仮小屋をつくる/アイヌ四季の暮らし(3)

アイヌが旅の途中で野営をするときは、雨風を避けるためにクチャと呼ばれる仮小屋をつくり、そこで夜を過ごしました。今でいえば、テントの代わりです。
クチャの形や材料は、季節や地理的な条件によってさまざまなものが使われました。骨組みに使うのは、成長が早く群生しているヤナギが多く、その上にヨモギやヨシ、ススキ、アキタブキの葉など、周囲にたくさん生えている草で屋根をふきました。
 
 

 

 
ヤナギの生命力は恐るべきもので、枝の切れ端を土にさしておくと、根がついて翌年には新しい枝や葉が伸びはじめるほどの強さです。クチャをつくるくらいの量であれば、1~2年で再生します。
 
 

 
また、草があまり生えてない山の中でクチャをつくる場合は、松の木の下枝を切って使ったり、成長して伸びきったクサソテツ(コゴミ)の葉を使ったりすることもありました。
 
1晩か2晩泊まるだけの小屋ですから、1人が眠るスペースさえあればよく、「男一人が、1~2時間で完成させるもんだ」とマタギ(狩人)の先輩は言います。
 
野営が少し長引く時は、小屋のそばに仮設のトイレをクチャでつくりました。大地の神を汚物で汚さないためです。同じ理由で、大人が数人で野営をする場合、例え1泊でも必ずクチャでトイレをつくります。
 
屋根をふくのにヨモギを使うと、においがよく虫よけにも効果があります。寝るためのクチャでは、小屋の中で必ず火を焚くので煙が虫よけになりますが、仮設トイレのクチャではヨモギの除虫効果が必要です。また、たき火にヨモギを入れると、蚊取り線香よりも効果を発揮してくれます。
 
 

 
日高地方の静内町(現・新ひだか町)に住んでいた葛野辰次郎エカシ(長老)は、子どもたちにこういって聞かせていたものです。
「この大地が、なぜ神様なのかわかるかい? われわれ人間が踏んづけたり、汚いものを投げたり、勝手に切ったり削ったりしても、決して怒らない。自分がそんなことをされたと考えてごらん。とても我慢できないだろう? それを怒りもせず、黙って許してくれるのは、神様だからなんだ」
 
 

 
*記事は『北の彩時記―アイヌの世界へ』(計良光範著、コモンズ刊)をもとに作成。
http://www.commonsonline.co.jp/kitanosai..html
 
*北海道の歴史について知りたいなら…
http://www.alicesha.co.jp/978-4-900541-75-7.php