2013年12月10日 | 北海道Likersライター カメガモリサトシ(公立はこだて未来大学)

函館の歴史が眠る場所「市立函館博物館」

小樽vs函館第7弾。函館の歴史が眠る場所「市立函館博物館」を紹介します。函館公園内に位置する市立函館博物館。その歴史は遡ること1879(明治12)年、開拓使函館仮博物場を前身として函館公園内に開場しました。現存する日本最古の地方博物館で、1966(昭和41)年に現在の市立函館博物館が開館しました。
 
 
▲函館公園内に佇む博物館
 
 
市立函館博物館の特徴は、ここにくれば函館の歴史のすべてがわかってしまうほどの資料数にあります。その種類も、縄文から現代に至る函館の歴史資料や、自然史資料、考古資料、美術工芸資料…と挙げればキリがないほどバラエティに富んでいます。今回は学芸員の保科智治さんに話を伺いました。
 
 
▲定期的に企画展や特別展も開かれます
 
 
館内に入り、まず目に入るものが、志海苔(しのり)古銭です。函館市内で大がめ3個にぎっしりと詰められた状態で発見された志海苔古銭は、国指定重要文化財にも指定されており、総重量1.6トン、出土銭総数約38万枚以上の古銭で、国内最大量であるとのこと。1.6トンという数字からもわかるようにかなりの迫力です。
 
 
▲発見された志海苔古銭
 
 
函館の歴史を語る上で欠かせない「箱館戦争」についても、多くの資料が保存されています。新政府軍と旧幕府脱走軍の戦闘の様子を描いた絵図や書簡、実際に使用されていた火縄銃や砲弾など、歴史好きにはたまらないコレクションがそろっています。
 
 
▲幕末ファンにはたまらないお宝がずらりと並ぶ
 
 
戦争の様子が描かれた絵図も多く展示されていますが、保科さんの説明を聞くと、その絵図の意味深さに驚かされます。
 
保科さんは「一見は百読の害」と言います。一見するとわかったつもりになってしまいますが、史料を丹念に読んで画像を見ることによって、史実とは違う内容が描かれていることが分かることもあります。
 
 
 
 
この錦絵は、箱館大戦争之図といい、土方歳三、松平太郎、榎本武揚らが奮闘する様子が描かれています。新選組のファンからすると真ん中の馬上の人物が土方歳三であってほしいところですが、実は右側で刀を構えている人物が土方歳三だそうです。この錦絵は明治2年5月11日の戦闘の様子を描いていますが、実際にはこのような状況はないそうです。ただ、描かれた人物の位置関係を見ると、幕府の中での位の違いを読み取ることができるそうです。
 
 
▲降伏調印に臨む新政府軍兵士
 
 
この写真に写っているのは、箱館戦争に参加した薩摩藩の人たちですが、右端に村橋久成という人物がいます。何を隠そうこの人、北海道にビール工場を開いた張本人。サッポロビールの前身「開拓使麦酒醸造所」開所のキーマンなのです。
 
 
このほか自然史展示においても、貴重な剥製標本が数多く保存されています。特に函館湾や渡島東部沿岸などで捕られた魚の剥製標本は100年以上も前のものです。日本全国を見ても、これほど充実した内容の剥製標本は珍しく、重要文化財といっても過言ではないそうです(残念ながら登録ジャンルがないとのこと)。
 
 
▲今にも動き出しそうな魚の剥製
 
 
さて近年、市立函館博物館では、公立はこだて未来大学と連携して、デジタルアーカイブの実験的取り組みを進めています。歴史的文化財をデジタル化して保存する取り組みのことで、普段簡単に展示することのできない貴重な文化財も、より自由に鑑賞することが可能となります。例えば、高精細にデジタル化された資料を用いることで、肉眼では確認できないような作品世界に迫ることができ、新たな学術的発見へと繋げる事もできます。
 
 
▲江戸時代に中国から伝わった絹織物「蝦夷錦」
 
 
▲上の蝦夷錦の胸元に配された龍を拡大
 
 
例えば、写真の蝦夷錦。高精細にデジタル化された資料では、中央の龍もこのように繊維まで見ることができ、その織り方の調査も容易となります。
 
 
蝦夷錦などのアイヌ資料は函館市北方民族資料館で収蔵・展示されています。デジタル資料を見た後で、博物館で実際に本物を見ると、リアルな展示の素晴らしさをより実感することができます。大きさもそうですが、風合い、匂い…、何より実物が発するオーラは、実際にその場に立ち会い、自分の目で確認して初めてわかるものですね。
 
 
今回は、市立函館博物館のほんの一部を紹介しましたが、函館大火の生々しい資料や、アイヌ文化など、まだまだ函館の歴史が詰まっています。函館の歴史を知れば、普段見る函館の風景も全く違ってきます。博物館へ足を運び、その空気を味わってみてはいかがでしょうか。

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