札幌の冬の風物詩、札幌市電「ササラ電車」の秘密

積雪量が多い札幌には欠かせない、札幌市電のササラ電車。車両の前後に取りつけられた竹のササラを回転させ、線路上の雪をけ散らしながら走ります。約90年前から変わらず続く伝統の除雪方法、その秘密に迫ります。
 
 
 
 
ササラとは「茶せん」や「竹ブラシ」のように竹を細く裂いてできた円筒形の束のこと。
この竹の束を電車の前後に大量に取りつけ、車輪と逆回転させることで雪を跳ね飛ばしながら走ります。竹箒で雪を掃きながら走るイメージです。
詳しい話を、札幌市交通局の電車事業所にお邪魔をして伺いました。
 
 
 
 
まずはササラの正体を探りました。
 
歴史は古く、1925(大正14)年に札幌電気軌道(札幌市電の前身)の技師長助川貞利氏が、台所用品のササラをヒントに3年間の試行錯誤を経て開発されました。その後、竹以外の材質や除雪方法を試してみたもののあまりいい成果がなく、90年を経た今でも基本的な構造はほとんど変わらず受け継がれているそうです。
 
ササラの原料は、以前は山口県の孟宗竹を使用していましたが、現在は東北地方の真竹を使用。サイズや製法を指定したうえで束にしたものを大量に仕入れ、市電職員の皆さんの手作業で加工をしてササラ電車へ取り付けていきます。
 
 
 
 
針金で巻かれた根本の部分をハンマーでたたいて楕円形にし、くぎを2本打ちます。
2本のくぎのうち1本は気持ち斜めに打ち込むそうです。気持ち斜めにすることで抜けにくくなるという先代からの教えなのだとか。まさに職人芸です。
 
 
 
 
このササラの束を、アピトンという輸入木材で作られた堅い木台に打ちつけていきます。1本の木台には50束のササラが一直線に打ちつけられ、木台8本を一組として回転軸へ放射状に取りつけ、これを車両の前後に取りつけ、金具で締め付けると完成です。
 
 
 
 
ササラ作りにも熟練した技術や経験が必要ですが、運転にもスキルが必要です。
毎年冬になるとササラ電車に関わる7名の特別チームが編成されます。皆さん通常は電車の運転手さんですが、冬から春の雪解けまでの間は除雪専属の業務となり、7名でササラ電車の運転業務とササラ作り業務を交代で回します。
 
 
 
 
ササラ電車はササラを路面にこすりつけながら走るので走行時の抵抗が大きいうえ、通常の電車と構造が大きく異なるため運転はかなり難しく、市電の運転手が誰でも運転できるわけではないそうです。運転のしかたがよくないと運転室内に電気の火花が走ることもあるほどです。
ササラの回転もかなり神経を使う作業。ササラがすり減っている場合は高さを微妙に下げる、路面の凹凸や積雪状況により上下させる、道路脇に車がいる時や電停がある所では回転を止める場合もあればササラの角度をずらし雪の飛ばす方向を変える、など走りながら臨機応変にササラを操作しなくてはいけません。
 
 
 
 
積雪が多い札幌、新しく取りつけたササラは1シーズン持たなく、ひと冬に2、3回ほど新しいものに付け替えます。特に近年は、粉雪が減り湿った雪になってきていることからより減り方が早くなってきているそうです。
 
 
 
 
冬期は雪が降っていても降っていなくても、毎朝4時に点検を兼ねて必ず全線を往復運行します。日中はもちろん夜間も雪が降り始めてくると即出動。積もって車に踏み固められる前に雪を飛ばさなくてはいけません。
現在ササラ電車は4両ありますが、雪の降り方によっては日に2台、3台とフル回転で運行する時もあるのだとか。
 
お話を伺った藤村さんが最後にこう言いました。
「真冬の雪が多い日でも、電車の遅れは多少あっても運休になることはほぼありません」
寒い雪の日でも電停で待っていれば必ずやってくる札幌市電。熟練した7名の精鋭が冬の運行を守っています。
 
 
 
 
 
 
<ササラ電車(市電除雪車)>
https://www.city.sapporo.jp/st/shiden/sasara/sasara-car.html
(札幌市ホームページ内)