国産チーズ誕生80年。安平町への旅

新千歳空港の東南約6kmにある安平(あびら)町。1934(昭和9)年、この町の遠浅(とあさ)地区で工場生産初のチーズが生まれたことを知る人は、相当なツウです!チーズをめぐる安平町の旅に出ました。
 
 
 
 
おいしいチーズは、酪農王国北海道の代名詞のひとつ。いまでは全国でチーズが製造され、身近な食べ物として浸透していますが、そのきっかけをつくったのは、安平町の工場で生産したチーズでした。
 
1933(昭和8)年、北海道製酪販売組合連合会が安平町の遠浅地区で、さらに同年、森永練乳が早来(はやきた)地区でそれぞれチーズ工場を操業。当時の消費量は微々たるものでしたが、その後約80年をかけて、食の西欧化などを背景にチーズの消費量は拡大。日本の食卓にチーズが普及するようになったのです。
 
大手メーカーでは工場の集約化が進み、創業当時のチーズ工場は安平町から移転しましたが、本格的なチーズ製造がスタートしたこの地で、誇りを持ってチーズづくりに励む工房があります。今回は、チーズ工場発祥の地に根ざした思いと、確かな技術で本当の美味しさを追求する安平町の2軒のチーズ工房をご紹介。
 
安平町早来地区にある「プロセスグループ夢民舎(むーみんしゃ)」。
「国産チーズ発祥のこの町で、一旦途絶えたチーズ製造の灯を再び灯したい」と、宮本正典さんが中心となり印刷業、酪農家、畑作農家、技術者の6人が集結。町の古い給食センター跡地を活用し、1990(平成2)年に安平町でのチーズ製造を再開させました。
 
 
 
 
夢民舎では、カマンベール、ブルーチーズ、モツァレラやクリームチーズなどを手がけています。幅広い年齢層に受ける、塩分がひかえめでまろやかな味と香りのチーズの原料は、北海道東胆振地区の牧場で育てられたホルスタインの牛乳!地場産の生乳にこだわり、ひとつひとつ丁寧に手づくりされています。
 
 
 
 
1998(平成10)年に開催された「第1回ALL JAPANナチュラルチーズコンテスト」では、特別審査委員賞ほか多数の賞を受賞。「この地でチーズの工場生産が始まって80年、先人が築いた歴史の重さを感じながら、これからもチーズづくりの歴史をつないでいきたいです」と、宮本社長は語ります。
 
そしてもう1軒、追分地区にある「チーズ工房角谷(かくや)」。会長の角谷誠さんは、雪印で約30年カマンベールの基礎研究を行った、チーズ製造の第一人者。工場生産の限界を感じ、早来の宮本正典さんから「一緒にチーズをつくらないか?」と角谷さんに声がかかったのを機に手づくりチーズの製造に着手し、約3年で製法を確立しました。そして、自らの味を追求したいとの思いから、1994(平成6)年に自社のチーズ工房角谷を開き現在に至ります。
 
 
 
 
角谷でも独自のこだわりを持っており、製造するのはカマンベールチーズのみという潔さ。日本人の口に合うように、クセがなく、クリーミーでとろける舌触りとまろやかな風味のあるやさしい食味です。
 
そして、優れた食味もさることながら、最もこだわっているのは基本に忠実なチーズづくり!徹底した衛生管理のもと、生乳と食塩を原材料に水分を常に管理し、乳酸菌の活動を助けて、良質なチーズを生み出します。「味を競うより重要な責任が、製造者にはある」との思いから、角谷では厳格な衛生管理に基づく「北海道認証」(北海道が運営する道産食品の独自認証制度)を2005(平成17)年に取得。品質を重視したチーズづくりが角谷の信条なのです。
 
そのこだわりは、チーズの容器にも見てとれます。なんと、角谷のカマンベールチーズは“缶詰で要冷蔵”。密封性に優れ、できたての状態を保つ缶詰には、つくり手の思いがぎゅっと凝縮されています。
 
 
 
 
酪農の歴史も古い安平町には、道内最古の木造サイロが現存し、チーズ工場発祥の歴史を刻んだ石碑もあり、チーズ産業の歴史を感じることもできます。こうした遺構が当時の繁栄を今に伝えるだけにとどまらず、「発祥地の名に恥じぬ製品をつくる」という姿勢や誇りが、2つのチーズ工房に受け継がれているのです。
ぜひ、先人の志を今に受け継ぐ職人たちの努力と誇りの結晶であるチーズを、安平町を訪ねて食べてみてください!
 
 
 
 


 
■有限会社プロセスグループ夢民舎
http://www.muminsha.com/catalog5.html
TEL / 0145-26-2355
FAX / 0145-22-2439
 
※ 夢民舎は工場直販ではないため、レストランみやもとでお求めください

※ 角谷と夢民舎はJR3駅(追分駅-安平駅-早来駅)約12km、離れています
※ 木造サイロに行く際は「有限会社 山田牧場」が目印です