんに話しました。すると「そんなに拾えるものなら、札幌の人が喜んでシカ角を拾いに来ますよ!」と、意外にポジティブな意見を得ました。「まさか!?そんなものを拾いに来る奇特な人がいるなんて・・・」えりも町の人びとは皆、半信半疑でした。
 
 
 
 
そんな中で佐々木さんや町職員の石川慎也さん、町の学芸員の中岡利泰さん達、地元の異業種メンバーは「畜産農家の困りごとは、見方を変えればこの町でしか経験できない観光のテーマでは?」と発想。町外の人と力を合わせ、えりもらしさを凝縮した課題解決型の体験ツアーを、エコ・ネットワークと協力して開催。わずか数ヶ月の間に企画・実施した1泊2日の旅が、えりも町を知らない人に大好評。それ以来、毎年開催されています。
 
 
 
 
 
 
 
 
えりも町ではシカ角という“痕跡”探しですが、エゾシカは近年、頭数の増加に対し適正な管理の手法が議論されている、道内ほとんどの地域が直面する課題なのです。シカ角を通してえりも町を体験するツアーの開催で、参加者が変わる様子を見てきたひとり、中岡さん。「始めた当初、参加者の皆さんは、本当に角が拾えるのか半信半疑で参加していました。インターネットなどで角を拾った写真が紹介されることで知られていき、今では『拾うぞ~』って気持ちで牧草地を歩きはじめます。しかし歩いても、探しても、なかなか見つからない。そこでシカ角を見つけた時の喜びは、人を心豊かにします」と、学芸員の立場でサポートを続ける中で見た、参加者の変化を話してくださいました。
 
さらに「海と山が近いえりもで、海岸線からコンブ干場、住宅、牧草地から山に続く風景は、江戸時代からえりもで暮らしてきた人びとの歴史そのものです。コンブの凶漁対策として導入されたのが、いまではブランド和牛となった短角牛で、それを放牧していた放牧地が、角拾いの現場です。日頃歩くことができない広い牧草地、広がる水平線、角を探しながらの解放感たっぷりのウォークは、人を開放的にします。そして夜の交流会には、その時々の料理を皆で味わう。角拾いは、えりもの自然や歴史文化などすべてを伝える一つの手段です」(中岡さん)。
参加者を見守る側も感動を共有できる、すばらしい発見の2日間、それがシカ角拾いツアーです。
 
 
 
 
拾ったシカ角は車に積み、一行は牧草地を後に。シカ角は翌日のワークの材料となります。牧草地を歩き、手を動かしてお腹を空かせた一行はお宿に移動。笑いが絶えない“かあさん”こと仙庭加容子さんの民宿「仙庭」で1泊。この夜は主催側と参加者が交流会として食事を共にします。定番のジンギスカンにシカ肉も加えて焼き、いまが旬の山菜や、佐々木さん宅のツブ貝料理、石川さん宅から“ふのり”サラダなど、地元の家々から持ち寄り料理が加わり、豊かな海と山の幸が体に浸みわたりました。
 
 
 
 

エゾシカを楽しみに変えた2日間

翌日は朝の8時から2時間、牧草地の場所を変えて引き続きシカ角探しに。新たに得た“収穫”を郷土資料館に持ち帰り、手作りアクセサリーのワークの始まりです。札幌市内の中学校教諭で美術を教える宮崎亨さんが、シカ角を使った小物づくりを指南。角をのこぎりで適当な大きさに切り、やすりでツルツルに研磨します。ドリルで穴をあけると、約1時間で素敵なアクセサリーが完成。思い出の詰まったお土産になりました。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

「近くて大好きな町」に

ほのぼのとした雰囲気で、シカ角拾いボランティアツアーを終え、今回の参加者には佐々木さんから「私の家は畜産と昆布漁をしていて、昨日の晩、家に昆布があったので1本ずつ持って帰ってください」との一言とともに日高昆布のお土産が、皆に渡されました。
 
地元の人からえりも町のくらしを直接体験するツアーは、参加した皆が仲良くなりそうな雰囲気。これまで遠くに感じていたえりも町が、シカ角拾いを体験することで、きっと、身近で大好きな町になることでしょう。