花マップを手に、庭のまち恵庭の庭めぐり

北海道の恵庭市(えにわし)では、個人のお宅の庭を訪問者に開くユニークなまちづくりに取り組んでいます。「恵庭」の名にピッタリのオープンガーデン。花の香そよぐまちに住む、庭を愛する人に会いに出かけました。
 
 
 
 

 
恵庭市はおよそ6万9千人のまちで札幌市に近く、ベッドタウンにもなっています。今回ご紹介するのは、ニュータウン恵み野。ここの庭づくりがさかんで、毎年6月下旬から8月上旬の期間、庭を見に来る人に住民が「オープンガーデン」として、自宅の庭を開いています。素敵なお庭の数々をご覧ください!
 
 
 
 

 

恵庭流のオープンガーデン

お会いしたのは内倉真裕美さん。コーヒーが人気の「花カフェきゃろっと」を経営し、恵庭の庭づくりにかかわる仕掛け人のひとりです。庭を活かしたまちづくりは、いまから約30年前に市民主体で始まりました。
 
 

 
花苗の産地である恵庭市は昔からよい花が手に入り、広い庭を持つ家々がありました。「恵庭市は英訳すると“ガーデンシティ”。まちづくりはクライストチャーチ市から学ぶべき」と景観の専門家から助言を1990(平成2)年に受け、市民は庭を活かしたまちづくり活動を開始。“お手本”の景観であるニュージーランド南島を1991(平成3)年、有志で視察。その報告会で見た美しい庭が醸す景観に、内倉さんは「これだ!」と感動し、仲間とともに活動に邁進しました。
 
 
 
 
その1つが「フラワーガーデンコンテスト」。内倉さんら有志が市内の家々を見て歩き、道路から眺めて美しい庭を選び、勝手に表彰してしまうもの。そんな素朴なコンテストを12回続ける間に、花がきれいな家々を紹介したマップが必要との声が出ました。手づくりで始めたマップの作成は、後に行政の支援で「恵み野花マップ」に整えられました。いま恵庭市に根付くオープンガーデンは、市民の創意工夫の歴史と「庭を公開していいですよ」という人びとの厚意でなりたっているのです。

 

住んで実感。恵庭の豊かさ

オープンガーデンで庭を開く初夏に美しい庭が多く見られる地区、ニュータウン恵み野は1980年代に分譲を開始。1区画100坪前後という広さや、交通の利便性や景観から人気の住宅地に。東京都新宿区から移り住んだ池田政勝さん・律子さん夫妻に、花のまちに来た経緯を聞きました。
 
「老後に家を建てるため、妻は私の退職前から北海道の不動産情報を集めていました。新千歳空港や札幌からの近さと、駅徒歩10分内の距離、広い敷地に3辺が道路の角地を1983(昭和58)年に発見。手付金を打ち『お父さん土地を買うけどいい?』と、私に電話して決めたのが恵み野とのご縁です」(政勝さん)。
 
 
 
 
「私たちは道産子ですが、北海道に戻った当時は寒さや不便さばかり感じました。でも『住めば都』で、病院があり雪が少なく、立派な図書館や買物も近所で揃うなど、便利が不便さを上回りました。何よりも庭を通して多くの人と知り合って以降、まちのよさに気づき、毎日楽しく過ごしています」(政勝さん)。
 
 
 
 
「バラをつくる池田さんの姿勢には感心します。かけた年月で知識や技術は上がるのではなく、真摯に取り組むと短期でも上達はあっという間。彼のバラ講習は本当に楽しいですよ」と内倉さん。「バラの喜びはかけた手間以上に咲いてくれること。我が家は昨年、期間中に約2千人が訪れてくれました」と政勝さん。お庭談義は尽きません。

 

庭を通して人とつながる

2千もの人が訪れたという池田邸へ。バラにいまは魅了されている政勝さんですが、以前は違いました。退職してまず目についたのは、庭の貧弱さ。そこで庭業者に見積をとると200万円もの回答が。「時間はたっぷりあるんだからお前がやればいいべさ」という級友の言葉で、庭の造成に着手。経験ゼロの状態からわずか3年で、池田邸は近所で評判の庭になりました。
 
「登下校する小学生から『今年もバラが咲くの?』、『おじさんバラがとても綺麗だね!』など、たくさん声を掛けられます。子供達に背中を押されて庭作りに励んでおり、庭木の相談やバラ作りを通して、人や地域とのつながりを大切にしています」(政勝さん)。
 
 
 
 
庭を通した交流の主旨に賛同し、無理なくできる公開度合いとして「庭のきれいな家」を示す「花印」をマップ上に入れて、6シーズン目を迎える池田邸。「私たちが留守の時に人が見に来ることも。そういう時も『庭主はいませんが、見ていってください』と、ご近所の人に声がけを頼んでいます」とのこと。池田夫妻のおもてなしに、恵庭市に住む人の温かさを感じます。
 
 
 
 

次世代育つ、花のまち

恵庭市民が30年以上続けてきた、庭を活かしたまちづくりは、今後も続くのでしょうか。内倉さんは言います「“庭のまち”だとことさら教えなくても、子供は感じるようです。学校の作文には『ごみを拾って恵庭を花の咲くきれいなまちにしたい』といった文章を寄せる子が多数います」。将来を担う世代が育っているようです。
 
十人十色、庭主さんが丹精したお庭をのんびり拝見する1日。「こんにちは」の挨拶と、拝見後のお礼の言葉を添えて、さわやかな日差しのなか庭めぐりを楽しんでください!
 
 



ガーデン拝見のお願い

公開するのは全て一般家庭のお庭です。家人が時間をかけ大切に育てた、かけがえのない庭です。庭主さんに会ったらまずご挨拶を。拝見をお願いすると庭に入れていただけることもあるでしょう。思いやりの気持ちで庭めぐりを楽しんでください。

★花とくらすまち恵庭(恵庭市の紹介映像)



★恵庭市ホームページ(花マップPDFあり)

http://www.city.eniwa.hokkaido.jp/www/contents/1365646982923/index.html