「酒まんぢう」~ほっかいどうお菓子グラフィティー(7)

明治の開拓時代、北海道各地に鉄道が開業します。当初は運行時間も、駅の停車時間もかなり長かったため、餅や団子、饅頭などの生菓子が各地の駅で立売りされ、好評を博していました。
 
書籍『ほっかいどうお菓子グラフィティー』の著者でお菓子博士の塚田敏信さんは、これを駅売りの生菓子、略して「駅生(えきなま)」と命名しました。
 
その「駅生」第1号発祥の地が、函館本線の札幌と小樽の間に位置するJR銭函駅です。明治13(1880)年、札幌―手宮間に北海道初の鉄道が開通したときに開業。高倉健主演の映画『駅 STATION』(1981)のロケにも使われた風情ある木造駅舎は、昭和6(1931)年に建てられたものです。
 
 

 
駅の開業後、ほどなくしてホームで立売りされるようになったのが、のちに銭函名物となる「酒まんぢう」です。そしてこれこそが、栄えある北海道の駅弁第1号となりました。
 
最初に酒まんぢうを製造・販売したのは、西村甚太郎と伝えられています。その後、最盛期には4、5軒の菓子屋が、自家製のどぶろくで饅頭を製造。一時は、何人もの売り子がホームに立つ人気ぶりで、開拓使から“ホームに出るのは4人まで”と規制されたほどでした。
 
しかし、戦後はどぶろくの製造が法律で規制されたこともあり、いつしか姿を消してしまいます。その幻となった饅頭が復活したのは、平成11年のこと。芦別の菓子職人・小川秀雄さんが、饅頭好きだった知人の記憶を頼りに、試行錯誤して昔の味を再現しました。

 

 
現在は、同じ芦別市内にある「よねた製菓」が、小川さんのあとを引き継いで製造・販売。旭川市の男山酒造が作る日本酒と酒粕を使い、ほどよい甘さのこし餡と酒粕の香りがマッチしたその素朴な味わいには、ファンが少なくありません。
 
復活した酒まんぢうは、銭函駅のキヨスクと芦別市内だけで販売されていますが、大半が銭函駅で売れるそうです。駅のホームで北海道最古の駅弁を味わいながら、開拓の歴史に思いを馳せる―。そんな楽しみ方も、ご当地菓子ならではの魅力かもしれません。

 
 
 
*詳しくは『ほっかいどうお菓子グラフィティー』(塚田敏信・著)をご覧ください。