2012年08月17日 | 北海道Likersライター Manamin(亜璃西社)

木の皮を集める/アイヌ四季の暮らし(2)

夏の初め、コタン(村)の女たちは畑の草取りの合間、シナノキの樹皮をあつめるために山に入ります。正確には内皮(ないひ、表皮の内側の皮)で、これを加工して糸をつくり、布を織ったり袋を編んだりしていました。

 
内皮(ないひ、表皮の内側の皮)で、これを加工して糸をつくり、布を織ったり袋を編んだりしていました。

 
山に出かける前は、炉の前に座って木の皮をとりに行くことを告げ、火の神に祈ります。これは火の神を通して、山の神と木の神にこれから山に行くことを伝えてもらうためです。
 
山に入り、幹の直径が15~20cm程度でまっすぐに伸びたシナノキを見つけたら、まず根元にお酒を捧げます。そして「木の神様。火の神様を通じて頼んでいますが、あなたの着物を少しいただかせてください。その代わり、これを差し上げます」と言って、ごはんやタバコを供えます。
 
次に、幹の下側に刃物で傷をつけ、梢に向かって皮をはぎとります。この時、全部の皮ははぎません。3分1ほどはいだら、木が枯れずに再生することと、着物の一部を与えてくれた木の神へ感謝を込めて、はいだ皮の一部を帯のようにして幹にしばりつけます。
 
はぎ取った木の皮は、その場で表面の固い皮を取り除き、柔らかい内皮だけを持ち帰ります。それを、あれば温泉、なければ沼や池に重しをして沈めておきます。1~3週間後、木の皮を固めている成分が水に溶けて7、8枚に分かれるようになったら、川できれいに洗って乾燥させます。これで、ニペシ(シナノキの皮)の完成です。

 
川できれいに洗って乾燥させます

 
こうして春から夏にかけて採集・加工したニペシは、乾燥して保存しておきます。そして冬、男たちが狩りに行っている間に、女たちはこれを薄くはぎ分け、細く裂いて糸により、布を織ったり袋を編んだりするのです。
 
実はオヒョウの木の皮も同じように利用できるのですが、採集するのは春先です。木の皮は、樹液の流れがもっとも活発なときにはぎやすく、その時期がシナノキとオヒョウで異なるのです。アッ(オヒョウの木の皮)を使ってつくられるのは、アイヌの伝統的な民族衣装・アツシ(厚司)で、厚別(札幌市)、厚田(石狩市)、厚床(根室市)などの地名はこれにちなんだものです。

 
切り絵 かじさやか
▲切り絵 かじさやか


*記事は『北の彩時記―アイヌの世界へ』(計良光範著、コモンズ刊)をもとに作成。
*かじさやかのHP

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