2014年03月23日 | 宮永 明子

日本の家具業界の先端を走る男の次なる夢 カンディハウス創業者、長原實

株式会社カンディハウス 「ボルス リビング 3Pソファー」
▲「ボルス リビング 3Pソファー」
 
 
大雪山の豊富な木材資源を活用し、家具の一大産地として栄えた旭川。今年は3年に一度の「IFDA 国際家具デザインフェア旭川 2014」が開催されます。その旭川市に本社を構え、国内外で人気を博している総合家具メーカー株式会社カンディハウスの創業者、長原實さんに、これまでのこと、そして、これからの夢について話を伺いました。
 
 

ヨーロッパ修業のときのこと

日本の家具業界の先端を走る長原さんは、1950年から旭川で家具産業に携わり、1963年に旭川市海外派遣技術研修生としてヨーロッパに滞在。ローゼンハイムのドイツ国立木材技術大学聴講生となりました。
 
 
株式会社カンディハウスの創業者、長原 實 国際家具デザインフェア旭川開催委員会会長
▲長原 實。1935年北海道生まれ。現在は取締役相談役。国際家具デザインフェア旭川開催委員会会長も務めています
 
 
- まず、ヨーロッパでの家具づくりの修業の中で、学んだことは何ですか?
 
「いくつかあります。特にドイツの産業構造の中に『産業革命』の思想が進んでいたこと。一方、スウェーデン、デンマーク、フィンランドなどの北欧では、むしろドイツとは真逆。大量生産ではなく、手工芸的な家具や日用品の美しさ・品質が非常に重視されていた。そこで、私はものづくりの面では、北欧の方が日本人の感性にあっている印象を受けました。いずれにしても、デザインの面で、ヨーロッパが日本よりも20年は先に行っているなと。これが一つ大きなことでした」。
 
「そして、デンマークの工場で、北海道産のミズナラで作られた家具を世界で販売しているという事実を知りました。北海道のミズナラが、ヨーロッパで椅子となって、日本に輸入されているという現象を目の当たりにして、大きな屈辱感を味わったのです。北海道で、ミズナラを家具として最終製品まで加工し、世界に輸出すれば、4~5倍の付加価値がつきます」。
 
 
株式会社カンディハウスの創業者 長原 實
▲ヨーロッパでは家具工場3社で実習。帰国後に、現在のカンディハウスとなるインテリアセンターを起こしました
 
 
- そこで、北海道産の木材を使い、北欧風のデザインを取り入れ、家具をつくるに至ったわけですね。
 
「時間が経つに連れ、その屈辱感が使命感のようなものに変わりました。ヨーロッパでドイツ、スペイン、イタリアなど、多国籍な中で職人として一緒に働きました。その中で感じたのは、ものをつくるという手工芸的な技術に関しては、日本人はやはり優れているということ。日本的な器用さ・感性とヨーロッパの産業革命思想を協和させれば、おそらく世界一の家具がつくれるだろうと。その材料が北海道にある。こんな条件が揃っているということは、これは北海道も見捨てたものじゃない、私のライフワークだと思えてきました」。
 
 
株式会社カンディハウス 「ルントオム」シリーズ
▲40年以上、販売しているベストセラー「ルントオム」シリーズ
 
 

全国各地から、「ものづくりをしたい!」と集まってくる若者たち

- 旭川の家具職人やデザイナーを育てる活動も行っているんですよね。
 
「今、旭川の家具工場・工房は、クラフト・日用品も含めて、100カ所ほどあります。そこへ全国各地から旭川でものづくりをしたい、修業をしたいと若者たちが集まってきます。彼らに、ものづくりには創造力が必要で、創造することでものづくりの未来があるということを、私なりに教えています」。
 
 
株式会社カンディハウス 「FAQ チェアー」
▲国際家具デザインコンペティション旭川2011の応募作を製品化した「FAQ チェアー」
 
 
- 旭川に家具やクラフトを作る人が集まるのは、やはり、旭川で国際的な家具のイベントが開かれていることも影響しているんでしょうね。
 
「今年6月に、9回目となる「IFDA 国際家具デザインフェア旭川 2014」が開催されます。3年ごとに30年近く行われていて、世界的にも知名度があります。また、旭川に東海大学芸術工学部(※)があり、そこの特任教授、織田憲嗣さんが、かれこれ40年以上、世界の椅子をコレクションしています。この『織田コレクション』も地域に根ざしていて、旭川家具のイメージを作るのに大きな役割を果たしています。それらが重なって、旭川に、ものづくりをしたい若者が集まってくる傾向があります」。
 
 
株式会社カンディハウス 「ソリ ロッカー」 
▲IFDA1993の受賞作品を製品化。「ソリ ロッカー」(札幌スタイル認定製品)
 
 
- 家具づくりだけではなくて、植林を行っているそうですね。
 
「大量生産、大量消費、大量廃棄では、100年後200年後の地球はもたくなる。ですから、地球、あるいは地域(北海道)を守るということは、自然を守ることなのだと気づきました。北海道の森林も成長の速い樹木だけではなく、成長は遅いけれども、もっと大きな価値を持っている広葉樹を増やすことで、自然に北海道に育っていた樹林のバランスを取り戻したいわけです。それはサスティナビリティ、持続できる環境を守ることになります。もっと我々は謙虚にならなきゃいけないということを主張しているつもりです」。
 
 
株式会社カンディハウス 旭川の森林
▲森林を含む自然は私たちの宝物。自然に北海道に育っていた樹林のバランスを取り戻したい
 
 
- 自然と共生しながら、良い家具を作り続けて行きたいと。それが、長原さんが作られた「旭川・家具づくりびと憲章」に繋がるわけですね。

「そうです、今の考え方から、派生して作ったものです。人が喜ぶものをつくる、木の命を無駄にしない、高品質なものを必要なぶんだけつくる、修理して使い続けられるようにする、次代の家具づくりびとを育てる、というものです」。

 
株式会社カンディハウス 「レストア」 
▲修理・再生するサービス「レストア」
 
 
「この考え方を具体化した取り組みをカンディハウスで行っています。修理・再生するサービス『レストア』と、お客さんが使わなくなったユーズド製品の引き取り・買い取りを行い、修理・再生して『ヴィンテージ家具』として販売する事業です。今、その中でも、創業して初めて製品化した椅子『ロカール』を探す面白いプロジェクトがあります。カンディハウスの第一号製品を使い続けているユーザーの方を探しています。もう45年も前のことですが、わずか2年間で100脚程度しかつくらなかったし、売り先はほとんど東京というものです。とても思い入れのある製品を所有している方を探し出せるかどうか・・・」。
 
 
株式会社カンディハウス 第一号製品「ロカール」
▲現在、社内資料として一脚だけ保管されている第一号製品「ロカール」と長原さん
 
 
- 長原さんが中心になって旭川に公立ものづくり大学を開設する準備を行っているそうですね。
 
「先程の話にでましたが、残念ながら40年間、旭川にあった東海大学の芸術工学部が、今年4月から札幌キャンパスに移り、旭川キャンパスはその役割を終えます。このことに対して行政も少子高齢化・財政難の時代だからということを理由に見逃しているような状況です。これは地域の未来にとっては大きな損失になります。未来を担う青年たちが流出することを食い止めながら、国内はもちろん、世界中から若者を集めて、新しい時代の教育を施す、これはきわめて創造的な教育です。これを北海道旭川で、引き続き、進めなければ、この地域の未来はないと言いたいのです。少子化だからこそ、個人のスキルを高めていかなければと思っています。そのための大学です。是非、実現したいと考えています」。

 
- 半世紀以上、家具づくりに携わってきた長原さん。その時代の流れを読み、何が必要なのか見極め、常にトップランナーであり続けてきました。「旭川に公立ものづくり大学を開設」という、次なる夢の実現に向けて、これからも走り続けます。
 
 
株式会社カンディハウス 長原實 旭川 公立ものづくり大学開設
▲家具業界の先端を走り続ける長原さんの次なる夢は旭川に公立のものづくり大学を開設すること
 
※芸術工学部は2012年度より学生募集を停止し、国際文化学部に「デザイン文化学科」を開設
 
 

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宮永 明子

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