牛乳で育つ上しょこつ豚。みるとんはうすの商品づくり

モール温泉水や牛乳の副産物ホエーを飲ませて肥育した豚はあれど、北海道に牛乳で育つ豚がいることをご存知ですか?それが紋別で生産する、上しょこつ豚。酪農をベースに、自家原料を使った商品をつくる「喜多牧場みるとんはうす」に出かけました。
 
 
 
 

牛舎で豚を飼ってみよう

牛乳(ミルク)で育った豚(トン)を提供する意味を込め、2013(平成13)年5月、紋別市上渚滑(かみしょこつ)に開店した直営店が、みるとんはうす。その母体である喜多牧場は母牛と子牛およそ780頭を飼育する、大規模経営の酪農家です。代表の喜多俊晴さんと共に商品を企画する、妻の由美さんに案内していただきました。
 
 
 
 
喜多牧場では、乳牛に加えてオホーツク地域では珍しい豚の飼養に2009(平成21)年から挑戦。先行するブランド豚との違いを示すために打ち出したのは「豚に牛乳を与えて育てる」という、ほとんど例のない試みでした。
 
出産後の母牛から出る初乳は、栄養価がいかに高くても、生乳の出荷ルールに基づくと分娩後5日間は“規格外”になります。また、規格に問題がなくても生産調整で出荷できない生乳も発生します。こうした、従来は廃棄せざるを得なかったものを「資源」と捉えなおし、有効に活用しました。「豚を飼った経験はないけど、やれるかも」と発想した喜多さん夫妻の行動力と、多様な人を巻き込む力が結実した商品、それが上しょこつ豚です。
 
 
 
 
特別に牛舎を案内していただきました。目に飛び込むのは200mもの長~い直線牛舎!「融資を受けては次々と建て増しした結果です」と苦笑する由美さん。遠くの牛が小さく見えて圧巻の光景です。牛の後脚に付けた計器からは、運動量や体調が事務所のパソコンに送信され、乳量などを個別に管理。搾乳したての新鮮な生乳で牛乳やソフトクリーム、チーズをつくり販売しています。
 
 
 
 
4年前、喜多牧場は別棟の牛舎の一部を利用して、屋外に電牧柵を張っただけのスペースで、養豚に初挑戦。豚の飼育には通常、体調維持にビタミン剤や抗生物質が使われるといいます。牛の専門獣医からは「豚は弱いよ。飼って病気になってもうちは診ないよ」と脅かされつつのスタートでした。豚たちは夏季は屋外を、冬季は広い豚舎内を走り回り、意外にもストレスフリー。デントコーンサイレージに牛の乳を混ぜたエサを食べること半年。病気知らずの健康体に育ったのでした。
 
喜多牧場ではみるとんはうすの店舗の在庫をみながら、肥育基準に達した個体から豚を出荷します。東藻琴(ひがしもこと)の施設でと畜し、再び届いた枝肉を自社で加工して店頭販売しています。この牛乳で育てた上しょこつ豚が、いま紋別近隣のお客様に大好評。
 
 
 
 

生産地で味わう喜び

豚舎から店舗に移動して、次はお味見を。直販ショップみるとんはうすでは、ランチやスイーツに、自社の牛豚肉、乳製品を使用します。豚肉の赤身は歯ごたえと野生を感じる味があり、脂身は逆にとろけるような上品な軽さを感じます。ソフトクリームも好評で、原料は生乳とグラニュー糖のみ。粘りの少なさはイタリア・カルピジャーニ社のフリーザーの性能で解消し、機械から巻き取られるソフトクリームは、夏の和菓子のようなサラリとした甘さ、のどごし。
 
 
 
 
 
 

発想は、シンプル&身の丈

喜多牧場は大規模経営でありながら、身の丈にあった工夫で6次化農業に挑戦しています。その発端は、東京農大オホーツクキャンパス「オホーツクものづくり・ビジネス地域創成塾」の新聞告知。記事を見つけた由美さんが申し込み、マーケティングなどの商品づくりの知識を学び、多様な人脈につながることができました。「道や農協や国は農業の6次化というと、とかく大規模化を薦めます。それでは借入金の返済で経営は苦しくなるばかり。うちは逆の発想で小さく商品化しました。『余ったら自分たちで食べればいいしょー』って感じです」。
 
 
 
 
 
 
由美さんは語ります。「酪農1本だった頃は事務と子育てが私の役割でした。大規模化すると、牛舎は機械がわりに牛が並ぶ“工場”のようで、子供4人には機械に近寄らないよう注意するばかり。家が酪農家なのに充分動物に触れさせられませんでした。いまは豚を育て商品を直接販売することで、お客様に売るために生きた豚を出荷する意味を、子供なりに学んでいるようです」。
 
 
 
 
工夫によって資源をムダなくいかした、喜多牧場の良質な生乳とお肉を原料に、みるとんはうすは、魅力ある製品づくりに挑戦しています。
 
 
 
 
※本記事で紹介した商品は、取材時(2014年2月22日)現在の価格です