情熱の仕事人。おいしい料理をつくる“人”に魅せられて。料理評論家「山本益博」

東京生まれ下町育ち。中学2年生からクラシック音楽を聴き始め、大学ノートに綴った感想は卒業までに1,500曲分。高校と予備校時代を札幌で過ごし、早稲田大学第二文学部へ。時は大学紛争の真っ只中。授業が休講になっていた大学には足を向けず、寄席に通い落語に没頭する日々。卒業論文も落語家をテーマに書き上げました。この卒論が1冊の本として出版され、著述デビュー作に。評論家の仕事は、落語・演芸評論からのスタートでした。
食べものにも興味があったマスヒロさん。“思い込んだら、とことん”。そのパワフルな探究心は、食の世界にも向けられていったのです。
 
 
 
 

1982年「東京・味のグランプリ」を出版。料理の評論活動へ

親の仕事の関係で、高校2年の3学期に札幌に来て札幌東高校に編入しました。予備校の1年間も過ごした札幌は第二の故郷です。それまで僕は、東京の下町しか知らずにいました。札幌は、大らか。東京とは人の歩く速度から違って、僕は前の人をどんどん追い抜いちゃう(笑)。食べものもこんなにおいしいのかと、感じました。高校、予備校を休んで、狸小路の映画館にもよく行きましたね。
 
大学で東京に戻り、次は下宿生活。東京生まれ下町育ちの僕は、小さい頃からお寿司、そば、てんぷら、うなぎといったものを食べてきました。それで周りからおいしいお店はどこかと聞かれるんです。「お寿司ならここが日本一」と答えていたんですが、「あれ、自分はそこしか知らないな?よし、お金を貯めて東京中の名立たるお寿司屋さんで食べてやるぞ」と(笑)。
その後、当時3冊しかなかった東京のタウン誌からお寿司屋さんを100件リストアップして、全部食べてまわりました。
 
今から32年前、1982年に「東京・味のグランプリ」という本を出しました。その頃、食べることを専門にするという人はいませんでした。
その本の中で「すきやばし次郎」(銀座の寿司店)を紹介しました。そこに「まぐろもおいしいけれど、とりわけひらめがおいしい。まぐろの後にひらめが出てくるのはもったいない」といったことを書いたら、ご主人の小野二郎さんが白身から出すようになったんです。今はどこのお寿司屋さんでも白身から握りますね。料理評論家は提言をすることも大事だと思っています。
 
 
 
 

食べる情熱の行き先は、“人”。

僕は料理をつくる人のほうに興味があって、その人の料理だから食べに行きたい。つくる人の哲学、経験、感性から学べることがあったらいいなあと。フランス料理だと、メニューを開いてまず、シェフは何才くらいか、どこで勉強した人なのかが気になる。“人食い人種”ですね(笑)。
 
最近は、若いシェフのところに行っています。特に初めてのレストランに出かける前は、どんな料理が出てくるだろうと、遠足前の小学生のわくわくと、大学受験を控えた高校生のドキドキする気持ちが入り交じった心境になります。僕は若い才能の第一発見者になりたいと思っているんです。大事なこととして、その才能を引っぱりあげることをやっていきたい。若い人には味方が必要です。40年間でフランス料理を5000回食べてきましたが、新しいことを学び続けたいですし、若い人から学びたいんです。
 
僕は人の才能に憧れます。料理人の気持ちにどうやったら到達できるだろうかと考え、食べて見えてくるその人の内側を書いて伝えたいんです。
実は僕が原稿を一番読んでもらいたいのは、料理人。「私はこう感じています」と、ラブレターをおくりたいんです。料理人に真摯なラブレターを書きたい。だから誰よりも食べて勉強も経験も積まなくてはなりません。
 
 
 
 

「どういう食べ方をするかが大事。食べる人、もっとガンバレ」

札幌ワインスクールでは、ワインは食卓の上で料理といただくには欠かせない飲みものであることを、これまでの経験を生かしてお伝えできたらと思っています。僕もまた、一緒に勉強していきたいと思っています。
2ヶ月に一度は札幌に来ますので、こちらでも若い人の料理をいただくのが楽しみですね。
 
北海道は食材に恵まれた土地。料理人の食材への敬意は伝わってきますが、食材に対する探究心がもっとあってもいいかなと感じています。つくる人が一生懸命でも、食べる人はどうでしょうか。料理はどういう食べ方をするかが大事。皿には料理人の経験や感性が現れます。おいしいものを食べて満足するんじゃなく、料理人が何を表現しようとしているのか?それを考えて食べてほしいんです。食べる人、もっとガンバレって思います。
 
僕は仲間と食べるときは、4人なら4人が同じメニューを取ります。別々なものを頼むと、厨房でいくつ鍋を動かさなくちゃいけないか?大変です。分け合って少しずつ食べても心に残らない。結局、何を食べたかわからなくなっちゃう。つくる人の気持ちを食べるなら同じものをいただきましょうと。
そして同じものを食べて、誰かが「おいしいね」と言ったら、「おいしい!おいしい!」の大合唱が始まるの。同じものを食べるから「おいしい」を分かち合えます。
おいしいものを食べるよりも、おいしく食べたい。「マスヒロさんと一緒に食べるとおいしい」といわれるのが、僕は一番うれしいんです。
 
 
 
 

山本益博さん オフィシャルブログ「マスヒロの食日記」

http://msh.weblogs.jp/season/
 

札幌ワインスクール

シニアワインアドバイザー中村雅人さんをはじめ、第一線で活躍中の講師陣が講義を担当。ワインの楽しく奥深い世界に出会えます。次期開講4月~9月(週1回6ヶ月間)。講座にはディナー会(2回)も組み込まれています。
http://www.sapporowine.com/
 
 
☆あるた出版 札幌を楽しむための情報誌「O.tone(オトン)」vol.64にも、山本益博さんのインタビュー記事が掲載されています。3月14日まで書店にて発売中!
http://www.alter.co.jp/