お墓参り/アイヌ四季の暮らし(4)

今も昔も変わらない夏の行事が、お盆のお墓参りです。今では多くのアイヌも仏教徒となり、伝統的な信仰行事とは別に仏教の行事に従ってお墓参りをしますが、これは近年になって定着した習慣です。
 
もとからのアイヌの墓に対する考え方は、それとかなり異なります。人が一生を終えると、その魂は先祖の待つ「あの世」へ旅立ち、そこでふたたび「この世」と同じ生活を始める、というのが死後についての考え方でした。
 
墓地に埋葬した死者の塚に立てる墓標を「クワ」と呼びます。これは「杖」のことで、死者があの世の先祖のもとまで、迷わずたどり着くための案内役とされています。

 

 
イヌエンジュやハシドイ(ドスナラ)などの樹木を使って作られる墓標には、家紋が刻まれ、家系を表す編みヒモが巻かれるなど、死者が先祖のところへたどり着けるように工夫されています。また、墓標が朽ちても、新しいものには立て替えません。死者があの世へたどり着くと、墓標はその役割を終えるからです。
 
さらに死者を埋葬したあと、遺族は滅多に墓地を訪れません。あの世へ向かう死者を振り返らせ、先祖の生活を騒がせてはいけないという考えからです。ですから、アイヌに「墓参り」の習慣はなく、その代わりに「先祖供養」を行うのです。「イチャルパ」「シヌラッパ」など地方で呼び名は変わりますが、家や村ごとにひんぱんに行われました。今でも、お年寄りのいる家やアイヌが集まる伝統行事では、必ず行われます。
 
年末年始や収穫期など季節の節目や、クマ送りなどの神事には、カムイノミ(神への祈り)を終えたあと、先祖への祈りと報告が行われます。戸外にしつらえた祭壇に、酒やご馳走をイナウ(神への供物)とともに供えます。これらの供物は、あの世で食べ切れない量に増えると信じられてきました。

 

 

 
こうして先祖は、自分の子孫が無事に暮らすことを知り、安心してあの世での暮らしを続けられるのです。「先祖供養」は、1年に何回も行われるアイヌの伝統的な習慣として、いまも守られています。

 

 
*記事は『北の彩時記―アイヌの世界へ』(計良光範著、コモンズ刊)をもとに作成。
http://www.commonsonline.co.jp/kitanosai..html
 
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